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【論文レビュー】リモートワーク時代における能力開発支援の重要性:荒木(2023)

本論文では、リモートワークの導入が進んだ現状において、従業員が自己学習するための環境や影響要因について研究しています。結論から言えば、企業の能力開発支援に対する従業員の知覚(Perceptions of Developmental HR Practices:以下PDHRP)がプロティアンキャリア志向を部分媒介して、リモートワーク下の従業員の自己学習にポジティヴに影響を与える、ことを明らかにしています。

荒木淳子. (2023). リモートワークを行う従業員の自己学習に影響を与える要因 企業の能力開発支援とプロティアンキャリア志向. 日本教育工学会論文誌, 46099.

結果図

冒頭で述べた結論は、以下の図を見ていただくと、もっと直感的に理解できると思います。

図3

企業の能力開発支援尺度(PDHRP)

著者は、Jung & Takeuchi(2018)の尺度を翻訳して13設問で用いたようです。残念ながらすべての設問項目は提示されていませんが、①仕事の進め方に関する項目、②能力開発に関する項目、③業績評価に関する項目、という三つの項目で合計13設問を用いたとしています。その上で、13設問全体での信頼性計数を出した上で、一つの尺度として平均化した得点として分析に用いています。

コロナ禍前からの対応の重要性

実践的示唆として提示されている点は、コロナ禍になる以前から従業員の能力開発支援に注力していた企業においては、リモートワークに対応して職場環境を整えられたため、能力開発支援を受けているという認識が、自身のキャリア自律志向性を高め、自己学習をリモートワーク下でも行っていると考えられます。

職場において能力開発支援を行う体制を整えることによって、従業員のキャリア自律や自律的学習行動へとつながるという点は、ただ単に従業員に対して「キャリア自律しましょう」と伝える状態とは大きな違いがあります。

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