統合失調症は「ごくありふれた」病気です。
娘の話の前に、統合失調症という病気について一般的に言われている範囲で書いておこうと思います。私は医療従事者ではないので不正確であったり間違っていたりする場合もあるかも知れません。そういう場合は是非、ご指摘ください。正しい知識を得たいというのは、思い切って娘の話を書き始めた動機のひとつでもあります。よろしくお願いいたします。
統合失調症は100人に1人弱がかかると言われている、ごくありふれた病気だそうです。最近の薬(特にリスパダール以降)は薬の効果も高く、通院・服薬を続けながら「寛解=病気の症状をほぼ抑えることに成功した状態」に至り社会に復帰できる方もいらっしゃるそうです。
とはいえ、病気の根本的な原因どころか症状やそれに対する対症療法などについてもわからないことが多く、「完治=病気の根源が解決され再発もない」することの無い病気です。完治することがないということは、つまり、病気というよりは一生付き合うことになる「障害」であるということです。本人だけでなく、家族も。
私の姉は障害者です。中学までは北海道立真駒内養護学校に通っていました。姉が生まれた1960年は北海道でポリオが大流行した年で、養護学校には姉と同じような障害を持った児童が沢山通っていました。姉が罹患した後も、母は大流行の翌年以降に緊急輸入された生ワクチンを摂取させたそうです。罹ってからのワクチンに意味はないです。母も、子の病気を受け入れるまでには、かなり時間がかかったのでしょう。子が「治らない病気に罹った」と知ったときの親の気持ちが、今は自分にもよく分かります。
「ごくありふれた」病気と言っても「自分の身の回りでは見かけないなあ」という方もいらっしゃるかと思います。ですが、それは、ただ単に気がついていないか、それとも、視界に入ってもあえて意識しないようにしているかのどちらかでしょう。
意識して世間を見渡すと、統合失調症は本当にごくありふれた病気です。身の回りだけではありません。本人や周囲が病気を病気と理解しないまま「変わり者」として接している例は、テレビのワイドショーやニュース、SNSやWebの投稿記事などでもよく見かけます。
この点は医療従事者の方から「違う」と言われてしまうかも知れませんが、私自身は娘の病気と付き合う中で以下のような考えに至っています。
「統合失調症はグラデーションのようになっており、普通に社会生活を送っている人の中にも被害妄想や幻聴を抱えている人は思っている以上に多い」
そういう意味でも、やはり統合失調症は「ごくありふれた」病気なのかも知れません。
ただし、娘のように寛解への道が見えてこない場合は別です。娘は発達障害も抱えていると思われます(幼児期に一度診断を受けましたが、その時点では判断できないとされました)。そもそも「社会」や「人間関係」といったものへの対応が難しいところに「妄想」や「幻聴」が加わってしまうと、例え薬で一時的に「妄想」や「幻聴」を抑えることに成功したとしても、社会生活は困難です。
そんな娘ですが、通院と服薬を始めて以降も、中学・高校・大学まで、騙しだましではありますが進学しました。結局、大学は中退しますが、私自身が大学をふたつ中退しているため、娘が辞めることにまったく抵抗はありませんでした。妻も「パパも中退で良かったねー」などと言っておりました。不幸中の幸い、人間万事塞翁が馬、なのかも知れません。
そういう話も、ゆっくり書き進めていこうと思います。