美鳥宝

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美鳥宝

note:202312- 作文はここ 詩とおはなしは遠い水 朗読はこちら(YouTube/遠い水) https://www.youtube.com/@toimizu

マガジン

  • 遠い水

    詩とおはなしはここ、人間はあまりいない

  • 優しくていない

    「優しくていない」のまとめ、全4回、終了済

  • 祖母の復讐

    「祖母の復讐」のまとめ、全3回、終了済

  • 連続しない、単回

    連続しない、1回で終わるもの

  • いない

    『いない』全29回 終了済、ときどき性暴力の描写があります

記事一覧

貝殻 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 貝殻  私 と 呼んでいたものは  とっくの昔に 巻貝に食べられた  海底の松…

美鳥宝
3週間前
4

旅先 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 旅先  太陽を  直接見ると  目が潰れてしまうのだって  でもほら たぷ…

美鳥宝
1か月前
1

天蓋 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 天蓋  まあるくひらいた口の形に  ごぼり、ごぼり、  泡が、昇る、  がぼり…

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1か月前
4

おむかえさま /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) おむかえさま  雨のお薬  くださいますか  おむかえさまのいどころは  白…

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1か月前
3

くじら /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) くじら  長いこと  潮の合間を縫っていた  大きな体  海面に  やがて背…

美鳥宝
1か月前
4

拍手 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 拍手  音がわかったら瞬きをして  一と三四を鳴らすから  二と五と六とで入…

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1か月前
4

羊狩り /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 羊狩り  ゆくてに見える羊の群れに  火をくれよう  火をくれよう  石切り…

美鳥宝
1か月前
3

轡(くつわ) /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 轡(くつわ)  母の  腰の周りを  花の人たちが取り巻いて  緑の手指をくゆ…

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1か月前
1

遠景 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 遠景  線路のいちばん遠くが白い  あまけぶり  どこへゆくの  ほしぼし …

美鳥宝
1か月前
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籠(かご) /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 籠  冷たいものが入ります  唇の隙間  雪の  はじめ  さく さく  さく …

美鳥宝
1か月前
2

水槽 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 水槽  きれいな  きれいなきれいな  きれいな  あんなにきれいないきものが…

美鳥宝
1か月前
3

たしなみ /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) たしなみ  まず  ひづめを濡らしてかかとをつけて  高いところから落ちた時…

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1か月前
3

花参り /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 花参り  東の空が薄墨の色だ  ごごんごごんと雲は流れ  もうじき青くなるだ…

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1か月前
5

まじない /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) まじない  雨と雨との合間を縫って  歩幅を小さくして走る  もう六十歩先に…

美鳥宝
1か月前
7

蝉 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 蝉  蝉の羽音が空気を満たし  酸素をこまかくこまかく裂いて  耳から頭の…

美鳥宝
1か月前
3

泥沼 /詩

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ) (内容はどちらも同じです) 泥沼  凶暴性とか暴力性とかぎらぎら目を見開いたまま笑う  凄みのようなあな…

美鳥宝
1か月前
4

貝殻 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


貝殻

 私 と 呼んでいたものは
 とっくの昔に 巻貝に食べられた
 海底の松明(たいまつ)が揺れている
 振動は空気の梯子(はしご)を伝い
 ほろほろと輪郭をこぼしながらゆく
 あちらの耳へとたどり着くまでに
 崩れ残った音の骨が
 一番軽くてきれいな重り

 身体をたたんで転がる人の
 硬い背中を

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旅先 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


旅先


 太陽を
 直接見ると
 目が潰れてしまうのだって
 でもほら たぷたぷ たぷたぷ たぷたぷ
 海に光の道ができるよ
 橙が灰色に滲む
 おかえりよ と
 白くなる
 燃えるのとよく似ているね
 終わりに花が咲くところ

 ここはとても暖かいね
 いろいろなものが打ち上がる
 陸の樹

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天蓋 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


天蓋

 まあるくひらいた口の形に
 ごぼり、ごぼり、
 泡が、昇る、
 がぼり、肺が
 押し潰される咳のはずみには
 ぎしりと気道が擦り切れる
 水面を通して空から射すのは
 うすべにだいだいあおみどり、
 きいろむらさきつゆくさいろ、
 入射角、
 反射角、
 左の耳から流れ込む音と
 右の耳から流れ込む

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おむかえさま /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


おむかえさま


 雨のお薬
 くださいますか
 おむかえさまのいどころは

 白い
 象の群れが遠くから
 土埃 長い列
 はためく耳と耳のいきれ
 憶えのある三角を見た

 おむかえさまは雪のもの
 
 氷の粒が刺すようだ
 口をあいては凍ってしまう
 えりまきの中で歌おうか
 舌を細かく動かして
 

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くじら /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


くじら


 長いこと
 潮の合間を縫っていた
 大きな体
 海面に
 やがて背を出し
 ひとときの夢


 それは息継ぎ

 つかの間、潮を噴き上げて
 (それはきらきら焼かれるような)
 (こまかく散った宝石になる)

 尾ひれで叩いてからだを捻る
 ふるえる海原ひかりを吸って
 かれらの鼓動を抱き

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拍手 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


拍手

 音がわかったら瞬きをして
 一と三四を鳴らすから
 二と五と六とで入っておいで
 わたしたちは出入りする
 ちかく暮らした動物を食べ
 肉のない骨の洞窟で眠る

 第一から第十二へと向かい
 ひたり手のひらを当てて待つ
 位置について
 少し笑う
 すべての鍵盤を撫でる仕方で
 触りながら向こうま

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羊狩り /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


羊狩り

 ゆくてに見える羊の群れに
 火をくれよう
 火をくれよう
 石切りのふもとあかりを灯し
 峡谷へ転げ落ちぬよう
 火を焚こう すみずみ朱く渡り
 子供らの顔を照らそう

 羊たち
 あなたたちのうち一頭が
 春に残したみどりごを
 まだここに 預かっている
 戻って来るならば合図を
 

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轡(くつわ) /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


轡(くつわ)

 母の
 腰の周りを
 花の人たちが取り巻いて
 緑の手指をくゆらせながら
 回っているのに気がつきました

 死んだ人の頬の皮膚が
 このように
 薔薇色であるはずもないのですが
 それは皆知っており
 知りながら何も言わないのでした

 あの手が
 眠る額を撫でて
 同じ手が
 固めた

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遠景 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


遠景

 線路のいちばん遠くが白い
 あまけぶり
 どこへゆくの

 ほしぼし
 はなばな
 やまやま
 つきづき

 くさぐさ
 つちづち
 うおうお
 いさり

 どこかへ 
 行ってしまう
 
 まちなみ
 ひとびと
 うたうた
 ゆかり

 とりたち
 みちみち
 いろいろ
 ひかり
 
 遠くの

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籠(かご) /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)




 冷たいものが入ります
 唇の隙間
 雪の
 はじめ
 さく さく
 さく さく
 踏むような
 音がします
 横臥した
 耳の中
 振動は
 胸の底
 私は
 籠です
 ふくれます
 しぼみます
 やわらかく練った
 籠です

 弾力のある臓物は
 意思の力では動かせません
 意識の有無に関わ

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水槽 /詩

美鳥宝/遠い水

00:00 | 00:00


(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


水槽

 きれいな
 きれいなきれいな
 きれいな
 あんなにきれいないきものが
 陸に投げると生臭くなるの
 熱いでしょうね
 私も暑いですけれど
 あなたはほんとに熱いでしょうね

 膨らんだ腹を押しつけました
 いちどきに百も二百も卵を
 産んでしまうというのだから
 ならば
 そのえらぶたを私にくだ

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たしなみ /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


たしなみ

 まず
 ひづめを濡らしてかかとをつけて
 高いところから落ちた時
 それなりに音がするくらい
 羽毛はなめらかに溶かして
 僧帽筋の隙間に隠す
 爪が硬ければやすりをかけて
 削り過ぎてしまわぬように
 まばたきのできる目蓋をはめて
 眼球に涙の膜を張る
 まつげの鱗粉をはたいて
 多少残っ

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花参り /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


花参り

 東の空が薄墨の色だ
 ごごんごごんと雲は流れ
 もうじき青くなるだろう
 水底みたいになるだろう

 真白い骨がうずまっている
 ガラスの棒をからから回す
 薄ら甘い飲み物を
 かぶとむしにあげるみたいに
 泣き出したあすの夕方のために

 あらぬ
 ほうを
 見ているね

 風をはらんだブラウ

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まじない /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)



まじない

 雨と雨との合間を縫って
 歩幅を小さくして走る
 もう六十歩先にある
 きれいな裂け目が深度を増して
 上がってゆく水位を示す

 潰れた岩場の奥底で
 ごぼごぼと水が沸いている
 破片が喉の上蓋を突いて
 口からだらだら流れ出る際に
 なりそこないの文字たちが
 しらしらと鳴って踊り出す

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蝉 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)



 蝉の羽音が空気を満たし
 酸素をこまかくこまかく裂いて
 耳から頭の継ぎ目へ回る
 私を人のかたちに保つ
 結び目の糸がほつれ出す
 ばらばらが満ちた温泉みたいな
 それはきっと地獄にもあった
 わたしたちがプールされていた
 ふるさとのことを思う

 歩き回って片割れを探す
 川

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泥沼 /詩

美鳥宝/遠い水

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(文字でも音声でも、見やすい/聞きやすいほうでどうぞ)
(内容はどちらも同じです)


泥沼

 凶暴性とか暴力性とかぎらぎら目を見開いたまま笑う
 凄みのようなあなたに備わる機能の一部が
 脱水の波が引くにつれ徐々に水面に上がり
 後ろの足へ手を伸ばす

 いろんなものを少しずつ
 寄せ集めては継いで出来た
 泥人形は肉を喰うって
 小学校の図書室で読んだ

 けものでもあり植物でも

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