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2015年夏、ロンドン H&Mの強さと次の手を探る旅

インスピレーショントリップ4年目(2015年)に選んだのは北欧でした。「ファッションの民主化」を旗印に世界で拡大の勢いを緩めないH&Mを生んだ国を訪れ、そこで何かを感じてみたいと思ったのが発端です。

グローバルで通用するビジネスとは?ファッションに限らず、これから、多くの分野でデザインの民主化が進むのか?また、ちょうど同年採択されるSDG'sに前後して、ビジネス界でキーワードに上がりつつあった「サステナビリティ(持続可能性)」とは?・・・そんな問題意識を持って、サステイナブル先進国と言われる北欧の国々を回って、何か新しいインスピレーションが得られればと思いました。

北欧を旅する前に・・・まず、経由地として訪れたのはロンドン。2012年にロンドンに行った時の投稿でも触れたように、ロンドンは世界のファッション流通の最激戦区。世界の強豪のパワーバランスを確認する定点観測地として僕が最も重視している都市ですので素通りするわけには行きません。

ロンドンでの主な定点観測地は、コベントガーデン、オックスフォードストリートとリージェントストリート界隈、ウエストフィールド・ショッピングセンター・ストラトフォルドです。

海外都市のファッションストアリサーチの視点

私の海外リサーチの手法は・・・例えば英国であればローカルチェーンで規模も大きく知名度があるベーシックのNEXTを見て当地の「基準(スタンダード)」を確認し、続いてストリートトレンドに強いTOPSHOPを見て、ティーンズに人気の低価格チェーンNEW LOOKをチェックします。その後 それらローカルチェーンのポジションを揺るがすH&M そして激安ディスカウンターのPRIMARK(プライマーク)の順番で見ます。これにより市場の輪郭や勢力図が見えやすくなると思っています。
都心路面店では順番通り見ることができなくてもショッピングセンターは観たい順番に効率よく回れるのでありがたいです。

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コベントガーデンにオフプライスストアも進出

コベントガーデンは以前は欧州ブランドが感度の高い客層向けにブランドイメージを伝えるために路面店を構えたり、セレクトショップが多いエリアでしたが…今や観光客を目当てに、欧米ファストファッションブランドが複数店舗を構えることもあたりまえになりました。

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更に2年前にはアメリカのオフプライスストア最大手であるTJMaxxの英国子会社 TKMaxxの大型店が開業しました。
オフプライスストアとはお馴染みのアパレルブランドや有名専門店の過剰在庫を買い取りディスカウントで販売するチェーン店。(過去の投稿で詳しく述べています。)

著名スポーツブランドはもちろん当地に路面店を構える高感度ブランドのディスカウント商品も並び…たくさんのお客さんが掘り出し物を物色していました。アメリカのTJMaxxよりも、デザイン性、クオリティの高い欧州ブランドが多く、時間をかけて宝物探しをしたいお店でした。

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PRIMARK(プライマーク)の変化

今回のロンドンで最も興味があったことのひとつはプライマークの変化です。2012年に初めて見た以来、3年ぶりですが、この間、同社を取り巻く環境も変わりました。それは、2013年のバングラデシュ生産工場での大惨事、そして、2015年のアメリカへの進出です。

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店頭商品を見ると、アメリカ進出にあたり…原産国表示を始めたようです。これにより…同社のその激安商品がどこで作られているのか(原産国)が垣間見れるようになりました。ちなみにEU内で販売するには原産国表示は義務づけられていませんので、以前は表示されていませんでした。

同社の親会社であるコングロマリットABF社のアニュアルレポートによれば...2年前に起こったバングラデシュの工場倒壊の大惨事、この工場にPRIMARKが大量発注していたことを反省し 被害者家族の補償をするとともに監査体制を見直したとのこと。その反省もあったのか? バングラデシュ生産が圧倒的に多いと想像していましたが、同国産地はTシャツと一部ニットとジーンズに限られ… 圧倒的に数多く見受けられたのがルーマニア製とベトナム製の商品でした。

先のABF社レポートには「安さ」一辺倒ではなく...トレンドを6週間で提案する「速さ」をアピールしていた背景には・・・欧州内のアパレル下請け産地として知られるルーマニアがあったのだなと合点がいきました。

店頭価格は、競合のH&Mがプライスポイントを安くしたこともあり以前ほど激安感は感じられず... 一方以前よりクオリティが改善された様に感じました。客層は3年前の視察時と変わらず、幅広い客層を集客していました。画像はストラスフォードSCのPRIMARKです。

引き続きH&Mの強さを実感

今回のロンドンであらためて実感したのはH&Mの強さです。ここ数年間 イギリスを集中出店国にし、競合対策(プライマークやフォーエバー21)で価格を下げ…ヤングマーケットでは敵なし状態のように思いました。店内は女性を中心に年齢層も広く「ファッションの民主化」に磨きをかけていることがお買いものするお客さんからひしひし感じました。

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H&Mグループのワンランク上の上質ブランドCOSと&other stories

H&M社がH&M業態の市場最低価格マーケットでのシェアを高めながら、開拓し始めていたのが、H&Mよりも、上質な素材を使ったワンランク上のブランド群です。

この視点は、「ファストファッションよりも、もう少し良い素材の服を、こなれた価格で買いたいという需要」に対応する、ポスト・ファストファッション時代の戦略の選択肢のひとつかと思います。

これに対し、H&Mが最初に開発したのが、日本にも進出済みのモード系ブランドのCOS(コス)、次に開発したのが、大人の女性向けのフェミニンカジュアル &otherstories(アンド・アザーストリーズ;日本未進出)です。後者の店舗を初めて見ることができました。
ちなみに、H&Mはこの2年後にARKET(アーケット)という3番目の上質ベーシックアパレル業態を立ち上げますが、その様子はまた、追ってご紹介します。

&other stories はアパレルだけではなく、H&Mより、質感を求める都心で生活をする大人の女性のライフスタイルを意識し、ホームウエア、ランジェリー、コスメ、ホームガーデニングなどを扱っています。COS同様、価格はH&Mの3倍くらい、日本の感覚ですと、セレクトショップのセカンドブランドくらいの価格(7900円)が最多価格帯です。

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ZARAグループにもMassimo Dutti(マッシモ・デュッティ)という、ZARAよりもコンサバながら、より大人の男女を狙ったブランドがあります。日本には未進出ですが、ヨーロッパに行くと僕も必ず購入する愛用ブランドのひとつで、日本に上陸すれば人気になるだろうと思っています。

イングリッシュブレックファースト!

ロンドンに来ると、しっかり朝食をとる日をつくるようにしています。ここ(Simpson's in the Strand - Grand Divan)のベーコン、ソーセージ&焼きトマト最高です♪

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今回はロンドンはさっと駆け抜けて、ストックホルムへと向かいます。

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