018-あじさい橋

018 城之内早苗「あじさい橋」(1986年)

作詞: 秋元康 、作曲・編曲: 見岳章

前回が秋元康と見岳章のムード歌謡の話で終わったので、その流れで。

演歌や民謡出身のアイドルといえば長山洋子がいますが、おニャン子クラブのお城(おじょう)こと城之内早苗も、幼少の頃から民謡を習っていた、演歌志向の人でした。ぶっちゃけ、(演歌の基準では)歌唱力はそこまでではなかったのですが。

86年6月リリースのこの曲は、とんねるずのムード歌謡路線、「雨の西麻布」(85年9月)、「歌謡曲」(86年1月)の流れにあります。とんねるずの曲と違うのは、パロディやお笑い的な要素がないことです。もうただ単純にいい曲なんです。

この曲が画期的だったのは、まだまだ男尊女卑や不倫などをテーマにすることが多かった演歌の世界で、主人公はポップス的とも言える女性的な恋愛観を持っていて、和な風景描写や季節感で演歌的な世界観を演出したことです。

その参考にしたと思われるのが、松本隆が作詞した、山口百恵「愛染橋」(77年)です。<渡れる 渡れない>という歌詞は、この曲の<渡りたい 渡れない>から派生したものでしょう。

ただ、演歌を意識して作っている割には(楽曲構造などから、厳密には演歌ではないのですが)2番の歌い出しで出てくる<グレイの雨雲>というカタカナ言葉に違和感を覚えます。演歌っぽい和の世界観を作りたいときは、カタカナや外来語はできるだけ使わない方がいいんですね。坂本冬美「夜桜お七」の<ティッシュを咥えたら>もそうです。一気に世界観が壊れるんです。

そういったことからも、秋元康はこの曲をド演歌にはせず、あくまでもおニャン子クラブのファン向けの演歌風ポップスにしたかったのだろうと思います。その甲斐あって、この曲はオリコン初登場1位。まぁ、おニャン子関連の曲はみんなそうなんですけど。

演歌シーンもこの手のポップス調の曲をもっと作っていたら、90年代に衰退せずに済んだのかもしれません。

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