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ロックダウン下のアメリカから見る日本経済③:米科学者たちの秘密結社、コロナ撃退の秘策を政府に向けて提言

昨日までの投稿まとめ(これまでの話)

昨日の投稿では、コロナを巡る「生命」と「経済」のバランシング問題は、つまるところ、足元では「医療崩壊」というボトルネック問題を上手く制御しつつも、一方ではワクチン開発を待たねばならないこと、またそれまでには相当な時間(18ヶ月と想定した)がかかることから、その間、国民の身動きが取れなくなることを、「個人がコントロールできない問題」と明確にした上で、改めて「国家・経済システムの問題」と定義し直し、たとえば日本が国家としてどのようにこれに対処するかについて、相対的に生活が苦しくなった人たちへの生活補償を行うことを最優先と考え、それを賄(まかな)うために特別国債の発行を行い、この償還を相続税・金融資産課税で行っていくべきだと書いた。

科学者たちが作った秘密結社、4つの解決策を提示

そうこうするうち、今朝の米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の一面に、非常に興味深い記事が掲載された。

これはアメリカ政府への提言であるものの、昨日指摘した日本におけるいくつかの問題点も、この提言で解決する可能性があるので、ここで紹介したい。

『新型コロナ対策 極秘「マンハッタン計画」とは:米政府に計画を持ち込むための「裏口」確保 』と題された記事の中には、ノーベル賞受賞者を含む科学者グループが実際に提言としてまとめた17ページに渡る資料が添付されている。

僕自身、すぐに全ページを読み込んだが、ここではかなり大胆に、コロナウイルスを段階的に封じ込め、学校やビジネス生活を早期に再始動するために必要なことが述べられている。

まず、冒頭における、彼女たち彼らの宣言が素晴らしい。

私たちは安全で効果的なコロナウイルスの「治療手段」と「ワクチン」を最短の時間軸で開発し、一方では将来的なコロナウイルスの感染爆発のリスクを低減しつつ、もう一方では社会を再稼働させるため、実行可能で、また偏りの無い4つの施策を提言する、情熱的な科学者集団です。この政策提言資料に署名したどのメンバーも、直接または(知りうる限り)間接的に、この資料に記載される製薬会社などとは、一切金銭の授受などの関係が無いことを宣言します。この資料を公開するただ一つの目的は、私たちの国家、ならびに全世界が直面している深刻な脅威を撃退できるようにすることです。

この資料で、アメリカの科学者たちは具体的に4つの提言を行っている。

コロナウイルスを撃退する、治療法、ワクチン開発に関する「最短ルートの探索」に関する3つの実行施策と、学校や職場再開に関する1つの衛生施策に分かれている。

仕事の傍らでnoteを書いていることから、必ずしも十分な時間が取れず、僕の翻訳が読みにくいところもあるだろうが、一つひとつ紹介していきたい。

追記(4月30日):もともと僕が参照した英文記事には、17ページの提言資料全文が公開されているのだが、残念ながら、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版ではこれが翻訳されなかった。以下全ては僕が個人的に翻訳し、また要約したものだ。

解決策1.エボラ出血熱向け治療薬「レムデシビル」の再利用(2020年4-5月にテスト実施)

この科学者グループは、新薬の開発を待っていたら、この問題の解決には間に合わないと明言している。

そこで、既に別の病気の治療に向けて開発された薬の中から、コロナウイルスの治療にも効果を発揮するものをいくつかリストアップしている。

具体的には、この資料の中で、「レムデシビル」という抗ウイルス薬の効果にとりわけ注目している。

そもそもコロナウイルスというのは、SARS-CoV-2 virusというウイルスの別名であり、このウイルスに感染した人の中から、COVID-19という病気が発症するというメカニズムになっている。

SARS-CoV-2 virusの遺伝情報は、一本鎖のRNAに書き込まれており、SARS-CoV-2 virusは、自身を複製して増殖する過程で、RNAレプリカーゼと呼ばれるウイルス酵素を使って、この一本鎖のRNAを複製しなければならない。

この複製を、「レムデシビル」などの抗ウイルス薬で阻止するのが有効とのこと。人間の体内にはこの酵素が存在しないので、「レムデシビル」は人間の害にはならない。HIVの治療にも、こうした手法が使われているという。

この資料では、ここから突っ込んで政府への提言を行う。

まず、FDA(アメリカ食品医薬品局)は「レムデシビル」の製造メーカーであるギリアド・サイエンシズと緊密に連携を取り、ギリアド社からの医薬品申請を待つのではなく、むしろ自分から率先してデータを取りに行き、これを検証することで、通常数ヶ月にも渡る申請プロセスを思い切って短縮するべきであり、その他製薬メーカーを巻き込んで、大量生産に持ち込むことが非常に重要としている。

レムデシビルは対エボラ出血熱ウイルスに関するサルを使った実験では、これを投与したサルの命が完全にウイルスから守られたこと、また人間の細胞に関しても「レムデシビル」を投与することでSARS-CoV-2 virusの複製を止めたという結果をきちんと取り上げている。

もちろん、適切に計画された、ランダムかつ良く制御された臨床試験が不可欠とも記載されている。

追記:この記事が出たあと、NHKでも「レムデシビル、新型コロナの治療薬として特例承認活用へ」という記事が出ている。日本政府がこうした動きに出たのは素晴らしいことだ。

解決策2.コロナ抗体(免疫)による治療(2020年6-8月にテスト実施)

この資料では、アメリカのバイオテクノロジー企業は、既にコロナウイルスに対する「抗体(免疫)」の複製に成功していると明言している。

それはいったんコロナウイルスに感染し、回復した患者から採取されたもので、どの抗体がとりわけコロナウイルスを無効化するのかペトリ皿(シャーレ)培養試験では確認されているとのこと。

こうしたモノクローム抗体と呼ばれる抗体が、未感染者のコロナウイルスへの感染を抑止し、またコロナウイルスに既に感染した患者を救うために使用されることになるとの記載がある。

このモノクローム抗体を加速的に開発するには、リジェネロン製薬社、ビア・バイオテクノロジー社の2社が目下有力な企業で、米国で100%製造できる生産能力も持ち合わせていると記載がある。

またこの資料では、人体への臨床試験を今年6月までに行うべきで、8月から9月のタイミングまでに新薬として承認すべきだと指摘している。

そうすることで、今秋に感染の第二波がやってこないようにすることが重要とも。これはエボラ出血熱に関する抗体の承認で過去行われたこともあるので、実現可能なはずだとしている。

具体的には、ホワイトハウスとFDA(アメリカ食品医薬品局)が、毎日こうした企業とやり取りをし、試験的新薬の申請を行わせるが、この申請が行われる前に、FDAからの質問が全て解決できるようにしておくように、全てを並列で進めるべきだと進言する。

科学者たちのFDAに対する注文は止まらない。

その他の緊急ではない薬については、いち早く海外における工場での生産を認め、アメリカにある製薬のための工場は全てコロナウイルスの抗体生成に使えるようにすべきと述べている。

通常9-12ヶ月かかる新薬の承認プロセスも、受領から1週間でこれを終えよと提言している徹底ぶりだ。

解決策3.コロナ向け正規ワクチンの開発(2020年3月-2021年3月にテスト実施)

歴史的に、新ワクチンの開発には6~8年の歳月がかかってきたとのこと。

今回のウォール・ストリート・ジャーナルの記事でも、ワクチンが18ヶ月で開発されるとしたら、「それは相当ラッキーなことだ」という記述がある。

現在のところ、不活性ウイルス粒子(シノバック社)、組み換えタンパク質(サノフィ社)、ハイブリッドウイルス(ジャンセン社)、RNA型ワクチン(モデルナ社、キュアバック社、バイオンテック社とファイザー社連合、トランスレート社とサノフィ社連合)など、いくつか有力な候補があるが、このワクチンが、インフルエンザの予防接種のように季節性のものになるのか、はしかのワクチンのように長期間に渡るものになるのかは、現在分かっていないとのこと。

いずれにせよ、2020年3月から既に行われているこのテストを、2021年3月には終わらせることを目標とすべきとしている。

手戻りやワクチン候補間での比較検証可能性を高めるため、極めて標準化された臨床試験手法を行うべく、連邦政府は、このワクチン開発への開発とそれに必要な投資を制御する「委員会」を立ち上げるべきと提言している。

面白いのは、製薬会社が投資の意思決定を行っているようでは、結局勝ち筋のあるワクチンにしか投資ができないということになりかねず(彼らはビジネスマンだから、ある意味で仕方ないのだが)、それでは時間切れになってしまうので、複数のワクチン候補に対して、「政府ないし大きな基金がリスクを取って、失敗があること前提で、開発に関する投資意思決定を行うべきだ」と明確に提言している。

多くの製薬会社が、情報を極限まで透明化することで、中央集権的な開発体制を取るべきとのこと。

解決策4.学校や職場再開に関する衛生施策(医療従事者以外による唾液PCR検査の複数回実施)

最後にこの資料では、どうやって早期に学校や職場を再開に漕ぎ着けさせるか、ということを衛生的な観点、また感染爆発を起こさないための頻繁な初期検査(スクリーニング)によって担保するべきと提言している。

まず、人に表面化している「症状」でコロナウイルスの発症を判断するという方法は、必ずしもコロナ感染を捉えることができないので注意が必要だと警鐘を鳴らしている。

武漢で家々を回って検温した中国衛生局の職員であっても、86%の患者を特定することができなかったと指摘している。

この他、感染者4,950人に対して行った調査においても、6.2%は無症状だったとのことで、また、さらに38%の人たちは自分たちがコロナウイルスに感染したと思わないと感じるほど、軽い症状しか無かったとのこと。

昨日の記事でも問題にしたPCR検査については、やはり28.7%ほどの誤謬率があるものの、これを時間を置いて2回連続で行うことで7.8%に減らすことができるので、複数回行うことの重要性を指摘している。

PCR検査は、現在医療機関で行われている「喉に綿棒をこすりつける方法」ではなく、「唾液(だえき)から採取する方法」であっても、94%の正確性が担保できるので、こうして簡便な方法にどんどん変えていくべきと指摘する。

こうした簡便な方法を週に何回も学校や職場で行うことで、5月、6月にでも早期に学校や仕事を再開できると言っている。

現在の医療従事者に頼った検査方法、とりわけ初期症状のある患者候補に、医療従事者が「ある種のテクニック」を必要とする喉の粘膜からの検体採取を行うような方法を変えるべきだと指摘している。

これらのやり方では、大量検査を行うということはできず、考え方を根本から変える必要があるとのこと。

大切なのは無症状の人であっても、大量に検査を施すこと。また、学校や会社の(医療従事者ではない)人間が、検査のトレーニングを受けてこれを実施できるようにすべきだと指摘している。

要は、「医療崩壊」という概念から離れるため、医療従事者以外にもPCR検査を簡便に実施する権限を与え、社会全体で週に何回も検査を行うのがベストの選択肢だとのこと。

これにくわえて、やはり学校や職場でもマスクを付けることが大切だというのは、日本の社会に馴染みが良いだろう。サージカルマスクだと、感染リスクを68%も減らすことができるとのこと。

日本の問題解決にも大きなヒントになる可能性高い

ここまで翻訳し、書いてきて、昨日話題にして、僕自身どうにもこうにも解決が難しいと思われた、

(1)「医療崩壊」という 新たなボトルネックの出現
(2)PCR検査の誤謬率による、ボトルネック制御の難しさ
(3)ワクチン開発までは、常にヒット・アンド・アウェイ

という3つの問題を、(まだ計画段階ではあるものの)この科学者たちは見事に解決してしまった。

朝早く起きて(僕はアメリカに移住してからお酒も飲まなくなったし、朝型なのだ)、この記事を見て、単純にすごいなと思った。

アメリカの行動の早さと、ある種大胆な勇気。この秘密結社は、医学研究者から投資家になったトム・カイルという人がリードしたそうだ。

そして、この資料に名を連ねた人たちの中に、日本人の名前が一人見つかったことが嬉しかった。Akiko Iwasaki, PhD

エール大学の免疫学教授だそうだ。

こうした構造的な議論をきちんとすることで、大きな問題と上手く戦える道筋をつけてくれたことに、心から感謝したい。

(記事終わり)

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