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『気象予報士をSF考証する』第0章──〈新しいClimate fiction〉と近況報告2021年11月版

気象予報がノーベル物理学賞を獲る少し前から始めています本連載。と言ってもここで小説家+SF考証としての先見の明を主張したいわけでは全然なく、むしろ超遅蒔きながらと慌てて──そのうえでいろいろ勘案しまして──〈気象予報士試験〉合格に向けての日々をここnoteで連載しています。

なお、上の画像にありますように〈Climate fiction〉というジャンルがありまして、英語版wikiには項目があります。

記事によれば2014年から使われている言葉ということで、気象テーマの作品はそれこそ神話にも見られるにしろ、7年前からさらにますます着目されています(新海誠監督『天気の子』は2019年公開)。

この状況を受けて──気象テーマにはひとまず手を出さない/普通に取材して執筆してみる等々ありえますけれど────ここはぼくの小説家+SF考証的な勘として、〈新しいClimate fiction〉を執筆するべきだし、そのためには〈気象予報士試験〉を受験/合格するべきだろうということです。

おそらくこの〈勘〉は結構大切なもので、いつか言語化できればと思います。

ということで今回は最近のぼくの近況報告をしつつ本連載受験日を確認/決定、そして〈新しいClimate fiction〉を構想してみます!

近況報告

ありがたいことに先月あたりにどどっと来年の予定が決まりまして──それは21世紀の小説家として間違いなく非常にありがたいことで──2022年おそらく春から隔月ペースで単著共著が刊行されていきます。原稿ができつつあるもの、まだできていないものもあるのでこういう言い方に。がんばります、特に今月。

SF考証案件はデビュー以来こちらもありがたいことに順調に参加作品が増えています。来年そのうちのいくつかはお知らせできると思います。

そしてこちら!

VRゲーム『アルトデウスBC』に連なる最新作──
『DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア クロノスオルタネイト)』
ぼくはシナリオ(SF考証)として参加しています! 本作はVRとnon−VR、すなわちOculus2版で各章展開に加えて、Nintendo Switchでも発売です!

VRは気象テーマにも繋がるということもここで付言して。

ということで受験日決定です

気象予報士試験は毎年おおむね1月と7月。近況報告のとおりの過ごし方をしていまして、結論から書きますと、ここは直近の2022年1月はスルー/ジャンプして〈2022年7月に受験!〉で進めます。

気象予報士試験については実はまだ過去問研究をしていないものの、結構ヘビーであることは、たとえば合格率が5%前後であることや、バイブルと言われている基本書籍の重さからそれなりに推察できます。なので勉強時間が──最終的にどれくらいかかったかレポートしますが──これはこれはちょっと来年1月までには確保できないぞと。

一方でなるべく早く合格/あるいは勉強したい気持ちはありまして、それは色々な理由があるわけですが、次節で書きます〈新しい気象小説〉を早く書きたいからということも。

ヘビーさとスピード感のバランスから、あと8ヶ月といたします!(その分、しっかりとバイブル『一般気象学』は読み込んで、過去問対策も連載で扱ってまいります)

2014年からの〈Climate fiction〉

Climate fiction(略してCli-fi)は2014年から使われているということですが、実はぼくもその少し前からCli-fiを書いていまして──全然先見の明ではないというのは再確認+反省しつつ──それは2014年に第5回創元SF短編賞を受賞しました、ぼくのデビュー作「ランドスケープと夏の定理」です。

温暖化のために北極海の氷が減少、北極海航路が成立した世界が舞台です。新しい航路によって北極圏は政治的に不安定化しており、〈北極圏連合〉で生まれた主人公は電磁防壁メーカーに勤務しています。

無数の姉が出てくるところも存外Cli-fiっぽいかもと思いつつ、ぜひ読んでいただければと思います。

なのでデビュー作から〈Climate fiction〉を書いているということにして、それはさておき、では7年後の今、書かれるべき〈新しいClimate fiction〉とは──ひとまず、ありうる方向として現状でも以下3つは思いつくので、きっともっと可能性は広がっています。

構想1:メタバース気象

VR/メタバースにおいて、そこの世界にも気象があるはずです。そのワールドに空気や気圧のような概念がないとすれば、それはそういう気象ということです。

これから指数関数的にメタバースは充実してくるはずで、メタバースは別に現実世界を模倣するものでは全然ありませんが、面白いものはメタバース化すれば良く、天気はあっても良いのではと思います。そのために起きるドラマは──メタバースがこれまでに存在しなかったので──必然的に〈新しいClimate fiction〉になります。

構想2:世界の学としての気象学

気象あるいは天文は、およそ人間が原初から知りたいものだったはずです。そして温暖化のように人間活動が気象に影響を与える以上、気象学は自然科学とも人文科学とも関係せざるをえません。

気象学は、世界あるいは森羅万象についての学になりうるものであり、それは物理学がミクロから追求するいわゆる究極理論/万物理論とは逆方向──マクロから世界を捉えようとする営為なのです。

気象テーマものでよくある政治ドラマとは一線を画して、(科学者ではなく)科学レベルにおいてClimate fictionをアップデートすることはきっと面白いはずです。

構想3:操作可能性としての気象

最後の構想はそのままストーリーになるものです。

これまでの気象はほとんど操作不可能で、せいぜい観測するだけの対象でした。しかし気象が人間によって──計算外だったとはいえ──操作されてしまっている以上、人間が望む方向に操作できることは今や夢物語ではなく、物語として十二分に成立するレベルになっています(このあたりの夢物語から物語への相転移は追求すると面白そうなのでまた今度ぜひ)。

これからの気象は背景に留まらず、人間と相互に影響を与え合う相手/対象になっていきます。素粒子とは真逆のスケール感である気象を相手にしたとき、〈新しいClimate fiction〉が始まります。

今回のオチ

ということで2022年7月の受験日まできちんと試験勉強をモチベーションとしては、〈新しいClimate fiction〉の可能性だけで十分すぎます。作品のための取材と思えば、これから8ヶ月というのはいったんの区切りとして適切な長さの期間である気もします。

さらに執筆期間があって、最速では2022年末に〈新しいClimate fiction〉がめでたく刊行されれば最高ではありますが、それは天気予報よりも難しい予想ということで以上です。ぜひまた新しい記事でお会いできればと思います。

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