014-スカイレストラン

014 ハイ・ファイ・セット「スカイレストラン」(1975年)

作詞:荒井由実 作曲:村井邦彦 編曲:松任谷正隆

ハイ・ファイ・セットといえば、「卒業写真」「冷たい雨」など、ユーミンの曲を歌っているイメージがあると思います。「スカイレストラン」も作詞はユーミンです。ところで、この「スカイレストラン」は曲が2つあるんです。

もともと、「スカイレストラン」という曲は、ユーミン自身が歌うために作られた曲でした。75年にドラマ「家庭の秘密」の主題歌として書き下ろされましたが、歌詞の内容がドラマに合わないという理由でボツになっています。そして、曲はそのまま活かし、歌詞だけすべて書き換えたものが採用されました。それが「あの日にかえりたい」(75年)です。だから、「あの日にかえりたい」のメロディで「スカイレストラン」の歌詞を歌うとぴったり合います。これこそがオリジナルの「スカイレストラン」です。

そのボツになった歌詞には、村井邦彦が新たに曲を付けました。それをハイ・ファイ・セットに提供したわけです。これがもう1つの「スカイレストラン」。世に出たのはこのヴァージョンです。

村井邦彦はアルファ・レコードの創設者にして、ユーミンをデビューさせた張本人です。作曲家としても、60年代後半から、歌謡曲に新しいポップス感覚を持ち込んだ才人で、この曲でも、歌詞の世界観に合わせたマイナー・キーのメロディながら、ベタッとしない都会的なメロウ感を作り出しています。

この「スカイレストラン」、のちに清野由美さんがカヴァーしてますが、こちらはさらにアーバンで良い出来。

ちなみに、B面は、こちらも根強い人気を持つ名曲「土曜の夜は羽田に来るの」。これもA面同様にユーミンと村井邦彦の曲。A面とテイストが似ていることから、それに合わせて作ったものと想像します。この曲のリリースは75年。成田空港の開港は78年。この頃の空の窓口は羽田だったのですね。メジャー・キーの曲ながら、歌詞には死の匂いが漂うところがユーミンらしいです。

さて、大事なのはここからです。ユーミンが歌ったオリジナル版の「スカイレストラン」。実はこれ、ユーミンのヴォーカルで録音され、完パケた音源があるはずなんです。バックトラックは「あの日にかえりたい」として世に出たものと同じ。つまり、「スカイレストラン」として一度完成したものを、歌詞を差し替え、ヴォーカルだけ録り直したわけです。ヴォーカルだけマルチのヴォーカルトラックの上から録り直した可能性もありますが、相当に細かいパンチインなどを経て完成させているはずなので、残っていると思うんですよね。だとしたら、この音源が日の目をみる日が来るのかどうか。気になるところです。

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