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抹消してしまった世界遺産


世界遺産は、抹消することがあります。

これまでに抹消した世界遺産は全部で3件。2009年以降抹消した世界遺産はなかったのですが、先日、イギリスにある「海商都市リバプール」の世界遺産抹消が決定しました。




リバプールとはどんな場所?

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画像引用:Travel Book https://www.travelbook.co.jp/topic/5434

リバプールは有名なサッカーチーム「リヴァプールFC」やビートルズの出身地として知られています。

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画像引用:emohttps://emo.travel/about/

このビートルズの銅像、とても写真映え~かっこいい!!
銅像なのにリアルに歩き出しそうですよね!


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画像引用:Travel Book https://www.travelbook.co.jp/topic/5434

「テート・リヴァプール美術館」はモダンアートなどを展示する国立の美術館。海沿いにある赤い柱で支えられた奥行きのある建築デザイン。


リバプールは世界屈指の貿易港。海港史を伝える上で重要な都市なんです。
18世紀、産業革命の時代になると、海外からの輸入原料を受け入れ、大量生産された加工品を世界中へ輸出する港として、飛躍的な発展を遂げました。
奴隷貿易などの中心でもあり、大英帝国時代を支えていました。

こうした歴史や、他の海商都市にはない海運的機能を持つ建築や文化が評価に繋がり、世界遺産に登録されました!

世界遺産の登録範囲としては6つの地域に分かれていて、中でもピア・ヘッド(ビートルズの銅像がある場所)はリヴァプールの水辺の中心にあり、歴史的に重要な場所となっています。

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画像引用:Travel Book https://www.travelbook.co.jp/topic/12385

スリー・グレイシズと呼ばれ、「三つの女神」という意味を持つ荘厳な建築物は、19世紀から20世紀にかけての港の繁栄ぶりを今でも伝えています。

なんだろう...。なんか、こういう横になが~い建物を見るとイギリスって感じがします!(語彙力!!(笑))


なぜ、抹消が決定したのか


では、これだけ歴史があり建築物も重要な都市が世界遺産ではなくなってしまったのでしょうか。

実はリバプールは数年前から世界遺産の中でも「危機遺産」として登録されていました。

【危機遺産】危機遺産とは、世界遺産に登録されたものの中で、武力紛争、自然災害、大規模工事、都市開発、観光開発、商業的密猟などにより重大な危機にさらされ、その顕著な普遍的価値を損なう状態にあるもの。

引用:JTB総合研究所


「都市開発」が原因で、歴史的な景観を壊してしまいました。

ユネスコは抹消の理由として、「リバプール都市は卓越した普遍的価値を伝える特性が、取り返しのつかない形で損なわれたから」と述べています。

では、具体的にどんな開発が行われたのか。
それは、「ウォーターフロント開発」と呼ばれるものでした。

「ウォーターフロント開発」とは、老朽化した港湾施設・工場の跡地を利用して生産や物流、生活、ビジネスなど多様な都市活動の場に整備する・開発していくものです。

日本でもこういった都市開発はされていて、有名なのが「お台場」や「みなとみらい」などなど。
分かりやすくいうと、海の近くに都市開発をすることを指します。

そりゃあ、貿易を支えた建物物が評価されて世界遺産登録となったのに、工場などを取り壊して高層ビルが建てられたら、「歴史ある都市」とはかけ離れてしまいますよね…。世界遺産である理由がなくなってしまった…。


抹消された世界遺産は全部で3つ


「海商都市リバプール」の他に、オマーンにある「アラビアオリックスの保護区」とドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」が世界遺産リストから削除されています。


「アラビアオリックスの保護区」は名前の通り、アラビアオリックスというウシ科の動物の保護区です。

世界遺産・アラビアオリックスの保護区-780x440

画像引用:世界遺産オンラインガイド
https://worldheritagesite.xyz/arabian-oryx/

アラビアオリックスは想像上の動物である「ユニコーン」のモデルとなった動物と言われています。
オマーン政府は天然ガス・石油などの資源開発を優先する計画を発表し、自然保護区の範囲を99%縮減。結果として世界遺産としての顕著な普遍的価値が失われたことを理由に抹消となりました。

世界遺産のなかで登録を抹消されたのは「アラビアオリックスの保護区」が初めてでした。

「ドレスデン・エルベ渓谷」はバロック建築が目を引くドイツの芸術の都。

危機遺産(ドレスデン・エルベ渓谷)-780x440

画像引用:世界遺産オンラインガイド https://worldheritagesite.xyz/dresden-elbe/

ドイツ政府は世界遺産に登録される前からドレスデン市街の渋滞緩和を目的とした架橋計画を立てていました。10年もの間議論した結果、住民投票を実施することを決定。架橋計画賛成票が67.9%に達したため、計画が実行に移されることになり、景観を損なうとして抹消が決定しました。


抹消について私が思うこと


世界遺産検定の教科書やニュースなどで「抹消」と書かれることが多いので、今回「抹消」と私も書きました、が、なんだか「抹消」という言葉は寂しい感じがしますよね...。

もちろん、世界遺産がなくなってしまうのは世界遺産好きとしては悲しいです。これからどんどん無くなって新しいものばかりになってしまっても、地球の品位も下がるような気がするし。歴史的な建築が残っているからこそ新しい建物が「凄い!」と思えるし、これまでの歴史を感じることで心が動くことがあるだろうし!

全部新しい世界ってどんな感じなんでしょうね…。まぁ、そんなことはあり得ないと思うのですが…。


リバプールは今回世界遺産ではなくなってしまいましたが、美しい都市であることは間違いありません!!!
これは声を大にして言いたい!!!

歴史的な建物がなくても過去に大英帝国時代を支えていた歴史は変わりません。そして、これからリバプール都市はどんどん進化していくでしょう!

都市開発は、けして悪いことではないと思いますが、人間が便利に快適に生きるための「開発」で地球の歴史、遺産がなくなってしまうのは、なんだか複雑な気持ちです…。


#やめることは簡単で続けていくのは難しい


歴史があった事実を後世まで守り続けるのは、劣化などもあるし、とても難しいことなのかもしれませんね。



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