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アクエリアス/メイキング/アルゴリズム

2021年あけましておめでとうございます!
新年初めのnote記事は、宇宙戦艦ヤマト完結編と復活篇のあいだを描く『アクエリアス・アルゴリズム ──宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部』メイキング!

初夢的に諸々思い出しつつ語ってまいります!

『アクエリアス・アルゴリズム』は全5話! ただいまヤマトクルー公式サイトで第1話が無料公開中です。

ヤマトマガジン編集部からご連絡があったのは2018年の夏の終り。
上の連載第1回は、2019年の12月刊行のヤマトマガジンvol.5に掲載でしたので、準備と初回執筆に一年と少しをかけたことになります。

初期アイデアとその変更

その準備段階の初期からあったアイデアはAB2つあり、Aは大幅に変わり、Bはほとんどそのまま残っています。

このうち、そのまま残ったBは最終回にかかわる大ネタなので、ひとまず今回はあまり触れないことに。

もう1つの、大きく変わったアイデアAというのは、ストーリー全体の方針──もう少しわかりやすく言うと〈登場人物の人数〉です。先に結論だけここに書いておきますが、初めの登場人物は4人だったのです。実際の連載版では、メインだけで10人以上、セリフがある人物は20人以上登場します。

本記事は、まずは連載までを時系列に沿って述べることを表テーマとして、この人数倍増の理由を裏テーマとして書いていきます。

メイキングアルゴリズム①連載の依頼と条件

さて、小説の連載は、自分で持ち込むか依頼が来るかの2択で、本連載はありがたいことに依頼が来たのでした。そして連載には基本的に、いくつかの条件があります。アクエリアス連載の条件は次のようなものでした。

①宇宙戦艦ヤマト完結編と復活篇のあいだの物語に
②連載は全4回、毎回2万字程度
③イラストあり
④連載開始は2019年中

つまりおおよそ長編、長めの中編ということで、もし映像化する場合はイメージ的に100分前後の長編映画(あるいは4話構成のドラマシリーズ)ということになるでしょう。

映画と小説の関係性

映画化/映像化はもちろん初夢的なものでありながら、小説執筆には非常に参考になります。特に今回はヤマト小説ですから、映像的な考え方──たとえば〈映像化したときに映えるシーン〉や〈タイムサスペンス〉──は連載中も様々な局面において大変参考になりました。

初期ストーリー案と改良案

初回か二回目の打ち合わせで、ぼくのほうから(完結編において自沈した)ヤマトを調査、回収する話はどうだろうかと提案しました。とはいえ、単に調査するだけではヤマトの小説としては非常におとなしい、はっきり言うと全然映えないものになりますので、ぼくが出した案は〈敵を出す〉というものです。

ただ、ぼくは当初のストーリー(ヤマト調査)が持つストイックさのようなものが結構すきでして、それに引きずられてしまったのか、この敵が少々少なめ、はっきり言うと1人だけだったのです。

つまり【古代一家3人(進、雪、美雪)がヤマト調査に赴き、そこで敵1人に出会う】というのがホントのホントの初期ストーリー案でした。それを『24』ばりに24時間のタイムサスペンスとして描こうとしていたわけです。

とはいえこれではさすがに全4回持たないというのはぼくも自覚しており、追加で地球側の味方として折原真帆がいて、アナライザー(かアナライザー的な存在)もいて、さらに敵側にも数人揃えて、と考えていきます。

最終的には──強力な仲間である〈アステロイド6〉が結成され──古代家側も敵対者側も非常に重厚な陣容になって、実にヤマト小説としてふさわしい充実さを得ることになります。

〈映像化したときに映えるシーン〉の実装

先に述べました〈映像化したときに映えるシーン〉は、むろんいつも自分の小説を書いているときも考えていることですが、本連載では特に意識したと断言できます。

なぜなら今回の「条件」に毎回のイラストがあったからです。しかも担当は、キービジュアル+挿画:梅野隆児さん、メカニックファイル:西川伸司さん! 超豪華な御二人にお願いできることとなり、より意識的に〈映像化したときに映えるシーン〉そして〈メカ〉を毎回組み込んでいきました。

毎回組み込むというのは制限という意味での「条件」になりがちかと思われるかもしれませんが、今回は西川さん梅野さんにご協力いただき、非常に自由な発想で進めることができました。メカはほとんど毎回、複数描いていただきたいものが登場していますし、映えるシーンはさらに多く、いつも泣く泣く絞り込んで、うれしい悲鳴をあげていたことを思い出します。

『ランドスケープと夏の定理』から

なお自分の小説、ノベライズではない表紙や各章ごとに挿画はあります。デビュー作で2020年に文庫化されている『ランドスケープと夏の定理』では、なんとなんと加藤直之さんに描いていただいています!

このデビュー作は大変ありがたいことに、SF考証として様々にお声掛けをいただくきっかけとなり、初担当作の『ゼーガペインADP』に続き、『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』、オリジナル企画の『ブルバスター』、さらに2020年発売のVRゲーム『アルトデウスBC』にも繋がっていきます。

そして本連載においても、この略称『ラン夏』をあらかじめ読んでいただき、気に入っていただいたことが、ご依頼のきっかけになったと聞いています。

『ラン夏』や2020年刊行の『不可視都市』は書き下ろし小説ということもあり、〈書籍化の際に表紙カバーイラストが描かれること自体〉は決まっていても、どなたにお願いするかは結構あとになって決まります。

『不可視都市』のカバーイラストは新進気鋭のイラストレーター〈焦茶(こげちゃ)〉さん!

連載なのでイラスト担当の方がそれなりに早めに決まることはありつつも、『アクエリアス・アルゴリズム』は、スケジュール的にも非常に余裕があり、すべての意味で豪華だったということは改めて述べておきたいところです。

「連載ならでは」の思い出

「連載あるある」「連載ならでは」はいくつもあり、たとえば年末進行やお盆進行で〆切が早まってスタッフ一同が一瞬ざわつくことは何度かありました。とはいえヤマトマガジンが三ヶ月おき、季刊ということもあって、いわゆる原稿を落とすということはなく、5回連続、無事に連載することができました。

今ぱっと思いつく「連載ならでは」は各話タイトルです。『アクエリアス・アルゴリズム』では全4回それぞれアから始まる6文字のサブタイトルをつけることに2回目で決めたのでした。
初回(アクエリアス)と最終回(アルゴリズム)はほとんど自動的に決まり、2回目もそれなりにすんなり決まったので、3回目もなんとか思いつくであろうと考えたわけです(それは実際それなりにすぐ決まりました)。

しかしと言うべきか、大変ありがたいことに連載は好評で、全5回に延長されることになります。それが第4回を書いているときで、4回目のア○○○○○は非常に苦労したことを、今は何もかも懐かしく思い出します。

今回のまとめ

うれしい「ならでは」としては、3ヶ月おきとはいえ、15ヶ月連続で『宇宙戦艦ヤマト』という偉大なSF作品に触れ続けることができて、小説執筆やSF考証についての考察が深まったことです。

ヤマトの全体設定、各作品の細部、至るところに込められたSFアイデアの鮮やかさは──たとえば〈当時最先端の科学からの発想方法〉〈設定の軽重のバランス〉などは──小説家としてもSF考証としても非常に学ぶところ大で、これからも折に触れてぼくの指針となっていくと思います。

それでは本記事は以上となりますが、改めましてあけましておめでとうございます!

引き続き『アクエリアス・アルゴリズム ──宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部』をどうぞよろしくお願いいたします!

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