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【読書メモ】エンプロイアビリティの知覚尺度の開発とその妥当性:『働く人のためのエンプロイアビリティ』(山本寛著)第5章

エンプロイアビリティの様々な概念について著者が説明された第2章では、最後にエンプロイアビリティ知覚(perceived employability)が取り上げられていました。第5章では、先行研究を基にして、日本語のエンプロイアビリティ知覚の尺度を開発しています。

基盤はRothwell & Arnold(2007)

エンプロイアビリティ知覚の尺度では、内的エンプロイアビリティ外的エンプロイアビリティの二つの下位次元に分けているRothwell & Arnold(2007)がよく使われます。詳細は、以前、noteでまとめたものがあるので、詳しく知りたい場合はご笑覧ください。

本章での著者の尺度開発でも、このRothwell & Arnold(2007)をベースに用いているとの言及があります。原尺度を和訳し、内容を吟味した上で、他の尺度を参考にして合計15項目の設定したとしています。原著者たちに許諾を取ったという記述がないところから推察しますと、日本語版でのオリジナルのエンプロイアビリティ知覚尺度であると言えそうです。

モデル適合度は要考慮

探索的因子分析によって、二因子構造であることが明らかになったことは、内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティに分かれると想定していた仮説通りの結果と言えそうです。ただ、当初の15設問のうち、2設問は両因子への因子負荷量が0.3以上になったために削除し、13設問で探索的因子分析を行った結果としてのものとなります。

ただ、その後に、最終的な13設問で二次元構造を想定しての確認的因子分析の結果として得られたモデル適合度の値はディスカッションになりそうです。というのも、GFI=0.90、CFI=0.91という二つの値がギリギリなのに加えて、RMSEAは0.09という要検討の数値です。これ、どうなんでしょうね。。

尚、第6章では、和文から英文に尺度翻訳を行った上でイギリスでも検証を行っています。二次元構造は認められているものの、GFI=0.91、CFI=0.92、RMSEA=0.09と、日本の結果よりほんの少し優れた適合度を示している程度です。ギリギリ許容できるレベルの適合度とはいえ、二つの国の異なるサンプルで検証されたという点から、それなりに構成された尺度と評価できるのかもしれません

収束的妥当性と弁別的妥当性

妥当性の検証としては、昇進可能性との弁別的妥当性を検証し、また職務業績および組織間キャリア効力との間での収束的妥当性を検証しています。それぞれの相関係数の値からすると、著者の指摘通り検証されたと言えるのでしょう。


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