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ヴィニシウスJr.に日本代表と対戦した感想を聞いてみた

前回の記事で、6月6日の日本代表戦の感想をネイマールに直接聞いてみた件について書きました。こちらの記事です↓

その後もう随分と日が空いてしまいましたが、今回はその続編的なノリで、同じブラジル代表のヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)にも日本代表の印象を聞いてみた件について、同じくこちらでご報告します。

ネイマールとは試合の日の夜に少し立ち話しただけだったこともあり、極めてシンプルなコメントを一言もらっただけでしたが、ヴィニシウスに関しては試合の翌日も彼の通訳として一日中アテンドしていたので、もう少し深く話す時間と余裕がありました。

ちなみにこのヴィニシウスという青年、ネイマールに比べると日本国内での知名度はまだまだかもしれませんが、遅かれ早かれ世界一の選手になる可能性を秘めた選手です。昨季は弱冠21歳にしてレアル・マドリードの主軸を担い、自らのゴールでチームを欧州王者に導きました。

そして彼はピッチの外でも非常に真面目な好青年!今回のブラジル戦で彼を初めて知った方も、ぜひ名前と顔を覚えて、よければプレーもチェックしてみてほしいなと思います。

というわけで、日本代表戦についての彼のコメントを紹介したいと思いますが、その前にもうひとつ。この前回から続く「ブラジル代表の選手に日本代表について聞いてみた」シリーズ、実は僕の後ろにもうひとり「黒幕」がいます。日本代表の背番号8番、原口元気選手です。

ブラジル代表戦から遡ること数日、原口選手とzoomで話していた際に、僕が試合後にブラジルの選手達と会う可能性が高いこと、試合翌日にヴィニシウスのアテンド予定であることを伝えたところ、「日本代表についてのリアルな印象や意見をぜひ聞いてきてほしい」と頼まれていたのです。曰く「社交辞令ではない、本当の印象や感想が聞きたい」と。

たとえ僅かでも、あるいはどんな形でもチームとして(もちろん個人としても)向上できる点を逃さず探究・追求しようとする原口選手の情熱と向上心には毎回驚かされますし、感銘を受けます。そんな彼の想いに応えたかったのと、そもそも僕自身も普通に興味があったので、ネイマールやらヴィニシウスやらに思い切って聞いてみたというのが今回の経緯です。


ヴィニシウスの日本戦に対するコメント

と、以上のような文脈もあったので、アテンド中の隙間の時間、お互いに暇していたタイミングで、日本代表戦について聞いてみました。手っ取り早いのでその時の会話の内容をそのまま載せることにします。(ちなみに彼はリオ・デ・ジャネイロの訛りで話すので、僕の中で日本語に変換して再現する時、まず東京っぽい口調にはなりません)

「なあヴィニ、日本代表どうだった?」
「え、よかったで。良いチームだった」
「監督もそう言っとった?ハーフタイムとか試合後とか」
「うん言っとった。普通に良いチームだって」
「へえ、マジか。そしたらその上でなんだけどな、日本がここをもう少しこうすれば良くなるみたいなポイントって何かない?」
「えー、分からんよそんなん」
「いや実は日本の選手に友達おるんだけど、もっとチームとして良くなりたいからヴィニが対戦して感じたこと率直に聞きたいって言っとるんよ」
「えー、そんなん言われてもなあ」
「いや、何でもええから何かないん?」
「えー、うーん。じゃあ、んー…」
「いや何でもええからマジで」
「じゃあ、」
「おお、何?」
「もっと攻撃せんと(Tem que atacar mais.)」
「あ、なるほど…攻撃が足りとらんと」
「うん」
「そっか、なるほど…了解、伝えとくわ!ありがとう!」
「うん」

以上です。僕が一番しっくりくる日本語で訳すとお互い鳥取弁になってしまうのでそこだけ少しアレンジしましたが、内容の再現度はほぼ100%です。

一応解説:ヴィニシウスのコメントと人柄

というわけで、彼から得たコメントをまとめると以下のようになります。

「日本は普通に良いチームだったけど、もっと攻撃せな勝てんよ」

何かもう身も蓋もないというか、「いやまあ、そりゃそうなんでしょうけど」というか、「攻めたくてもそれをさせてくれないのが君達ブラジル代表なんじゃないでしょうか」とでも言いたくなるような、そんなド直球のド正論でした。

一応補足しておくと、このヴィニシウスという青年は根が非常に真面目な性格の持ち主で、基本的に「きちんと責任を持てないことは言えないし、あまり言いたくない」みたいなところがあります。

例えばこの前日のことですが、日本代表戦後のブラジル代表メンバーの打ち上げの場で、僕が半分軽口で「ヴィニ、ダンス教えてよ」と話しかけた瞬間がありました。その時も「ええよ!踊ろうか!」みたいになるかと思いきや、まさかの真顔で「いや無理だし!確かに俺は踊れるけど人に教えるとか別の話だし、そんなん普通にできんし!」と返されました。(ちなみに同じ会場にいたダニ・アウヴェスさんに同じこと言ったら「しゃあ!こっち来い!」って感じでめっちゃ熱く激しく教えてくれました・笑)

真面目というより誠実と言ってもいいかもしれませんね。ブラジル人らしい、もっと言えばリオっ子らしい陽気さを持った上で根っこが真面目で誠実というタイプなので、選手として更に成長を続けて世界の頂点まで駆け上がるだろうと確信しています。

それともう1つ、ヴィニシウスは若さに加えてドリブラーというスタイルもあってか、サッカーの捉え方自体が非常に感覚的で、彼自身が言語化や理論化みたいなものを特に必要としていないようなところがあります。もちろん彼の感覚・感性の中には彼独自の理解や理論は当然持っているのだと思いますが、それを誰かに言語化して伝えるということは必要でも得意でもない、という印象です。いわゆる天才肌というやつですね。

というような彼の性格・スタイルもあって、今回は非常にシンプルな言葉しか引き出すことはできませんでした。まあでも、ヴィニシウスらしさは存分に感じることができて、面白いやり取りだったかなと思います。

ちなみに後日、オフ中の原口選手と会った時にこの話を報告したところ、やはり苦笑していましたが、その一方で「まあ彼はそういう感じでいいんだよね」と大人な理解を示していました。改めて、どんなところからも成長や向上のきっかけを探そうとする彼の姿勢には頭が下がります。


以上、6月6日のブラジル代表戦について、当日のネイマールに続いて翌日のヴィニシウスにも対戦の感想を聞いてみた話をお届けしました。お楽しみいただけたなら嬉しいです。

考えてみるとこういう話って、どちらかというと守備的な選手に尋ねた方が論理的な回答がもらえそうな気がしますね。今度またこういう機会があったら、ボランチとかセンターバックの選手に聞いてみた方が良いかもしれません。

いずれにしても、会話に付き合ってくれた上、答えにくい質問に答えを捻り出してくれたヴィニ、ありがとう!

スペインでも間もなく新シーズンが開幕します。
彼のますますの活躍を応援したいと思います。
それではまた。


【追記】(2023.5.9.)
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