Being教育の重要性(2)NHKラジオ出演(2021年8月5日)

今回は前回に引き続き、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!/ 三宅民夫のマイあさ!マイBiz」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。

テーマは「Being教育の重要性」です。

母の望み通りに就職を考えていた中国人大学生

キャスター:実際に九門さんが大学で実践しているBeing教育の授業はどのようなものですか?

九門:例えば日本人と外国人留学生の合同授業の際に行った授業の例です。自分の人生について「ライフライン(人生の曲線)」を書いて振り返り、自分の転機や大切にしてきた価値観を考えます。そして、それについて発表して他の人からのコメントをもらいます。そうすることで、自分自身だけでなく、外国人など他の学生からもフィードバックが得られ、より多面的に自分自身への理解が深まります。よく「それは就職活動の「自己分析」でやることですね」と言われるのですが、目的が違いますし、グローバルな多様性がある環境も違います。就職活動の場合は、就職に必要なスキルとして必要な部分だけ切り取ってしまうので、かえって自分のことがわからなくなることもあります。そうではなく、教える側にも、素の自分としてどう生きていきたいのかを考えさせるというマインドが必要です。

田中キャスター:いわゆる就職前の自己分析とは違うものなんですね。
この授業で学生からどのような反応を得られましたか。

九門:ある中国人大学生は、「私はキャリア選択でもお母さんの言うことを聞く傾向がありました。お母さんは、私が博士号を取って大学の先生になることを望んでいます。しかし、講義を受けて、私は貿易会社で通訳の仕事をしたかったことに気づきました」と気付いたり、別の大学生は、「中国では幼稚園から大学までずっと勉強漬けです。小学生からいい中学に入るために勉強、中学、高校でも受験勉強であまりにも忙しかったので自分のキャリアや人生について考える余裕もなかったので今回初めて自分の価値観と将来の夢を関連させて考えました。」と話してくれました。

正解がない世界で生きるために

キャスター:あり方教育はいわゆる「自分さがし」というものにつながるものなのでしょうか。

九門:「自分さがし」をする人は、どこかに理想の自分がいて、今の自分ではない自分になりたいという意識が強い印象があります。つまり、どこかに理想の答えがあると思っているから探すのです。「あり方教育」では、正解があるわけではないと知った上で、今の等身大の自分を受け入れることに気づいてもらいます。そのために、自分の思考を深める内省もしますが、教員や他人との対話やシェアをしながら双方向型の教育にして、さらに海外でのインターンなど実践にもつなげています。Being(自分のあり方)とDoing(実践)をリンクさせているのです。

キャスター: こうした「Being教育」を続けていくことで、
何が変わってくるでしょうか。

九門:自分が何が好きで何を大切にしているかを理解することで、自分の進学・就職・転職など人生に生かすことができるようになります。そして答えがない世界の中で「自分は何者か」を問いかけることで、自分の志や才能に気づくことができます。「あり方教育」を進める際には、そこに国籍だけでなく経済的な背景や経歴など様々な多様性があることも大事です。そのことで、人と違うことが当たり前だと気づき、自分とは違う他人に共感できるようになります。自分の個性や才能をどう活かしていけば社会や世界を変えられるか考えるきっかけにもなります。そうすることで、地球で起こっている様々な社会課題の解決に踏み出すようなチェンジメーカーも出てくるのではないでしょうか。

キャスター:一人一人が、Being(自分のあり方)についてしっかりと理解していくことで、これからの社会で活躍する人材が育っていくということですね。九門さん、ありがとうございました。



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