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【読書メモ】3章 自己制御・自己コントロール(原田知佳著):『非認知能力』(小塩真司編著)

自己制御(self-regulation)自己コントロール(self-control)の定義は、研究者によってバラバラの状態のようなのですが、ここではざっくりと、自分自身の言動や感情を調整し目標達成に向けてコントロールする、とお考えください。

マシュマロ実験とその後の展開

心理学で有名な実験の中でマシュマロ実験というものがあり、私も聞いたことはありました。「今このマシュマロを食べてもいいですが、一五分待つことができたらもう一つあげますよ」(48頁)と言われた四歳頃の被験者が、食べずに待てた時間を測定するという実験です。

この実験結果として、十年後の追跡調査から、マシュマロを食べることを長く待つことができた子の方が、学校や家庭での問題行動が少なく、また学力も高いという結果が明らかになっています。さらに、四十年後の追跡調査では、長く待つことができた子と待てなかった子とを比較した場合、前者の方が衝動制御に関わる前頭皮質のはたらきが活発(要は自分を律せられるということ)であったそうです。

但し、2018年の直近の調査からは、マシュマロ実験では満足遅延のみを自己制御として捉えていたことに疑問が投げかけられ、家庭環境や幼少期の認知能力の影響力の方が大きいという結果も提示されています。

自己制御の重要性:三つの尺度

満足感を我慢するという満足遅延のみでは測れないけれども自己制御の重要性は認められているようで、青年期や成人を対象とした研究では、自己制御が予測できる適応指標として三つのものが提示されています。

自己コントロール尺度
自己コントロールが高さは、学校や職場での遂行行動、ウェルビーイングや適応状況、対人関係、食行動や体重管理、と関連します。

バラット衝動性尺度
衝動性が高いと、喫煙や飲酒、浮気や窃盗といった逸脱行動、非計画的であったり意思決定が弱い、といった要素と関連します。

低自己統制尺度
②の反対概念に近いものですが、自己コントロールが弱いと、喫煙や飲酒、浮気や窃盗といった逸脱行動に関連します。

自己制御には社会的側面もある

自己制御という言葉からは、自分自身という側面にどうしても焦点が向きがちになります。ただ、私たちの生活を思い起こせば、自分自身を律する時には他者や社会からのまなざしも意識するものではないでしょうか。

こうした「社会的場面で、個人の欲求や意思と現状認知との間でズレが起こった時に、内的基準・外的基準の必要性に応じて自己を主張するもしくは抑制する能力」社会的自己制御と呼びます。

自己制御は開発可能!

では自己制御は後天的に開発可能なのでしょうか。本性によれば多くの研究者が開発可能、すなわち介入の余地があるとしているようです。但し、文化差はあるようなので、日本において調査されたものを活用するのが良さそうです。

日本でも調査された介入施策としては、課外活動への参加が自己制御の促進に結びつくというものがあります。日本では、運動部活動に所属している大学生はそうでない学生と比較して、「社会的自己制御の持続的対処・根気が高いことが確認」(61頁)されているようです。


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