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R6行政書士試験対策 行政法判例(全122判例)


R6行政書士試験対策に活用できる「行政法判例集」となります。
過去に出題された判例、未出題判例と合わせて122判例掲載してます。
事案から知ることで、理解も深まりやすくなるのと記憶から抜け落ちにくくなります。
イラスト、関連過去問、R5YouTubeで配信した動画も全て盛り込んでますので、ご活用下さい。


最判昭28.2.18 自作農創設特別措置法と民法177条

【事案】
戦前、寄生地主制といって、農地の所有者である地主が小作人に農地を貸して農作物の一部を小作料として徴収する地主制が主流であった。
結果、地主達は小作料を受け取り益々裕福になり、小作人は、貧しい生活を送り農業生産力も低下していくことになった。
そこで、戦後まもなく行われた農地改革で、地主制を廃止して自作農を増やして農業生産力を向上させようと自作農創設特別措置法ができ、不在地主から全ての農地と在村地主からは一定面積以上の農地を国が強制的に安価で買い上げて、小作人に安価で売る方法がとられていった。
Xは戦前、不在地主のAから農地を買い受けて代金支払を完了したが、何故か理由があって土地の所有権移転登記がされておらず、土地はA名義のままその登記を具備しない間に農地改革が行われ、自作農創設特別措置法によって地区農地委員会が登記簿上で不在地主の土地を探していたところA土地を発見し、Aに対し買収計画を進めた。 Xは、県農地委員会に訴願したが、認容されなかったため、その裁決の取り消しを求めて出訴した。

【争点】自作農創設特別措置法による農地買収処分には、民法177条は適用されるか。

民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

【判旨】自作農創設特別措置法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段をもって農地の強制買上を行うものであって、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。従って、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、適用しないものと解すべきである。されば政府が同法に従って、農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から、これを買収すべきものである。

【結論】自作農特別措置法の農地買収処分は、国が権力を使って農地を強制的に買い上げるもので、民法上の売買(私人間の売買)とは本質が違うことから、民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には適用しない。
農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から買収すべき。

最判昭41.12.23 国が自作法に基づく農地買収処分によって農地等を取得した後の判例

【争点】自作農創設特別措置法に基づく未懇地買収処分により、買収した後、国が所有権の登記をしなかった場合、その後、その土地の所有権を登記した第三者に対して、国は所有権を主張することはできるのか。

【結論】自作農創設特別措置法に基づく未懇地買収処分により、買収した後、国が所有権の登記をしなかった場合、その後、その土地の所有権を登記した第三者に対して、国は所有権を主張することはできない。自作農創設特別措置法に基づいて農地を買収した後については、民法177条が適用される。

動画はこちら↓↓

最判昭29.8.24 公務員の任免効果発生時期と官報でする公示

出題 (令和2-9)

【事案】
京都地方検察庁検事Aは、衆議院議員総選挙に候補者として立候補するため、昭和23年12月14日に公務員を辞する旨の申出をしたが、病気のため立候補を断念し辞表の撤回を申出た。しかし、同月24日付けで免官の発令がなされ、29日付けで官報で公示されたが、Aが当該発令を了知したのは31日であった。Aは立候補を撤回する申し出をしたこともあり、その後も勤務を継続し、同月30日における刑事事件の公訴提起も担当した結果、当該事件の弁護人が、検察官の資格を有しない者による公訴提起は違法であり、判決で棄却するべき旨を主張した。

【争点】行政庁の処分の効力の発生時期とは。

【結論】特定の公務員の任免のような行政庁の処分は、特定の規定がない限り、意思表示の一般的法理に従う。その意思表示が相手方に到達した時点、辞令書の交付や公の通知で、相手方が実際にその処分があったことを知るか、または、その意思表示があったことを相手方が知ることができる状態におかれた時点で効果が発生すべきで、官報に登録されて公示されたことで、効果が発生したと解釈するべきでない。

【過去問】
行政庁の処分の効力の発生時期については、特別の規定のない限り、その意思表示が相手方に到達した時ではなく、それが行政庁から相手方に向けて発信された時と解するのが相当である✖️

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