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留学生受け入れに必要なこと(1) NHKラジオ(2022年9月1日放送)

みなさん、こんにちは。今回はNHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「留学生受け入れに必要なこと」です。
 

留学生や優秀な頭脳を「誘致」する意識が求められる


田中キャスター:日本は、2022年の3月から段階的に新規の留学生の受け入れを再開していますが、現在はどういう状況でしょうか。
 
九門:日本はコロナ禍で2020年2月以降は外国人の入国を制限してきました。外国人留学生は2021年5月時点で24万2,444人と、ピーク時から2割減っています。現在の多くの留学生は、今年3月の入国制限緩和の時期やそれ以降に入国しています。
そうした中、文部科学省は、新型コロナウイルスの影響で減少した外国人留学生の受け入れと、日本人学生の海外留学について、2027年をめどにコロナ禍前の水準に回復させる方針を固めたと報じられています。留学先としての日本の魅力発信や、外国人学生への就職支援など留学生確保の強化が回復策の柱になります。

田中キャスター:減ってしまった留学生ですが、今後、どのように戻していけばいいのか、九門さんはどうお考えでしょうか。
 
九門:まずは、留学生の数だけを増やせばよい、ということではなく、受け入れ体制や、日本で就職したい人に対してのサポート体制を整えつつ、質の高い留学生を可能な範囲で誘致していくことが大事だと思います。
日本に留学したいという潜在的なニーズは高く、また留学生の6割程度が、日本で働くことを希望しています。改めて留学生を「高度人材の予備軍」として位置づけ、「受け入れる」という姿勢ではなく、優秀な人材を「誘致」するという姿勢に切り替える必要があります。

来日前から起こる意識のミスマッチ


田中キャスター:やみくもに数を増やそうとするのではなく、留学生は「高度人材の予備軍」と捉えて、「誘致」していく、という姿勢が大切ということですね。これまで、そうした高度人材となりうる留学生を誘致できていたのでしょうか。
 
九門:実際に日本で働きたいと思っている優秀な留学生が日本の企業で働けていない状況があります。日本での就職者数は2019年に過去最高を記録しましたが、2020年は前年比4.1%減の2万9,689人となりました。留学生の約6割が日本での就職を希望していますが、実際に就職しているのは全体の3割程度にとどまっています。それは日本に来る前から「意識のミスマッチ」が起きているからです。

田中キャスター:意識のミスマッチとはどういうことでしょうか。
 
九門:人材会社ディスコの2021年調査によれば、企業は外国人材を採用する目的として、外国人としての資質や特性を活かしてほしいとする回答が多くみられました。しかし、実際は高い日本語力でコミュニケーションがとれる外国人材を求める傾向にあります。つまり、ダイバーシティの強みを活かそうと思っていながら、無意識に日本人同様に働ける外国人を採用したいという矛盾が生じているのです。
 一方で留学生は、日本はグローバルな企業も多くあるので当然英語でも働けるだろうと思っています。また実際に日本で就職活動をする時点で日本企業の特殊性や就職の難しさの現実を知ることになります。
 
田中キャスター:ミスマッチについて、九門さんは留学生の声を聞くこともありますか。
 
九門さん:留学生からは、「日本にきてからこれほど日本語レベルが厳しいと知りました」という声や、「日本語能力や企業文化への理解が、日本で働くにあたってこれほどまでに重要な課題だと思っていませんでした」との声が非常に多い印象です。また日本独自の就職活動のあり方に戸惑う学生もいます。

次回に続く

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