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デジタル人材の作り方(1)NHKラジオ出演(2021年9月30日)

みなさん、こんにちは。今回はNHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!/ 三宅民夫のマイあさ!マイBiz」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容をベースに、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。ITを専攻している留学生や海外のITエンジニアの方と話すことも多いので、彼らの視点から見たお話をしています。

今回のテーマは「デジタル人材の作り方」です。

デジタル人材が日本で不足する理由

キャスター:2021年9月にデジタル庁が発足しました。日本の遅れたデジタル化を促進するための様々な政策に取り組む省庁です。九門さんはグローバルな人材育成や働き方を研究の専門とされていますが、日本におけるデジタル人材の状況についてどのようにご覧になっているでしょうか。

九門:まずデジタル人材の定義には色々ありますが、ここではいわゆるAIやデータサイエンスなどを扱う人材と、システム開発などを行う従来型のIT人材の両方についてとします。前者は今企業で推し進められているデジタルトランスフォーメーション(DX)に欠かせない、AIや大量のデータを使いこなせる人材です。DXとは、デジタル技術を活用して社会やビジネスを変革することで、企業にとっても生産性向上や新しいビジネスが生まれるなどの効果があると言われています。この人材が圧倒的に不足しており、日本でのAIビジネスはアメリカと比べて5年は遅れていると言われています。また後者のようなIT人材については、経済産業省の2019年の調査によると、2030年には約33万人もの人材が不足するといわれています。

キャスター:海外と比較して、日本ではなぜデジタル人材が不足していると
お考えでしょうか。

九門:日本でデジタル人材の育成が遅れた理由は、まず企業の側から見ると2つあります。1つは、日本はモノづくりが主体だったため、メーカーはハードウェアの製造に注力しており、システム開発は外注することが多かったのです。そのため、社内でデジタル人材を育成する風土が醸成されていなかったことがあります。
2つ目は、日本企業はゼネラリスト志向が強かったため、デジタルやIT技術の専門家が育成されてこなかったことです。その結果、企業内でデジタル化を進めるという号令がかかっても、結局進まないということがよくあります。

キャスター:九門さんは大学で多くの外国人留学生の声を聞かれていますが、日本のデジタル化の遅れについて学生からもそうした声を聞くことはありましたでしょうか。

九門:基本的には、海外ではジョブ型雇用で大学の専門と就職での職種が関連しているので、大学でコンピューターサイエンスやソフトウェアエンジニアリングを学んで、しっかりと自分のキャリアを考えている人が多いです。シンガポールの留学生が日本企業でインターンした時、「会議やプレゼンの場で紙の資料が全員に配布されていて驚いた」と話していました。彼が以前シンガポールで働いていた時には、ペーパーレスは当たり前で会議やプレゼンの参加者はみなノートパソコンやタブレットを持ち込んで聞いていたからです。

文系からデジタル人材に転身したアメリカ人女性

キャスター:九門さんは大学で教えていらっしゃいますが、日本のデジタル化の遅れの原因は、教育の現場にも関係しているとお考えでしょうか。

九門:企業で働く前に大学でもデジタルの素養を持つ人材を育成することが大切です。理系はもちろん、文系であってもデジタルの素養を持つ人材は必要です。なぜなら今後ビジネス全般においてデジタル化が進むと考えると、事業企画やプロジェクトマネジャーなどビジネスをプロデュースする人材も必要になるためです。例えば自分でプログラミングや開発をするAIの専門家だけではなく、AIの知識をもち、自分の専門分野でAIをうまく取り入れていける人もデジタル人材として活躍できます。また技術者の場合でもAIを開発する上で、顧客のニーズに応えられるようなデジタルの専門以外の応用力や理解力、コミュニケーション能力なども必要になることもあります。今後は文系理系問わず、新しい発想を生み出すためにデジタルの素養や考え方を学び、デジタル化を通じて自分は何をしたいかを考えることが大事だと思います。
例えば、こんな外国人の方がいました。以前シリコンバレーで働いていたアメリカ人の女性が、日本でソフトウェアエンジニア育成の教室を立ち上げたのです。彼女はアメリカの大学の経済学部を卒業しており、決して理系ではありません。商品先物取引の会社に就職し、シンガポールに駐在しました。その後退職してプログラミングを勉強し、シリコンバレーのスタートアップでソフトウェアエンジニアとして働き始めました。その頃趣味としてやっていたプログラミングの教室を日本で始めたいと思って日本で起業したそうです。

キャスター:文系理系問わず、デジタルの素養を学んでいくことが必要ということなんですね。

次回に続く)

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