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歴代自由研究をふり返ってみた


いよいよ夏休みも残すところ、あと20日ほどとなりました。

どうも、どうもどうも。

街中で元気よく走り回っている小学生を見ると、宿題は終わったのかなあといらぬ心配をしてしまう、おせっかいな者でございます。声をかけると、あらぬ疑いを持たれる可能性があるので、黙って見守っている者でございます。

先日、図書館にいきましたら、自由研究をしていると思われる集団を見かけました。

テーブルの上に大きな紙をひろげ、ものさしで線を引き、油性ペンで文字をなぞり、消しゴムのカスを撒き散らし……。

ああ、自分も小学生の頃図書館で調べものをしたなあ、そんな事を思いつつさりげなくのぞきこんでみましたところ、やけにこう、きれいな研究がですね。

よく見ると、……スマホ見ながら、書き写しているだけ!?

うおお、文明の利器ェ……。

いや、まあ、全部自分で調べているお子さんもたくさんいるとは思うんですけど、たまたま私が遭遇したのは、要領のよろしいお子さまでした。なんというか、検索って便利すぎてズルいというか、うらやましいというか。

図書館という涼しい場所で、友達と一緒に夏休みの宿題をする……大変よろしい事だと思いましたけど、そこに自分の手で調べものをする、ああでもないこうでもないと持論を展開し結論を出すという行動がないことにわりとこう、落胆している私がおりまして。

自由に研究して、おもうままに発表できる絶好の機会だというのに、なんともったいない!好きなことを研究して、みんなに発表できるなんてそうそうないんだぞ……。私は、夏休みの宿題で一番好きだったくらいなんだけどなあ……。

いつも工作を仕上げてポスターを描いたあと、嬉々として取り組んでいたんですよね。大好きな工作でテンションをあげ、そのノリでぶっ飛んだポスターを描き、溜め込んだパワーを研究に注ぎ込み完成させ、大満足に浸りながらドリルをやる、そしてたまにプールに行く…それが私の夏休みだったんです。

わりといまでも、自由研究の記憶が残っているんですよね。たぶん、楽しんで取り組んでいたからだとは思うんですけども。

せっかくなので、自分の自由研究の歴史を振り返ってみようかなと思った次第でございます。

なお、このエッセイは指南書でもなんでもなく、ただの回顧録ですので、あまり突っ込まないでください……。

小学一年生「犬の名前調べ」

犬が好きだったので、図書館に行って犬の種類を調べました。
画用紙に犬の名前をひたすら書いていっただけです。

先生の反応
たくさん調べてえらいねと言われました。
犬の絵を描くと良かったねと言われました。

個人的感想:幼稚園の先生が怖い人ばかりだったので、褒めてもらえてうれしかったです。同級生たちは乳酸菌飲料の入れ物でロボットを作っていたりアイスの棒で家を作ったりしてたのが羨ましかったな。


小学二年生「押し花」

庭先に咲いていた花を片っ端から押し花にしました。
画用紙いっぱいにセロハンテープで貼り付けていっただけです。

先生の反応
一種類ずつ別の紙に貼った方がいいと言われました。
花の名前だけではなく、花ことばを書くと良かったと言われました。

個人的感想:朝顔とパンジーがほとんどだったけど、ケイトウとか鬼灯とか仏壇用の花も押し花にして、カビ?が生えて嫌な感じになってしまいました。クラスメイトが華やかな花の押し花をしていて完全に下位互換、すごく惨めでネタ被りしないよう気にするようになりました。


小学三年生「塩の結晶」

小さめの水槽いっぱいに濃い食塩水を作り、割りばしやタコ糸を沈ませて塩の結晶を作りました。
毎日観察日記を書いて、出来た結晶も一緒に提出しました。

先生の反応
もう少し丁寧に日誌を書くと良いと言われました。
ただの割りばしや糸ではなく、形を作ると良かったと言われました。

個人的感想:ロッカーの上に結晶を置いてあったのだけど、クラスメイトがしょっちゅう塩のかけらを触っていて、いつの間にか紐だけになっていて悲しかったです。ただ、大人気で鼻は高かったです。


小学四年生「おかゆと雑炊」

おかゆと雑炊の違いについて研究しました。
調理法を変えて味の違いをレポートしました。

先生の反応
写真がわかりにくいと言われました。
マズいおかゆ、雑炊がないとあまり比較にならないと言われました(全部美味しかった)。

個人的感想:夏休み中おかゆと雑炊ばかり食べていたので劇的に太ってしまいました。一番おいしいのはネギと卵の雑炊で、未だによく作るレシピになっています。


小学五年生「漫画単行本制作」

コピー機と製本テープ、ボンド、ホチキスなどを使って自分の漫画を単行本にしました。
中綴じ16ページのギャグマンガ、無線綴じ36ページの四コマ漫画、平綴じ8ページのファンタジー漫画を描きました。

先生の反応
漫画が面白くないと笑われました。
フルカラーのカバーもつけた方がいいと言われました。

個人的感想:当時フルカラーコピーは一枚500円くらいしたので、カバーはつけることができなかったのが残念でなりませんでした。我ながらよく60ページも漫画を描いたもんだと、未だに思うわけですよ……。


小学六年生「国民的四コマ漫画『栄螺さん』の研究」

漫画が全巻家にあったので、一巻からすべて読み返し登場人物の紹介と謎(知らない単語調べ等)を追求しました。
模造紙に家系図を書いたり家の間取りを考えたりしました。

先生の反応
漫画を研究するなんてダメだと怒られました。
再提出するよう言われたので、難しい漢字を100調べて画用紙に書いて提出する羽目になりました。

個人的感想:とにかく怒られた覚えしかありません。後年、謎本ブームが来たときにものすごく不愉快な気持ちになりました。


中学では、自由研究は自由課題になったんですよ。

あれほど自由研究が好きだった私は、六年生でこてんぱんにされた記憶がどうしても払拭できず、一切手出しをしなくなりました。

あの時誉められていたら違った人生になっていたかも?今よりひどいことになっていた可能性が高そうですけれども……。

私は自由研究から身を引きましたが、仲の良かった友達は、パソコン?電子回路?をはんだづけして製作し、表彰されたんですよね。彼は自分の得意分野を知ることができ、後にエレクトリックな看板屋になりました。

自由研究でいつも手芸をやっていた仲良しは服飾デザイナーになったし、アマチュア無線で知らない大人とコミュニケーションを取っていた知人はラジオパーソナリティーになったし、自分言語を作った男子はプログラマーになったんですよ。


で、私はといいますと。


散歩に行くたびに、すれ違う犬さんを見てはあれはボルゾイだのこの子はアイリッシュセターだのあっちにはミニチュアピンシャーがいるだの呟くようになり。

道端の花を摘んではラミネートして喜ぶようになり。

料理には岩塩を使いがちになり。

鍋物の後は必ずおじやを食べるようになり。

子どもの誕生日プレゼントに手作り絵本を渡すようになり。

やけに叱られ癖がつくようになり。


……おかしいな、どうしてこうなった。


まあ、私のやらかしがちのルーツはさておき。

わりと自由研究って人生を変えるというか、きっかけになるというか、先行きを暗示するというか、かなり重要なポジションを任されているような気がするんですよね。

自分の興味のあることを研究して発表して、絶賛されたらそりゃあ勢いがつきますよ。
自分の興味のあることを研究して発表して、全部否定されたらそりゃあやる気が無くなりますよ。

自分の好きなことを研究してダメ出しされるくらいなら、誰かの研究をきれいに引用した方がまだ心身的に健康でいられるのかもしれない、そんな事をチラリと思ってみたり……。

なんだ、冒頭の小学生達は、実に理に適っていらっしゃったのね……。

喜んで取り掛かる人も、めちゃめちゃ打ち込む人も、めんどくさいと丸写しする人も、適当にやった人も、夏がくれば思い出す(かもしれない)、自由研究。

育った今だからこそ研究できる事もあるはず。
大人になった今だからこそ結論付ける事もあるはず。
否定する誰かがいない今だからこそ誇れる事もあるはず。

金にモノを言わせて強引に攻めるもよし。
人脈を駆使して丸め込むのもよし。
現実を無視して持論のみで蹴散らすもよし。

子ども時代ではなすすべのなかった問題に、答えが出せるかもしれません。

……この夏、人生を変えようと思った、私がおりましてですね。

ちょいと、自由研究に、手を伸ばしたくなった、私がおりましてですね。

私は、やらかしがちの人生を手放すべく、「栄螺さん」の単行本を久しぶりに開いてみたわけですけれども。

なかなか面白い……。
ずいぶん面白い……。

わりと寝ても覚めても読み続けてしまうじゃないですか……。
ついつい、研究材料に夢中になってしまう私がおりましてですね。


……さぞかし素晴らしい研究ができるとおもいきや。

読んでいく端から、読んだ内容を忘れていくのですよ。
読み進めるたびに、書こうとした研究内容を忘れていくのですよ。


自由研究をするための、柔軟な思考回路が、記憶装置が、錆び付いている!

なんてこった……。


夏休みの自由研究は、子どものうちにしっかりとやっておくべきだなぁ……。


と、しみじみ感じた、と言う、お話でございます。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。



こちら昨年の夏に小説家になろうで公開したエッセイです。一部作品名をごまかしているのは念のためでした。noteは作品名は書いてもいいんですよね…?

うちにあったのは文庫本じゃなくて、ちょっと分厚い紙の単行本でした。選り抜きサザエさんやエプロンおばさん、意地悪ばあさんなんかもあったんですよね。

長谷川町子さんの漫画で一番好きなのは「サザエさんうちあけ話」です。
子供の時は漠然と食べものがおいしそうだなとか犬かわいいとか絵で文字を書くの楽しそうとか思っていたんですが、老いてからじっくり見直してみるとですね、作者のかなりシニカルな感じが非常にこう、親近感がわくのだなあ…。働く女性の第一人者だと個人的には思っていたりします。

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