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AI共同執筆長編小説『失われた青を求めて』メイキング

2021/12/16より、小説執筆人工知能「AIのべりすと」といっしょに/協働して、長編小説『失われた青を求めて』を連載しています!
〈人間とAIの共同執筆+毎週連載の長編小説〉ということで、きっと人類史上初の試みです!

AIとの共同執筆とは、どのように書き進めているのか等々、実は書きながらAIとの付き合い方も変わりつつあり、変わりつつあるからこそ、今の感触をメイキングとして記録しておきます!
webメディア「ケムール」にて毎週木曜更新です!

AIとの共同執筆ことはじめ

▶オンラインAIサービスとは

連載小説『失われた青を求めて』では、「AIのべりすと」というオンラインAIサービスを利用しています。オンラインAIサービスとは、AIの本体というかデータベースなどなどは運営側にあって、ユーザー(ぼく)のオンライン経由の入力に対して、AIが計算して出力してくれる、というものです。

▶AIとの書き方/AIのべりすとの使い方

使い方はカンタン。ストーリー概要やキャラクター設定を書き込み、各種パラメータの調整もできまして、そのうえで最後に「続きの文を書く」ボタンを押すだけです。すると数百字の小説の続きが出力されます。
なので基本的な執筆方法としては、〈ぼくとAIが数百字ずつ交互に書いていく〉ことになります。
付け加えておくと、「続きの文を書く」の下には「リトライ」ボタンもあるので、別の続きを出力してもらうことも可能です。

では実際に〈交互に〉書いた文章を見ていただきましょう。以下の文章は、前半と後半で、書き手が違います。

「これ、小説を書くAIなんですって」
「はあ……」
 わたしに合わせてくれているわけでもないのだろうけど、この担当さんもテック系というか、新しいツールがだいすきで、そういえば初めて会ったときに二人とも電卓付き腕時計をしていて爆笑したのだった。昔のことばかり思い出す。
「へー、すごいですね」
「でしょう。でもこの会社、もうすぐ倒産するんですよ」
「そうなんですか」
「まあ、倒産って言っても潰れるってだけで、また別の会社に買収してもらう予定らしいんですけどね」

『失われた青を求めて』第1話

どこが切れ目で、前半と後半、どちらがぼく(人間)でどちらがAIなのかについては、まずは想像しながら楽しんでいただければと思っています。AIが書いた部分はちゃんと記録しているので、いずれ公開されるかもしれません。

▶関連情報

ちなみに、すでに多くの小説のデータが登録されているとのことで、ユーザーは何のデータも入力せずに「続きの文を書く」ボタンを押すだけで、何かしらの文章が出力されます。

あと、無料と有料があり、有料コースで高くなるほど、AIの出力が早くなったり出力が多くなったりします。今回は編集部が出してくれるということで、一番上の有料コース(2021/12/26時点で税込2,970円)のプラチナコースで執筆しています。

気づき①主題について

▶主題とは:最初に決めるものとして

ここで主題というのは、最近個人的には便利に/広義に使っていまして、たとえば【アニメ業界の悲喜こもごも】くらいのイメージです。【なぜアニメを作るのか】などは主題ではなく物語あるいは登場人物の問題なのではないかと最近考えています。

とはいえ主題は、ぼくは決めるのです。上の例のとおり、別にメッセージなどではなく、さりとてジャンルや雰囲気でもなく、〈作品をまとめるための主な題〉といった感じです。

▶主題をいつ誰が決めるのか問題

さて今回は、連載前に主題を決めています。この連載の話をwebメディア「ケムール」の編集長から打診されて、そんなに間をおかず、すぐに決めたことを覚えています。
AI、「AIのべりすと」さんとお試しで共同執筆してみて、主題や物語あるいは登場人物なども、いずれ出力されてくるようには感じていましたが、今回が連載という形式で、つまり冒頭だけをまずは公開していくということで、ぼくもAIも模索しながら書くよりは、まずはぼくが主題を決めて、冒頭も書いていくことで作品の方向づけをして、AIがまさに「続きの文を書く」ほうが良いと判断したのです。

▶史上初のAI共同執筆連載の歴史性:連載『失われた青を求めて』の主題とは

さっきから書いている主題とは、つまりは〈書きたいこと〉ということです。書きたいことは他にもあるわけですが、今回の企画における主題とは、〈AIと書きたいこと〉に他なりません。
そしてAIと何を書きたいのかと言えば、それは──〈なぜ人間が小説を書くのか〉以外にありません。

▶主人公/登場人物について

ということで、今回はデビューしてからは初に近い、とはいえ昔からよく書いている、小説家が主人公の小説〈小説家小説〉です。
実は『失われた青を求めて』において、この主人公「わたし」以外に、ぼくが登場させた人物はいません。「わたし」以外はすべてAIが創造した人物なのです!

気づき②文体について

▶よりよいAI出力のための「リトライ」

AI──「AIのべりすと」さんだと「リトライ」ボタンで──は何度でも同じ箇所について出力してくれます。実は初めは気づいておらず、あと出力されること自体が楽しかったこともあって、リトライはしていません。
各AIの構造によって〈出力回数〉は決められるかもしれませんが、この〈出力複数性〉は──ふつう人間は何度も修正するのはめんどくさいので──AIの特質と言ってもいいように思います。

ということでその特質に甘えるかたちで、『失われた青を求めて』連載においては──基本的に何度でも──面白い続きを出力してくれるまで、平均すると三回くらいはリトライしています。

長編連載というのは決まっているので、ある程度は〈主人公や世界を深堀りするための描写系の文章〉が必要で、しかし一方で何も起きないと退屈なので〈驚くような展開をもたらす物語系の文章〉も必要です。

実際には、ぼくが書いた文章を受けて、AIが深堀り的に描写することもあれば、全然違う展開を書いてくれることもあります。ここでぼくはAIの出力を採用するかどうかを決めた上で、さらに自分で続きを書く──ということを繰り返しているわけです。

▶文体について:筆がのることのコントロール

このあたり、描写は何文字以上/以下みたいなルールがあるわけではないので、感覚的なものではあります。
個人的には興がのるというか筆がのるというか、もうちょっと書きたいという気持ちがあっても、あまり長々と書かず、AIと書き手を交代しています。

この〈交代制/交代性〉は、いわゆるリレー小説の基本属性ではあります。しかし今回このAI共同執筆では、瞬時に相手=AIが書いてくれるので、今後/近いうちに〈各AIによって書き味が違う〉〈できあがる文体も違う〉ということになるでしょう。
Wordや一太郎などのワープロソフトあるいはパソコンやキーボードなどのハードにこだわりがある人はいて──ぼくもいちおうあれこれ試したりするもののあまりこだわってないと思いつつ──そういうものによって文体が変わるということは、少なくともぼくにとってはほとんどありません。
しかしこの〈AI執筆〉では──リレー小説なみに──書き方が大きく変わります。しかもAIは原理的には/将来的には、無限に増やしたり調整したりできますから、まったく違う執筆感覚が生まれるのです。これはとても重要に思います。

気づき②物語について

▶文体にもたらされる変化よりも根源的かも

AIが出力するものは、見た目上はテキストデータではありますが、きちんとした精度があれば、そのデータには〈物語/物語展開〉が含まれます。
そして「AIのべりすと」さんは高い精度をもっていて文章レベルで意味不明なものはほぼなくて、しかもぼくが思ってもいなかった、これからも一人では思いつきそうもない展開を、出力してくれるのです。
思いつかない展開と言っても、荒唐無稽な展開もめったになく──文章と同じ精度で──自然でありながらこれまでとは違う──非常に有用な物語/物語展開が出力されます。

今回のオチ

ということで『失われた青を求めて』、文体/登場人物そして物語展開はこれからどうなるか全然予想もできないのです! 主題についても、ぼくが決めたものがあるわけです、物語展開によってはこれから変化せざるをえないかも。
オチが見えないAI共同連載、ますます加速していますので、ぜひお読みくださいませ!

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