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私、実は超能力者なんですよ。

やあやあ、こんばんは。

このところクソ暑い日が続いておりますが、お加減はいかがでしょうか。
こんなに暑いとですね、フル装備での外出がきついのなんの。
黒い衣服というのは、ホント熱を集めてしまうのですよ。

もうね、白い服に身を包もうかと思ってですね、量販店で白いTシャツ買ったんですけどね、黒い体も黒い顔も相当目立っちゃったんでね、とても着られなくってですね!しょうがないんで、我慢の毎日ですよ、ええ。時折、冷たいジュースを飲み飲み、頑張っているんですよ、偉いでしょ?!

…ああ、わたくし、自己紹介が遅れましたね。

わたくしは、黒い人などと呼ばれているんですけど。ずいぶん、その呼び方は…気に入っていないといいますか…。

実は、わたくしはですね。

超能力者、なんですよ。

現代の世界にも、超能力者というものはしっかり存在しているのですよ、はい。

わたくしは、ものを希望に沿って動かしたり、誰かの思考を読んだり、未来を知ったり、神出鬼没で現れることを得意としておりまして…それは、超能力と言って、通用する事象でございましょう?ですからね、超能力者を自称しているわけなんです。ま、仕事は、別にあるんですけどね。

…なにやら訝し気な表情をなさるのですね。

フウム、人というのは、自らの知らぬ何かを受け入れる際にまず疑ってかかるもの、でしたね。なるほど。…それでは、お一つ、わたくしの超能力をお見せしようではありませんか。

私の、言葉に、意識を乗せますよ…。はい、いいですよ。

あなた・・・に、思考操作をしました。

あなたの中のとある思考を、私の判断で、削除させていただきました。あなたに必要のない、とある思考は、たった今、完全に消されたのです。

…何を消したのか、わからないと思っているかもしれませんね。消してしまったのですから、わからないのです。大丈夫、あなたには必要のない思考だったのです、何も心配することはありません。

例えば人は、不要な感情や記憶、意味のない執着を心に秘めていることがしばしばあります。それらは、時折不躾に顔を出し、あなたの人間性を疑うような行動に駆り立てることもあり…。

わたくしは、そのような事態が起こらぬよう、不穏因子を削除したというわけです。

超能力者である私は…不穏因子を削除する仕事をしているのですよ。

もめ事は、起きないのが一番ですからね。誰かの過ちを指摘して説教を垂れてウザがられるよりも…極力過ちを起きない方向に持って行きたいと願うのは、おかしなことではないでしょう?

いまいち、ご納得いただけない感じですか?

いやしかし…あなたの中の不穏因子は…かなりひどい物でした。今あなたが落ち着いてこの文字を目で追うことができているのは、不穏因子を取り除いたからであって。

…おかしいですね、あなたの中に、不信感がどんどん増しています。

…まあ、そういうもんですかね。

確かに意識操作をしたのですが、操作された側は、それに気が付かないもんです。

…だからこそ、この世の中は、穏やかに時を刻んでいるのですがね。

穏やかでない世界はありますが…穏やかでない世界で済んでいるのかもしれませんよ?

0か、1か。

1か、100か。

平和な世界を作るのは、ずいぶん難しいのです。

争っている人が一人でもいたら平和ではないという人がいます。
争っている人が一人でも減ったら平和が近くなるという人がいます。

平和な世界が、いつまでたっても、やってこないことに…腹を立てて、手あたり次第にぶち壊す人もおりますのでね。
平和な世界が、いつまでたっても、やってこないことに…腹を立てて、崩壊させるしかないと考える人もおりますのでね。

平和な世界が、いつまでたっても、やってこないことに…腹を立てて、何もしない人もおりますのでね。
平和な世界が、いつまでたっても、やってこないことに…諦めて、何もしない人もおりますのでね。

平和な世界にいることに安心して、何もしない人もおりますのでね。
平和な世界にいることに安心して、つまらないという理由で世界を滅亡させたいと願う人もおりますのでね。

あなたが持っていた不穏因子は、消滅してしまいましたから。

あなたは貴方の不穏因子がどんなものだったのか知ることはできません。

あなたから消したあなたの意識は、この世界では不要なものだった、ただそれだけの事です、ええ。

…いまいち、私の超能力者っぷりがわかりにくいですかね?

テレポートして、目の前に出現します?

はい、今出現してきました。

けれど、わたくしの顔を覚えられてはかなわないのでね、速攻で記憶を消しましたけど…なんてのは、きっと納得、していただけないんですよね?

あなたの思考操作は、実はもう3回目だったりするんですよ…なんて言っても、信じないでしょうね。

何が真実かなんて、消される側には、まったく重要じゃないんですよ、ええ。

はは、消す側の、ちょっとした、お遊びみたいなもんです、この物語はね。

つまらない物語だったでしょう?

それでいいんです。

この物語の中から‥不穏因子を抜いてしまったのでね。見どころのない、ただの物語になっているのですよ。あなたは実は…この物語の本当の目的を読破したんですけどね。その意思が、記憶が、思考が、消去されてしまったというわけです。

この物語は、読後に感想を持った時点で、さっくり内容が薄っぺらくなって、つまらないものに変わる物語なんですよと、事実を言ったところで。

なにも、わからないでしょう?

だから、この物語は、つまらない物語、なんですよ。

…あなたが超能力者だったら、この物語の真の姿に気が付けたのかもしれないですけど、ね。


超能力者と言えばこの人なんだなあ…もう最終回の感じが好きすぎて好きすぎて58時間ぐらい語っていられる(言い過ぎ

なお、リアルな方で超能力者というと、こっちのイメージがですね。
若い人は知らんだろうな……。


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