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【読書メモ】人と組織の課題解決の7つのステップ:『人材開発・組織開発コンサルティング―人と組織の「課題解決」入門』(中原淳著)第5章

『人材開発・組織開発コンサルティング―人と組織の「課題解決」入門』の第5章は、人材開発・組織開発のコンサルティングにおける7つのステップがテーマです。これでもか!と詳しく噛み砕いて説明されているので、人材開発・組織開発のコンサルティングに多く携われている方にとっては自身のコンサルティングのリフレクションに活用でき、必ずしも経験が豊富でない方にとっては知識・スキルを強化できる内容です。

脱KKD(経験・勘・度胸)

仕事を進める上で、経験・勘・度胸が重要な時があることは理解します。また、「直感的にこれが有効だと思う!」とか「なんとく〇〇が良いような気がする!」といったような直感が重要なブレークスルーをもたらすこともあるでしょう。

ただ、コンサルタントの直感やインスピレーションで済ませてしまうと、クライエントにその内実が伝わらず、コンサルタント依存が進んでしまうのではないでしょうか。人や組織を支援する立ち位置を取る以上、言語化をあきらめてはいけないと思います。

人材開発・組織開発コンサルティングの7ステップ

では、コンサルタントはKKDから脱却してどのようにコンサルティングを進めれば良いのでしょうか。本書では、七つのステップを提示して説明されています。

p.202

大学院の授業でもこのステップは中原先生から伺いましたが、じっくり読むとかみごたえのある内容です。初見の方にもオススメですが、授業を受けた後の復習教材としてもすごく貴重な内容といえます。

判断を保留する勇気

7つのステップのごく一部だけ紹介しますと、ステップ2の「合意をつくる」の中で、クライアントから得た情報を基にして即断することを避け、判断を保留することの重要性に触れられています。

コンサルタントに必要なのは、意識的に「エポケー」を行う姿勢です。つまり、コンサルタントは、意図を持って、自らを「空(から)」にし、判断を保留し、いったん、すべてを受容しなければなりません。

p.249

コンサルタントは、経験を積めば積むほど、判断が速くなるものです。こうした即時の対応というものは望ましいケースも多く、即断が必ずしも悪いわけではありません。しかし、クライアントと合意形成を行う段階においては、人と組織を取り巻く課題の真因を導出して同じ状況を共有することが求められます。そうした重要な瞬間においては、敢えて自分の予見をなくして判断を保留する勇気を持つことが重要なのです。

行きつ戻りつする勇気

もう一つ、コンサルタントが持つべき勇気と言えるものがあります。以下は、ステップ3「データを集める」の中の【分析する】という項からの引用です。

往還力には「2つの往還」がありえます。「定性データと定量データの往還」と「理論(先行研究)と実践(現実の組織)の往還」です。

p.363


データには、ヒアリングなどから得られる定性データと、アンケート調査などから得られる定量データという二つが主にあります。前者には、ある事象が生じたプロセスを明らかにすることができるという特徴があり、後者には事象と事象の関係性の仮説を検証することができるという特徴があります。つまり、どちらとも大事であり、それぞれの特徴を踏まえて行きつ戻りつすることが大事である、ということです。

また、理論から推測できる知見と、実践から得られる知見とを往還することも大事だとしています。つまり、データの内容の違いを踏まえて往還することと、データを取得するプロセスの違いも踏まえて行きつ戻りつすることが重要だということでしょう。多角的な視点多角的なアプローチとが有効だと


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