6月17日(月)~6月21日(金)の見通し
■まず初めに流し読み (1分要約)
米国のFOMCは無事通過、政策金利に変更なしだがドットチャート (FOMCメンバーによる各年末時点の金利予測) では2024年末に1回利下げとタカ的変化。ただし市場はすでに織り込み済みであり、直近の雇用統計と物価指数もポジティブとなったため特段心配は無しと思われる。
欧州中央銀行による先週の政策会合では利下げとなったが、米国は強烈な成長が後押しするのに対し欧州や英国は弱め。これ故「利下げサイクル」に入るもペースが異なることは自然と考えられる。
日銀は事前の報道の「国債買入額の減額」が議論されるも今会合では決定に至らず、次の7月会合にて国債買入額の減額ペースが示されることとなった。これを受け肩透かしを食らった市場が円安継続、日本国債の金利も下落したが株価は先物にてほぼ無風。国債買入額の減額は今後1か月、市場と対話しながらスケジュールを決めるとのこと。引き続き緩和的な政策が続くも利上げの姿勢は崩さず、データ次第の中立的な立場を維持。
欧州議会選挙は極右派の台頭と環境派の後退が目立つ結果に、長期間かけてユーロ圏における地政学が変化する可能性高まる。
米国市場は水曜にお休みであり、経済指標としては小売売上高に注目。また英国の政策金利発表もあり欧州にならって利下げするかが焦点。為替取引、特にポンドドルやポンドクロスのトレーダーは注意。
全体として株式相場は堅調、米国は短期的に過熱が取れれば上を目指しやすく、日本と香港は横ばいを想定。ドル円は基本上方向だが160円水準の介入に注意。米長期金利は緩やかな下落、原油やゴールドは横ばいと考える。
■先週の振り返り
●お試し利下げのECB、まだまだ維持のFRB、世界に逆行する日銀
今週最も注目が集まったイベントとなったFOMCが13日早朝に閉幕、政策金利が発表されました。
FRBパウエル議長は前回と同じく政策金利を5.25%~5.50%に据え置くことを決定し、今会合を含め7会合連続で維持となりました。
声明文においては冒頭、「委員会の (物価上昇率) 2%目標に対し緩やかな更なる進展がここ数か月で見られた」("In recent months, there has been modest further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective") となり、以前の「2%目標に対し更なる進展を欠いている」(…there has been a lack of further…) からインフレ後退をより確信するようなポジティブな内容となりました。
また注目のSEP (経済見通し) におけるドットチャートではFOMCメンバーが2024年末までの利下げを1回と見ており、以前SEPを発表した3月の3回から2回ほど利下げが後退した形となりました。
これはもちろんタカ的な変化ですが、既に市場では3月FOMC終了後からの経済指標を通して年内利下げ回数を1回と見ており、今会合では利下げ回数が2回であろうと1回であろうと株式に悪影響が無いと考えられていました。
会見にてパウエル議長は「我々は常にある時点での利下げを示唆してきており、利上げを基本シナリオとしていない」と次のアクションを利下げと明確に示唆しながらも「第一四半期のデータはインフレ抑制に歯止めがかかった」としており、「緩和的な政策に転じるにはまだ時間がかかる」と安易な利下げを行わないとしています。
ただし「政策が景気を抑制しており、我々が望むような効果をもたらしているという非常に明確な証拠がある」との発言から見て取れるように、既にFRBの現状の金利が引締め的水準にあることを認識しているため、「可能な限りインフレを抑えながら利下げを進めていく」方向性には変更ないと考えられます。
また今回のSEPにおける変化としてPCE (個人消費支出価格指数) の上方修正が挙げられます。
2024年末におけるPCEは2.6%へ (3月時点の予測: 2.4%)、FRBが特に重視するコアPCEは2.8% (3月時点の予測: 2.6%) とそれぞれ0.2%ずつプラスとなり、少なくともFOMCメンバーは「インフレ率が簡単には低下しない」と考えていると分かります。
他、GDPや失業率に関しては3月と同様の予測 (GDP: 2.1%、失業率: 4.0%) となっており、経済が強くも想定よりややインフレが強い、ただし全体として大きな問題ではないと見ていることが分かります。
同日に発表された消費者物価指数 (CPI) は前年比予想3.4%に対し結果3.3%、コアCPIでは3.5%に対し3.4%と弱い結果となりました。
弱いCPIをリードするのはエネルギー・ガソリン項目でしたが、エネルギーは-2.0%、ガソリンは-3.6%となり、4月から5月にかけて原油価格が下落した影響が反映されたと見られます。
またコア分野である新車やアパレル価格が前月比にてそれぞれ-0.5%と-0.3%、中古車の価格も下落トレンドにあり、輸送サービスの項目も前月比にて-0.5%とまんべんなく落ち着いている印象が見て取れます。
加えて住居費もここ数か月の変動は落ち着いており、FRBが重視するスーパーコア (コア分野から住居費を除いた部分) では前月比-0.04%と2021年9月以来のマイナス域となり、これも株式に安心材料を与えたと思われます。
(少し振り返りとして) 先週末の雇用統計では一見強い雇用者数が発表されましたが、失業率が上昇し4%台へ乗せたこと、雇用者数の中身を見ればパートタイムの労働者が28万人ほど増加したのに対しフルタイムの労働者が60万人以上も減少していることから、一時の「雇用市場の過熱と賃金インフレ」時代が過ぎ去ったと感じさせる結果でした。
なお雇用統計において失業率が上昇しながら雇用者数も増加する矛盾が生じる理由として、失業率が家計調査を、雇用者数は事業者調査を基にしていることが挙げられるでしょう。
コロナ禍から米国民も複数の会社で働くいわば「掛け持ち」が多くなったため、事業所調査ではどうしてもダブりが生じ、一方の失業率は家計調査でより正確な数値を取れることが今回の「失業率は高く、かつ雇用者も増えた」理由と考えられます。
このような意味ではすでに雇用統計において発表される非農業部門の雇用者数は意味合いが薄れており、実際に発表時に米国10年金利 (長期金利) が+3%ほど上昇したにもかかわらず、株価にほとんどダメージが行きませんでした。
いずれにせよ、今回のFOMCはそこそこ良い結果に終わったと結論付けられると考えられます。
欧州の利下げの結果を振り返れば1週間前、欧州中央銀行 (ECB) が利下げしたことが市場にて話題になりましたが、すでにECBは今年の春前に利下げを示していたこともあり大きなサプライズにはなりませんでした。
ECBのラガルド総裁によって「6月ごろに利下げがあるかもしれない」との示唆から始まり、4月からフランス中央銀行のビルロワドガロー総裁が「ECBは6月までに利下げを開始するはずだ」などと度々ほのめかした関係で既に市場関係者には既定路線となっていました。
今回のECB会合では「インフレの見通しが明らかに改善した」と物価上昇率が落ち着いたと確信できる根拠により利下げをしたと見られますが、同時に「ユーロ圏内の物価上昇圧力は賃金上昇率が高まる中で依然強く、来年も目標の2%よりやや上で推移する可能性がある」と簡単に収まる気配は無いとしています。
同会合にてユーロ圏の物価上昇率は2025年に2.2%、2026年に1.9%と2年後までにようやく2%を下回るとのことですが、ECBは「会合ごとにデータ次第で判断する」としたことも含め暗に連続利下げはしないとの意思を市場に表明しています。
翻って見れば米国と欧州では経済に対する景色がだいぶ違って見えます。
2024年4月に出されたIMFからのレポートによれば、経済の実質的な成長を示すGDP成長率は米国で大幅に改善しているのに対しユーロ圏では弱い結果が発表されています。
またインフレギャップ (予測される物価上昇率と中央銀行が目標とする率の差、プラスならインフレしやすい意) と需給ギャップ (予測される実質GDPと潜在GDPの差、プラスなら成長率が高い意) の観点にて、米国ではインフレギャップより需給ギャップがよりプラスへと伸びている (しかもどちらもプラスであるためデフレになりにくい) ことで「成長率がインフレ率を上回る」のに対し、ユーロ圏及び英国ではインフレギャップがプラスに伸びつつも需給ギャップがマイナスに伸びることから「インフレ率はプラスなのに成長率はマイナス」(スタグフレーションのような状態) に陥っていることが分かります。
この予想図も最新のもので変更される可能性がありますが、少なくともECBは先週の会合で成長率の悪化を避けるためにも試験的な利下げをする必要があったと言えそうです (ある程度利下げを正当化できる、という意味も含め)。
また「実質長期金利」の側面から見れば、米国が2.1%台と金融的に引き締まっている (借入などにはやや高く、投資を抑制しインフレを抑える効果がある) のに対し、欧州地域にてGDPトップのドイツやフランスではそれぞれ0.5%及び0.9%ほどで緩和的な水準に近づきつつあるため、(長期金利の動向が政策金利の動きにある程度連動すると考えれば) 欧州よりも米国のほうが利下げの余白がある、と言い換えられそうです。
他方、日銀では3月の会合から続くマイナス金利の解除と同じ、政策金利 (無担保コールレート翌日物) を0~0.1%程度に誘導するとの方針を維持しました。
また長期国債やCP等・社債等に関しても今年3月の会合と同様としましたが、次回の7月会合にて「今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する」としました。
事前情報として日銀による国債購入額の減額 (=債券利回りが上昇しやすくなり、円安阻止に一躍買うが株価に逆風が吹きやすい) が検討されるとの報道がなされましたが、今会合では減額とはならず市場は落胆、円安が進み日本10年債利回りも下落しています。
会見にて植田総裁は「長いターム (期間) で考えると望ましい国債保有残高に達するまでかなりの時間がかかる」としたうえで、「ある程度市場にとって予見可能な形でスケジュールを提示したいという気持ちと、計画のプロセスで、長期国債の市場に不安定的な動きが大きく起きることを避けるためオペの若干の柔軟性を担保したい」との理由で1か月かけて市場とコミュニケーションをし、次回会合にてそのスケジュールを提示するとしました。
また7月の会合でデータ次第で利上げもあり得るとしており、長期国債の買入や金利も考慮したうえで政策金利を決定すると発言しています。
ただしすでに5月、日銀による定例の国債買い入れオペ (公開市場操作) における減額が行われており、月間4.5兆円ペース (5/31実施の1.14兆円分を除く) までの低下が見られています。
仮に事前の報道通り減額が決定したとしても大きなサプライズとはなりづらかったため、ある意味で「逆サプライズ」とも言えそうです。
日本の経済統計を垣間見ると3月に「1990年代ぶりの良い春闘」が発表されてからひと月、日本の実質賃金は4月分にて未だに前年比でマイナス域にあることが一部で懸念されています。
3月分が前年比-2.1%に対し4月分が-0.7%とその幅自体は縮小しており、春闘の影響が出てくるのは夏以降と一般に言われることを考慮すれば、近いうちに実質賃金もプラス転換し、日本の消費にも良い影響を及ぼすとされています。
しかし同時に物価指数 (CPI) も上昇すると見込まれており、5月には再生可能エネルギー賦課金が引き上げられ、6月及び7月にインフラへの補助金である「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了する予定であり、コアCPIはこの実質的な値上がりの影響で5~7月において各月ごとに+0.25%ずつ上昇するとの試算も出ています。
上にて実質賃金が上昇することで消費に良い影響が出ると申しましたが、需要に依らないCPIの上昇で実質賃金 (名目賃金からCPIの値を引いた賃金) の伸びに陰りが出れば、再び消費の勢いにも陰りが出やすくなると思われます。
実際、4月時点の日銀による「物価見通し」では2025年及び2026年のコアCPIにてそれぞれ+1.9%、+2.1%としていますが、今後のCPIの数値によっては物価見通しが下方修正されることも考えなければならないでしょう。
このため日銀が目標とするインフレ率2%を持続的に維持できなければ金融緩和的な態度で再び経済を後押しすることになりそうですが、金融政策の側面から見れば主に以下二つの選択肢が考えられます。
金融正常化を優先するため素早く利上げ、国債買入額を減額し (QT)、物価上昇率がマイナスで推移しつつ米国などでも経済の減速が見られたところで再び利下げをする (利上げは金融緩和への弾を作るため)
利上げによる株価の下落や借入コスト増大などの経済への悪影響を鑑み、利上げのポーズは取るもののゆっくりとした利上げを行い、現在の緩和的な金融政策の副作用として出ている円安は「国債買入額の減額」でとりあえず様子を見てみる (米国のようなメリハリある運営ではなく、なだらかに引き締めていく)
「金融正常化」と市場からは求められていますが、日本への実体経済の影響を鑑みた上では後者の選択肢を取ると考えられます。
そのうえで物価がマイナス域に突入すれば再び金融緩和に転じることとなりそうですが、米国の金利が顕著に落ちない限り現在の強烈な円安トレンドが反転する可能性は低いと考えられます。
いずれにせよ日銀は世界各国が利下げサイクルに入る中で一人「利上げサイクル」に入ろうとすることから、今後の金融政策の運びも自国と他国の状況を見ながら慎重に行われる可能性がやや高いと思われます。
●欧州議会選挙の結果
加えて先週末から今週頭にかけて行われた欧州議会選挙では極右、及びEU懐疑派の急伸が驚きをもって報じられました。
定数720議席に対し最大会派である欧州人民党グループ (EPP) が186議席と微増、第二会派である社会・民主進歩同盟 (S&D) が微減の135議席となりましたが、中道派である欧州刷新 (Renew) は前回の102議席から79議席まで大幅減、変わってEU懐疑派や極右派の議席が増加するなど、欧州地域における国民の不満が顕著に表れた形となりました。
以前より欧州では移民の問題がくすぶっていましたが、難民の多くは中東や北アフリカよりはるばるやってくるケースが多いとの統計が出ています。
EU加盟国ではありませんがトルコが難民を最も多く受け入れていると言われ、2016年に結ばれた「EU・トルコ合意」(EU-Turkey Deal) ではトルコからギリシャ諸島へ渡った不法難民を送り返すと同時にトルコにて待機している難民を同数受け入れるという条件が結ばれました。
加えてドイツも人道的見地よりダブリン協定 (難民は最初に入ったEU加盟国にて難民申請を行わなければならないという約束) を破り多くの難民を受け入れたため、それまでほとんど見られなかったテロが難民により (多くは難民申請を却下されるなど問題を抱えた状態で) 発生、EU域の国民も難民に対し嫌な顔をするようになってしまった経緯があります。
またEUでは何かと環境に対する規制が強いことでも有名です。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長 (欧州委員会の首相とも言える代表的な存在) を含む主要メンバー、及び第二会派のS&Dにより2019年から「欧州グリーンディール」と呼ばれる政策を打ち出しました。
2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指す同施策に関連するように、農業においては「農場から食卓まで」(Farm to Fork Strategy) を標榜し化学農薬の削減及び有機農業の推進、及び補助金の投入を行ったり、「Fit for 55」と呼ばれる温室効果ガス削減の施策に基づき2035年までに新車登録を電気自動車含むゼロ排出車 (ZEV) に限定するなど環境対策に対しやや急進的な政策を推し進めている印象を受けます。
このような「エコ・気候変動対策」や「難民保護」に関する夢物語を押し付けられて疲れてしまったEU民にとって今回の選挙は意思表明するのに絶好のチャンスであったと言え、結果としてその不満がEU懐疑派 (国ごとの意思よりもEU全体の意思が重んじられることに対する不満を掲げる会派) や極右派 (自国民を大切にする会派) の台頭、また環境を大事にする会派の議席を減らすことに繋がったと考えられます。
極右派の台頭はもちろんEU各国でも進んでいます。
今回の欧州議会選挙は国ごとに割り当てられた議席に応じて選挙を行い、合算して欧州議会を構成する、というやり方となっていますが、フランスにおける欧州議会選挙の結果は極右政党である「国民連合」が首位となり、二番手の政党「再生」の名誉党首であるマクロン大統領は今回の結果を受け国民議会の解散を決定、6月30日と7月7日に分けて投票を行い国民の信を問うとしました。
国民連合の党首は2022年までマリーヌ・ル・ペン氏が率いた政党でしたが、同年4月に行われた大統領選で敗れたルペン氏はその後に同党首を退任、新たな党首として当時27歳のジョルダン・バルデラ氏が就任しています。
ある調査ではフランス国内における18歳~24歳の若者のおよそ3割がバルデラ氏に投票するとアンケートに答えており、その若さとリーダーシップから一定の人気を確保していることも特徴的です。
フランス国内の総選挙でもし国民連合が下院の第一党となった場合、「中道左派のマクロン大統領と極右のバルデラ首相」というちぐはぐな組み合わせになり、政権運営が以前より滞る (コアビタシオン = cohabitation) 状態になることが予想されるでしょう。
またフランスに限らずドイツにおいても極右政党が台頭しており、ショルツ首相率いる政権が来年の選挙にて交代、じわじわと右派の台頭・環境派の衰退が進めば、欧州全体に広がる地殻変動となる可能性も十分に考えられます。
今すぐ危機が差し迫るとは言えませんが、今後EU自体の構成やEU周辺国との地政学が変わってくることも視野に入りそうです。
※参考までにフランス議会と大統領について以下引用文を掲載します。
■今週の見通し
FOMCや日銀会合を終えた今週は比較的静かになりそうですが、陰では英国のイングランド銀行 (BOE) による政策金利発表が控えています。
上でも述べたように、英国は欧州と似たインフレ・需給ギャップにあるため、現状では「インフレしやすい、かつ、成長も落ちやすい」状態にあるため金融政策の運びが難しい形になっています。
5月の英国・金融政策委員会 (MPC) では参加者7名のうち2名が利下げを支持する立場に回っており、MPCを主催するイングランド銀行のベイリー総裁も「6月のMPCにおける利下げ開始は今後のデータ次第であり、既成事実でないものの、その可能性を排除するものではない」とハト的なスタンスをにじませるような発言をしました。
また5月会合における議事録では物価上昇率が2026年以降に1.5%程度まで落ち込むことが指摘され、現状の政策金利の維持具合によっては2%をキープすることが難しい、すなわちイングランド銀行は「利下げをより早い段階で行いたい」と考えているように思われます。
※各国の利下げサイクルを含め「これが経済に対し結果として正解なのか?」は予測不可能であるため、中央銀行の政策金利に対する意思を読み取ることにフォーカスしています。
他、火曜に米国にて小売売上高が発表されること、週半ばには米国にて祝日が挟まることには注意したいところです。
※以下チャートは6月14日(金)午後時点のものです。
◆ナスダック100 (NDQ)
ナスダック100は5月末に下値を支えた後に史上最高値を突破したことにより、現在はサマーラリーへと向かっている印象を受けます。
ただし先週に急角度で上昇したため、数営業日の調整を挟んだ後に8月までじりじりと高くなるようなイメージが現状で最もらしいと見ています。
買いの姿勢は崩さずが良いと思われますが、今から新規で大きく買うよりは既存のポジションを伸ばしていくイメージが適していると見ています。
想定レンジ: 18900~20000
◆S&P 500 (SPX)
こちらもサマーラリーへと向かう初期段階と思われます。
米国では物価指数や雇用統計の発表後も株価が伸びていますが、この光景は市場が「FRBは雇用と物価のデュアルマンデート (二重使命) をしっかり遂行している」と太鼓判を押していると見るのが自然と思われます。
またテクニカル的に言えば週足にてMACDがプラス転換しつつあり、通常上昇トレンドにてこの現象が起きるともう一登りする可能性が高まります。
加えてFOMCを無事通過したことが後押しとなりますが、日足ではやや過熱が見られるため「じり高」のイメージで進むと考えられます。
想定レンジ: 5320~5500
◆米国10年債利回り (US10Y)
米国10年債利回りは緩やかに下落しており、今後もこの下落トレンドが続きやすいと見ています。
今年4月及び5月の高値を結んだ下落トレンドラインが上値を押さえていますが、FOMCにてパウエル議長が「現在の金利は引締め的だ」との旨を述べたように突然上昇トレンドへ向かう可能性は少ないでしょう。
また2023年に5%まで上昇しましたが、安易な利下げに走らないうちは市場も「現在はインフレを抑えつける金利水準にある」とのコンセンサス (一致意見) を持っているため、時間をかけて5%まで仮に上昇したとしても株式を下落トレンド転換させるほどの力は無いと思われます。
このためすでに債券ETFなどに追い風が吹き始めていますが、もし検討されている場合はなるべく金利が上昇した後に (勇気をもって) 購入するとリターンを高めることが出来ると思います。
想定レンジ: 4.03%~4.55%
◆香港ハンセン指数 (HSI)
香港ハンセン指数は今年1月前半における最悪の状況を免れたものの、材料不足のため上昇しづらくなっています。
どちらかと言えばもう一段上を目指す形ですが、2021年から一貫して下落トレンドであったために一度売り圧をいなす必要があります。
このため時間を掛けて再び上昇するのが自然ですが、その時の大まかな上値目安は22700 (2023年1月の高値水準) であると思われます。
特に以前の抵抗線であった17200付近まで下落し反発を確認すれば、絶好の買い場が到来したと見て強気へ転換しても良さそうです。
想定レンジ: 17200~19000
◆米ドル円 (USDJPY)
ドル円は先の日銀会合にて事前報道の「国債買入額の減額」が無かったために再び円安へ向かっています。
また国債買入額の減額が仮に今回の日銀会合で発表されていたとしても、(6月の買入額発表も確認しなければなりませんが) 事実ベースとして5月の買入額が減少したために市場参加者はある程度織り込んでおり、主力の「利上げ」、もっと言えば米国の「利下げ」が発表されない限り円安のペースを落とすことは難しいと考えられます。
上値には160円がありますが、ここでは5月初めに行われた為替介入の水準に近い理由もあり「念のため」介入には気を付けたいところです (個人的には今回、160円水準では介入されないと考えていますが、念のため…)
想定レンジ: 154.5~160.0
◆日経225 (NI225)
日経225は冴えない展開が続いています。
日本株は1月~4月初めにかけて海外投資家からの現物株買い、それに伴う資金流入があった関係で日経225も史上最高値であった39000付近を超えたことは記憶に新しいですが、4月初めからの米国の半導体相場の調整とともに横ばい相場となり、米国の半導体相場の復活に取り残される形で動意が無くなりつつあります。
また海外投資家からの現物株買いの動きはそれ以降鈍く、例えば5月第4週目から三週間連続で売り越しされていますが、そもそも (先物も合わせて) 海外投資家の動きが鈍いこと自体値動きに動意をもたらしづらい面もあり、次の上昇まで何らかの材料が必要になるでしょう。
更に日経225は半導体に関連する銘柄のウェートが大きく、例えば東京エレクトロンやアドバンテストはまさにど真ん中の銘柄です。
半導体に値動きが釣られやすい技術セクターのウェートも大きいために年初は米国の半導体株の急騰から共に買われましたが、現在の停滞ぶりを見れば「年初の大きな買いは業績に加え、過度な期待も入った買い」であったことが分かります。
チャートの形からいえば日経平均は「上昇→横ばい→上昇…」の繰り返しを踏んでおり、横ばい相場はおおよそ半年以上を経ることからもうしばらく横ばい相場が続く可能性がありそうです。
想定レンジ: 36700~41100
◆原油 (CL1!)・ゴールド (GOLD)
【原油】は引き続き緩やかな上昇と見られます。
遡って6月2日、原油を産出する国で組織されるOPEC+ (石油輸出国機構) では原油の追加減産の一部を今年9月末まで延長、その後は1年間かけて段階的に廃止する (すなわち原油産出を増やしていく) としました。
OPEC+では2022年11月より日量200万バレルの減産を行うことで合意、更に一部の加盟国が日量166万バレルの減産を自主的に行い、加えて2023年11月に日量220万バレルの追加減産を決定していました。
これらを合わせると組織内での減産量は日量586万バレルですが、2024年9月をもって減産量を減らすことで原油の供給量を増やしていく方針を決定したため、少なくともOPEC+の減産、これに伴う供給量減少による原油価格上昇のリスクは低くなったと考えられます。
また中東では現在もイスラエル 対 イスラム系組織及び国家が戦闘を続けていますが、4月に起きたイランとイスラエルの衝突が中東戦争を引き起こすのではないか?との懸念は下火になり、ある意味で地政学リスクが意識されない形となっています。
世界各国のインフレ率も安定しており、チャートの形から見ても当面は横ばい相場が継続すると見られます。
また多少上昇しても、今年4月の高値である87ドル付近に到達しない限りは株式への悪影響は少ないと思われます。
想定レンジ: 72.0~80.0
【ゴールド】は引き続き、2011年から続いた強気のパターンから上に飛び出したことで上昇トレンドが続く見込みです。
上でも述べましたがFRBは政策金利を据え置き続けており、当面数か月はこの傾向が続くと考えられます。
米国の利下げが最速でも今年9月以降と言われる中、ゴールドは米国の金利の高さ、それに伴う米ドルの強さに押される形で「材料不足」の横ばい相場へと移行しています。
ただし再び下落する形を描くより、来る利下げによる米ドルの弱体化とゴールドの価値上昇 (二つは反比例しやすいです) を考えれば、安値で下がったところを買っていく方針がより良いと思われます。
当面は2280ドルを下限とした横ばい相場と考えられますが、仮に2280ドルを下回ったとしても大きく慌てることは無いと見ています (その分、資金量の調整も必要です)。
想定レンジ: 2280~2450
※当記事はファンダメンタルズにおいて事実の正確さを満たすために尽力していますが、万一事実と異なる点等ございましたらお気軽にご教示ください。
また本稿では分かりやすさを優先するため、金融用語を厳密に使い分けないこともございます。
※特段断らない限り、記事内すべてのイベントに関する日時は日本時間基準でお話しています。
また、チャートでは単純移動平均線 (Simple Moving Average、以下MA) を用いており、25MA (緑線)、91MA (赤線)、200MA (黄土色線)としています。
主要指数はすべて現物取引のチャートを用いています。
ティッカーシンボルは個別銘柄とETF以外、TradingView内のものを使用しています。
よろしければサポートしていただけると嬉しいです!あなたのちょっとしたお気持ちが私の励みとなります!