『夏のアロマティカ』❽無残
高校を卒業してからの過去2年間を振り返りながら、夕弥は深い絶望感に包まれている。大学に進学した後も、彼は小薪との関係を続けており、休暇の際には彼女に会いに行っていた。小薪とのやり取りや直接会う時間は、彼の心にとっての唯一の救いだった。
しかし、夕弥は小薪に対して何事もなかったかのように振る舞ってきた。彼の偽りの笑顔は、彼女を欺いていた。一時期、電話すらできなくなるほどだった彼は、それを「忙しかった」という言い訳で覆い隠した。
「小薪に本当のことを話していたら、どうなっていただろうか?」と夕弥は思う。しかし、彼は自分の苦しみを一人で抱え込んでおり、その重さに静かに耐え続けている。小薪との限られた時間は、彼の心を一時的に救い、彼を壊れた現実から離れさせていた。
この2年間は、夕弥にとってただの無残な記憶として残る。彼の心は、もはや何も感じられないように、ただ静かに沈んでいく。自分の心が壊れてしまったことを、彼はただ淡々と受け入れている。ああ、これが初めて心が壊れた時期だった。こんなにも無情で、無残な時間だった。ああ、これが初めて心が壊れた時期だった。こんなにも無情で、無残な時間だった。
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