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【読書メモ】どのようにすれば人材のリテンションは図れるのか?:『人材定着のマネジメント』(山本寛著)

大学院での先行研究や研究会で必要な論文を読んでいると、毎回たどり着く日本人の研究者が何名かいらっしゃいます。英語論文をさんざん読んだ後に、それらを踏まえた日本人の研究者の論文を読むと「ありがたやー」となります。このような形で私淑する研究者のお一人が山本寛先生です。本書も離職意思(intention to leave / turnover intention)を調べていてたどり着いたありがたい一冊です。

離職とリテンション

優秀な人から辞めるという表現があります。ここ数年の言い回しかと思っていたのですが、2009年出版の本書のまえがきにも書かれているので、市民権を得てきた考え方なのかもしれません。優秀な人の多くが辞めるとは思えませんが、残らざるを得ない人にはそれぞれにわかりやすい理由があります。そのため、本書の主題であるリテンションで対象とする層が優秀な社員ということになるのは現実的です。

HRMにおけるリテンションの位置付け

人的資源管理(Human Resource Management:HRM)にはさまざな機能があります。著者は、リテンション・マネジメントがそれぞれの機能

報酬マネジメント

賞与やストックオプションなどの金銭的報酬による引き止めや、非金銭的報酬としての昇進もリテンション・マネジメントの一つです。また、選抜プログラムへの参加も間接的な作用をもたらすものとして含まれます。

モティベーション・マネジメント

内発的動機付けを高めることによって現在の職務への意欲が高まると考えると、モティベーションへの働きかけもリテンション・マネジメントの一環と言えます。そのため、職務アサインメントもそのための手段の一つです。

キャリア・マネジメント

採用、異動配置、評価など、企業組織にとって求められる役割を管理するキャリア・マネジメントもリテンション・マネジメントとして位置付けられます。

離職の二つの測定指標

離職研究の場合、何が社員の離職につながるのか、という目的変数として設定される調査デザインが多いと思います。著者のまとめとしては、客観的指標と主観的指標とで測定されるものとして整理しています。

主観的指標としては離職意思(turnover intention / intention to leave)が該当します。こちらについて、あとで尺度の詳細を見ていきます。客観的指標としては退職行動勤続期間を用いるものが多いようです。


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