留学生受け入れに必要なこと(2) NHKラジオ(2022年9月1日放送)
みなさん、こんにちは。今回はNHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「留学生受け入れに必要なこと」です。
来日前・コース開始前の教育が重要
田中キャスター:前回お話されていた留学生との意識のミスマッチを解消するためには何が必要でしょうか。
九門:来日前(またはコース開始前の)教育が必要です。特に近年、留学生の出身国・地域をみると、ベトナム、ネパールと非漢字圏出身者(中国・台湾・韓国以外)の割合が高まる一方、漢字圏出身者のシェアは低下傾向にあります。また、最近は大学院における英語コース(英語による授業で卒業ができるコース)が増加しており、日本語力があまり高くない留学生も増えています。非漢字圏や英語コースの留学生が増えている状況を考えると、来日前やコース開始前のプレ教育など早期の日本語学習と日本企業理解に向けた教育の必要性があります。例えば、来日前(または来日後)の正規コースが始まる前に半年間日本語学習と日本就職と企業文化の学習を行うなどです。
田中キャスター:ただ日本語を学習してもらうだけでなく、日本の企業文化についても知っておいてもらうことが大切なんですね。
九門:留学後日本で働きたいと考えている学生には、来日前に、そのために必要な要件を情報提供したり、海外の大学や関係機関に発信しておくことが必要です。特にITやデータサイエンティスト、それ以外の様々なエンジニアなど日本で不足している理工系の人材に対しては、非常に有効だと思います。その際、単純に日本に留学すれば日本で働くことができますという話ではなく、日本で就職する際には多くの場合日本語や企業の雇用形態の違いを理解することが求められるということを含めて丁寧に発信することが大事です。留学生と企業の根本的な意識のすり合わせをしておかないと、来日後のミスマッチや大きな失望に変わってしまうことになります。
企業人と留学生が混ざることが学びになる
田中キャスター:ミスマッチを防ぐために、留学生に、「来日前教育」をすることが必要である一方で、来日後はいかがでしょうか。大学での受入体制、必要となってくること、改善していくべきことはありますか。
九門:就職やキャリアに関する情報提供や支援を英語でも行うことができる専門職員が必要になります。さらに、より大切なのは、日本人と留学生が共同学習できるインクルーシブな学びの場を作ることです。大学関係者によれば、留学生は増えているが日本人との交流が少ない、英語で行われる授業を履修する日本人が少ないなどの指摘があります。企業でもダイバーシティ&インクルージョンは大きな課題となっていますが、留学生のように多様な人材と学ぶことで自身がマイノリティになる経験や協働のヒントが得られるのではないでしょうか。例えば、リカレント教育の一環として、企業の課題を日本人学生と留学生がPBL(問題解決型学習)として解決する、企業の社員が国内留学として留学生が多く英語も使う環境で学ぶ、留学生を企業側のグローバル・D&I研修の一環としてインターンで受け入れるなど産学が連携した対応をすることで、日本人学生や社会人と留学生が一体となった学びの場が生まれるのではないでしょうか。
田中キャスター:せっかく日本にいる留学生ともっと交わっていくべきということですね。今後の留学生の受け入れについて意識を変えていく必要があるようですね。
九門:繰り返しになりますが、ただ数を増やすのではなく質の高い留学生を高度人材として誘致するという意識が大切です。日本に留学し、日本で働く人が増えることは、日本で不足する理系人材やイノベーション人材の獲得などのメリットがあります。
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