「デーツはパパのだから」
娘、昨夜は和室で寝ると言い出しました。いいよどこでも好きなところで寝たら、と頭では思うのですが、心は和室のベッドはオレが寝るから娘は自分の部屋に戻れと思っています。そしてそう言います。
「あっち行け。部屋で寝てくれ」
「ここで寝る」
畜生、これ以上はもう言えねえ。そうか、ここで寝るのか。しょうがない。好きにしてくれ。
「あ、そうだ、アイマスクする?」
「する」
「あ、耳栓もする?」
しないだろうと思って聞いています。
「耳栓する」
え、するの? でも耳栓してもすぐに「使わない」って言って外すじゃん。本当に使うの? しょうがないなあ。
娘は柔らかい耳栓を自分で耳に入れられません。代わりにきゅるきゅるっと細くして耳に押し込みます。アイマスクもつけました。本当に使うのかなあ。どっちもすぐに外しそう。
「おやすみ〜」
声をかけましたが返事はありません。耳栓で何も聞こえないアピール。なんか腹立つ。
10分ほどして娘が和室から出てきました。
「使わない」
アイマスクと耳栓を渡されました。ですよね。そうだと思っていましたよ。
娘に和室のベッドを取られたので私が娘の部屋で寝ます。でもこっちのほうが静かで暗くて寝るのにはいいんだよな。アイスノンと耳栓を装着。部屋が暗いのでアイマスクは無しで。
夜中に2度もトイレで目が覚めました。これもうどうにかならないかなあ。それを除くと基本的に安眠でした。朝は目覚ましの直前に起きてからスヌーズスヌーズでけっこうダラダラ。もうダメだと思って起床。
朝食は昨日買っておいた惣菜のししゃも天ぷら(半額)とサラダとうどん。長ネギととろろ昆布。わかめも乗せたらよかった。思いつきませんでした。
出勤。雨でした。バスにすべきだった。雨そのものよりも肌にまとわりつく湿気に心も身体もやられました。会社に着くまでの段階で既に心折れそう。でも会社は快適でした。助かった。
月初なので色々やることはあるのですが、それ以前になんだか細々したことで時間を取られます。でもそういうのを片付けておかないと月初のルーチン作業に着手できない気分。徐々に社内でも気になり始めた湿度。カラッとした国で暮らしたい、今からでも。
お昼はコンビニの冷やしラーメン。生き返る。
午後も細々とした作業。並行してネット広告の調整。先月は少し高めの目標をクリアしたので今月はその数字のキープがとりあえずの目標です。上乗せのためには予算と対象の見直しが必要なので今月はその辺を見ながら進めるといった感じになりそう。面白いのは面白いけどかかりっきりというわけにもいかないんだよなあ。微妙なところです。
退勤。あまり降っていません。でも湿度は相変わらず。朝や昼より少しはましなんでしょうか。もうそれすらわかりません。湿気に倒されそうなので買い物はせずまっすぐ帰宅。娘は起きていました。夕飯どうしようかなあ。今から買いに行くのはいやだな。もう外に出たくない。あるものでなんとかしないと。パスタかなあ。
炊飯器にご飯が残っていたのでこれを使うことにします。炒飯、は面倒だな。お茶漬け、お湯を沸かすのもかったるい。玉子かけご飯、玉子が一個しか残ってないからなあ。納豆ご飯、納豆を混ぜるのも……。
娘が起きてきました。
「あのさあ、飲み物ばっかり大量に飲むのやめてよ」
キッチンには低脂肪乳飲料の空パックがふたつとピッチャーがふたつ、半分以上残っていた炭酸水のペットボトルがひとつ置いてあったのです。冷蔵庫のサラダとししゃもフライも食べてあったのに、炊飯器のご飯は手つかずでした。多分、炊飯器を見るという行為を思いつけなかったのだと思います。
「なんか食べたい?」
娘は返事をする代わりにテーブルの一角に視線を向けています。その先にはデーツの大袋。
「デーツあげないよ。パパのだから」
悲しそうに目線を逸らす娘。
「カレーでいい?」
「カレーでいい」
レトルトカレーを色々買ってあったのを急に思い出しました。レトルトカレーならレンチンだけでいける。
「どれにする?」
テーブルに並べます。
「こで」
娘の「これ」は常に「こで」に聞こえます。娘が選んだのは電子レンジでそのまま温められるタイプではないレトルトカレーでした。マジか。パッケージにカツが描いてある。カツと合うとか書かれてる。そうか、カツカレーにするべきだったんだな、このレトルトは。でも、カツ買ってないからそのままでいいです。
ご飯と皿に盛ってからレンチン。おいしいと言っていました。よかったよかった。
私もカレーにします。冷凍庫の豚肉をフライパンで焼いてから残っていたレンズ豆とひよこ豆、小松菜、業務スーパーで買ったカレールー。他にも色々入れて。なんだかタバスコ風味になってしまいましたが、食べてしまえば一緒です。
食後、娘が部屋に戻らず椅子に座っています。
「あ、またデーツ見てる。あげないよ、パパのだから。お風呂はいる?」
「お風呂はいる」
風呂上がり、アイスを食べてくつろいで。
「またデーツ見てる。あげないよ」
クスリを飲んでくつろいで。
「しょうがないなあ。一個だけね。デーツ、パパのだからね」
すんげえ嬉しそうに一個のデーツを味わう娘。娘もデーツ好きなんだよなあ。でもデーツはパパのだから。
今日は自分の部屋で寝るようです。
「おやすみ」
「寝ないのにおやすみって言うのやめて」
「んあ」
それから何度も部屋から出てきては椅子に座ってデーツに視線を向ける娘。
「しょうがないなあ、一個ね」
二度繰り返して三度目。
「もうデーツはあげない。今日は他に食べるものも飲むものも用意しない。部屋に戻れ。もう寝ろ」
不服とがっかりの間の表情で部屋に戻る娘。可哀想な気もしますがここで止めないと延々と繰り返させるのでこちらがイヤになるだけです。デーツも娘に食べ尽くされるとたまりません。私が食べたくて買ってきたのです。娘には渡さん。そういう気持ちです。