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『夏のアロマティカ』⑪海に行く

ある秋の朝、夕弥たちの部活の仲間たちは、海への小旅行を企画した。電車での移動中、みんなは海での楽しみに胸を躍らせていた。窓の外を流れる景色が、海への期待を高めていった。

海に到着すると、一行は潮の香りと波の音に迎えられた。波が「ザザザザー」と穏やかに打ち寄せる音が聞こえ、「海の塩っぽい香りがするね」と誰かが呟いた。

太陽の暖かさと海風の新鮮な潮の香りが心を満たした。夕弥は小薪の手をそっと握り、彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。二人は指を絡ませ、互いの温もりを感じながら海岸を歩いた。

昼食時、沙織ちゃんは「みんなでお弁当を分け合おう!」と提案した。

小薪は夕弥に特別に作ったお弁当を渡し、「これ、特に夕弥のために作ったんだよ。からあげとか好きなもの入れてみたから」と彼女はこっそりと言った。夕弥は彼女の優しさに感謝し、「ありがとう、小薪」とものすごく嬉しそうに笑って答えた。

食後、みんなで海辺を散策し、綺麗な貝殻や石を拾い集めた。「見て、この貝殻、綺麗だね」と小薪が言うと、夕弥は「あ、ホントだ!と答え、二人で集めた貝殻を見せ合った。」夕陽が海に沈む頃、沙織ちゃんが「みんな、写真撮ろうよ!」と提案し、一同はスマートフォンで浜辺で記念撮影をした。

その時、ある友人が小声で「ねえ、夕弥と小薪って付き合ってるのかな?」と尋ねた。別の友人が「うーん、、。分からないけど、いい感じだよね」と答えた。夕弥と小薪は互いの手を握りながら、少し照れくさそうに笑っていた。

帰りの電車の中で、夕弥は小薪に向かって、言った。「小薪、誕生日いつだっけ?」彼女は笑顔で、「3月12日だよ。魚座だね。また・・一緒に来ようね」と答えた。

この日の終わりと共に、夕弥と小薪は新しい記憶を心に刻み、二人の関係はさらに色鮮やかなものへと変化し彼らの心は、秋の夕暮れの空のように、深く、広く、そして何とも言えない美しさで満たされた。


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