026-月曜日はシックシック

026 三井比佐子「月曜日はシックシック」(1982年)

作詞:高平哲郎 作曲:筒美京平 編曲:船山基紀

アイドルの歴史も長くなりましたが、メンバーはいるのに、活動実績のないまま存続したグループというのは聞いたことがありません。そんなグループ、パンジーのメンバーの1人、三井比佐子(チャコ)のデビューシングルは、ある種、カルト的な人気を持つ名(迷)曲となりました。

作曲を担当した筒美京平には、通称チア・リーダーものと呼ばれるシリーズがあります(もちろん、ファンが勝手にそう言っているだけですが)。要するに、チアリーディングが似合いそうな曲調ということなんですが、それらの曲の中でも、もっとも分かりやすくチアっぽいのがこの曲です。

イントロとサビ間にはやたら威勢のいい女性コーラスが配置されているのですが、その間に挟まリードヴォーカルはあまりに頼りなく、音程もフラフラ。カラオケが一般的ではなかった時代ですから、素人が歌がヘタクソなのは当たり前でした。当然、オートチューンもプロトゥールズもありませんから、ヴォーカルの編集はできても、ピッチの修正はできません。そういうのは曲作りやコーラスの入れ方でカバーするしかなかったんですね。

そして、歌詞がすごかった。タイトルの"シックシック"は病気の"シック"と泣き声の"シクシク"を掛けたもの。"All Day Fever All Night Fever あなたにお熱"は、Feverは熱病という意味ですから、"お熱"と"シック"にかかってきます。さらに、コーラスが歌う"シック・サンジューロック・フォール・イン・ラブ"は、"シック"だから36で、そこに"36回目投げキッス"と、ちゃんと被せてくる丁寧さ。ほとんどダジャレな歌詞も、ここまでされると唸ります。

そんな歌詞を書いた高平哲郎は、実は作詞家ではなく放送作家です。タモリにサングラスをかけさせた人物として(一部では)有名ですね。「笑っていいとも!」のスーパーバイザーとしても知られています。このネタにネタを重ねて、輪郭が曖昧でもオチをつければ形になる!という作詞方法は、構成作家ならでは。専業の作詞家にこういう歌詞を書けと言ってもなかなか難しいでしょう。才能も使い分けってことですね。


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