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【小説】【本】化物語を書いている作家は化物なんだよ(後編)

記事の表紙に乗っているのは、西尾維新の作品に登場したヒロイン達である。ちなみに全てではないが、大方の登場人物が碌な目に遭っていない。

『この記事は、”化物語を書いている作家は化物なんだよ(前編)”の続きである。もし前編を読んでない読者がいたら、ぜひとも読んでほしい。私がピースするぐらい喜ぶ』

閑話休題。

さて前編では、西尾維新が物書きの化物であることを書かせていただいた。

通常の執筆ペースが1日20000文字だったり、
12カ月連続でシリーズ本を刊行(1か月に1冊出版する)したり、
原稿用紙1000枚分の最長巨編を15日で書いたり、
必殺技名(ルビも含めて)600個を3日間考えたり。

まぁ、速筆に関するエピソードは尽きない作者ではあるが。

そんな作者のスケジュール、気にならないだろうか?


西尾維新のスケジュール

今から紹介するスケジュールは2017年に行われた『西尾維新大辞展』で公開された。なので2020年現在は、スケジュールが変わっている可能性があることを示唆しておく。

この記事では、

①一か月の平均スケジュール
②通常執筆のスケジュール

主にこの二つを書いていこうと思う。
私はこのスケジュールを『西尾維新大辞展』で観た。

最初にこのスケジュールを見た時の感想を正直に綴っておこう。


『こいつ、思ったより人生を楽しんでやがる』


①一か月の平均スケジュール


1~10日:海外旅行

待て、待て、待て。ちょっと待てや。

あんな速筆だからそりゃ、暇な時間もあるよ。

でも10日間は長すぎへん?

と思った読者もいるのではないだろうか。
それはごもっともで、私もそう思った。
西尾維新の趣味は旅行だ。
そのことはスケジュールが公表される以前から知られている。
しかし、ここまで旅行好きとは思うまい。

本人曰く、20か国以上に40回以上訪れたそうである。
(2017年時点であり、現在はもっと訪れる回数が多くなっている可能性がある)

海外のディズニーに行くのが大好きで、『西尾維新大辞展』では、
海外のディズニーのアトラクショントップ10をガチで紹介していた。
(ディズニーアトラクションの解説を読んだ時、西尾維新女性説が生まれた瞬間でもあるが、男性であることは公表されているので即却下した)

ちなみに旅行中も執筆はするが、旅に専念するため10000文字程度に留めているらしい。それでも速筆であることは変わりないが。

これは個人的な見解であるが、あれだけ海外旅行に行くとなると、
西尾維新は相当マイルを貯めているというような気がする。

11日~18日:長編執筆

海外旅行から帰国した後、長編小説を執筆開始する。
小説を書く際は、取材やプロットなどの準備段階を省いてしまうらしい。

極端な言い方をすれば、即興で書き始めてしまう。

取材をしたり、プロットを書いたりすると、どうやらそこで満足してしまうらしく、「終わり決めてないけど勢いで書くかー」という豪快なスタイルで執筆している。

それで数多くの作品が生まれて、多くの読者の手に渡るのだから恐ろしい。

19~21日:国内旅行

こいつどこまで旅行するなんだよー。

おめぇ、人生楽しみすぎだろ?

さてはてめぇ、行動力の化身だな?

そんな声が聞こえてもおかしくない。
というか、上記の声は私が実際に思ったことだ。
彼は、四国八十八箇所巡礼も行ったぐらい旅行が好き。
日本は47都道府県中、40までは巡ったらしい(2017年時点)。

1か月のうちのおよそ2週間は旅に浪費している。
私の視点から見た小説家は、書斎に閉じこもって執筆するスタイルが多いと思っていたので、この西尾維新の旅行狂いには大いに驚かされた。

旅が好きです。強迫観念的に好きです。
暇さえあればどこかに旅立つし、暇がなくても旅立ちます。
(中略)
15年中総計1年以上、旅行していた計算になります。
元々は気分転換として、執筆と執筆のサンドイッチで旅していたのですが、
(中略)
『掟上今日子の裏表紙』と『忍物語』は、ほぼ旅行中に書きました。
なにして楽しいときに書いているからめっちゃ調子がいい。
                   (西尾維新大辞展より一部抜粋)

世界中にコロナが蔓延している現在、旅が中々出来ない状況。
その影響で、今、西尾維新はストレスを溜めているかもしれない。

22日~31日:その他の仕事

ここからは長編小説以外の仕事に取り掛かっている。
漫画原作ネーム、小説の校正、短編小説執筆、台本執筆、アフレコ収録立ち合い、雑誌のインタビューなどの仕事をこなしている。

この仕事のほとんどを1週間でやってのけるのだから、恐ろしい。


以上、これが西尾維新の一か月の平均スケジュールだ。


2週間も旅行に費やすなんてこの野郎』と当時は思っていた。
しかし今では、『旅行は彼なりのインプット作業』と考えるようになった。
また旅の途中で読書をするのも好きらしく、速筆の原動力となるアイディアが瞬時に生まれるのは、旅行のおかげもあるのかもしれない。

②通常執筆のスケジュール

彼が長編小説を書く一日の流れを箇条書きでまとめてみた。
個人的に思ったことやスケジュールでわかる事実は後々書き記していく。
それでは、読者の皆様。さらりと西尾維新の1日を読んでいってほしい。


6:00~6:30 起床→入浴①→朝食

6:30~7:00 散歩①

7:00~9:00 執筆(5000文字)①

9:00~11:30 仮眠①

11:30~13:30 執筆(5000文字)②

13:30~14:00 昼食

14:00~14:30 散歩②

14:30~16:30 仮眠②

16:30~17:30 入浴②

17:30~19:00 執筆(5000文字)③

19:00~20:00 打ち合わせ

20:00~21:00 夕食

21:00~23:30 執筆(5000文字)④

23:30~0:00 入浴③

0:00 就寝


執筆時間は1日8時間。

2時間の5000文字の4セット。

2時間書いたら、一度手を止めるのが彼のルーティン。
即興で小説を書くという破天荒なスタイルに対して、時間を決めて書くあたり、彼の几帳面さが窺える。

仮眠は午前と午後合わせて2回。
睡眠時間に換算すると4時間半だ。
速筆である分、やはり疲労は溜まりやすいのかもしれない。
自己管理も徹底している。

1日で入浴する回数、3回。
……この情報は一体誰得なのだろうか?
ちなみに入浴の回数は、ドラえもんのしずかちゃんと同じ回数だ。
(西尾維新はやはり女性なのか……?)

そういや『物語シリーズ』でお風呂のシーンが書かれている回数が多いような気がする。もしかして実体験がベースになっているのか?

以上、西尾維新の1日である!!

まとめ

後日談というか、今回のオチ。

西尾維新という人物を知れば知る程、自分の中で描いていた人物像とは遠く離れていることに気づく。いや正直、彼の書く物語の独特さと速筆のエピソードが色々と混じり合って、

過去の私の中での西尾維新は、

『ずっと書斎に引きこもっている奇抜な小説家』だった。
(本人には申し訳ないが、思ってしまったのだからしょうがない)

このスケジュールを知って今の印象は、

『世界を旅しまくる程のアウトドアで女子力の高い奇抜な小説家』である。

ディズニー大好きだし。風呂何回も入るし。
そりゃそう思われたって、仕方がないだろう!!

まぁ、しかし。

速筆エピソードを述べようとも、スケジュールを公開しようと、
この記事は、西尾維新の『解体新書』とは到底呼べないだろう。

デビューしてから一度も顔出しをしておらず、肉声すらも世に出ていない。謎の多さと速筆から、「西尾維新は4、5人いる」という冗談も言っていた読者もいたぐらいだ。

一体どんな人なんだろう。
しかし、それを知れば彼の魅力が減ってしまいそうな予感がするわけで。
謎があるからこそ魅力があるのだ。

これ以上の追及は野暮だろう。
というわけで彼に関する記述はここまでにしておこう。


私はそんなことを思いながら、
今、彼の100冊目の著作『ヴェールドマン仮説』を読み始めるとしているのであった。

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おまけ:ライブタイピング

こちらは西尾維新の執筆を再現したライブタイピングの動画である。
つまり実際に書いた時の打鍵がプログラムによって記録されており、再現されている。

机の周りに置かれている電子辞書、マグカップ、電卓、メモ帳なども
執筆する際に使用しているらしいので、この動画は彼の仕事風景を再現されたと言える。

自分も実際にこのライブタイピングを間近で見たことがある。
タイピングを見てて面白かったのは、キャラクターの名前に出てくる難儀な漢字に手間取っていたところだ。

漢字を誤変換しては消す、それを何度も繰り返すものだから、

『あぁ、ちくしょう!何でお前はこんな面倒くさい名前なんだよ!!』

という彼の愚痴が聞こえた。
まぁ、その言葉を聞いたのは、私だけかもしれないが。



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