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【論文レビュー】越境とキャリア・アダプタビリティ:Ishiyama(2016)

先行研究モレ第二弾です(笑)。キャリア・アダプタビリティが越境的学習に影響を与えることを明らかにされた石山先生の論文を紹介します。

Ishiyama, N. (2016). Role of knowledge brokers in communities of practice in Japan. Journal of Knowledge Management, 20(6), 1302-1317.

実践共同体、ナレッジ・ブローカー、越境

実践共同体への参画がキャリア確立を促すとしたのは、荒木先生の『企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境』です。以下に、以前まとめたマガジンも掲載しておきますので、ご関心のある方はご笑覧ください。

ナレッジ・ブローカーとは、ざっくり言えば、複数の組織に所属し、それぞれの実践共同体で得られた経験や知見を相互共有する存在と言えます。越境学習という概念を最近ではよく目にすることも多いかと思いますが、ナレッジ・ブローカーは日常的に越境しています。

本論文では、キャリアを形成する境界が複雑になっている現状を踏まえた場合、複雑性に適応しキャリアの越境を捉えるキャリアの概念としてキャリア・アダプタビリティが適していると著者はしています。

具体的には、日本におけるキャリア・アダプタビリティの先駆的調査であるMasuda (2008)の尺度を用いた調査を行なっています。尚、同調査での尺度は、キャリア・アダプタビリティの四次元のうち好奇心を除いた尺度であることには留意が必要でしょう。

キャリア・アダプタビリティはナレッジ・ブローキングに影響

本論文では、総論的にはキャリア・アダプタビリティが越境学習の鍵となるナレッジ・ブローキングに影響を与えているという関係性を明らかにしています。ただし、以下の結果図を見ていくと詳細な分析が必要であることもわかります。

Ishiyama (2016) p.1313

まず、関心(concern)はナレッジ・ブローキングにポジティヴに影響を与えていることがわかります。直接的な影響もありますし、多様な意見の構築と統合を媒介しての影響もあります。ただ、多様な意見の受容にはネガティヴな影響が出ており、これは環境変化への準備という意味合いを含む関心が、時として多様な他者の意見を受容することとの齟齬が生じるからではないかと述べられています。

次に、統制(control)自信(confidence)は、限定的な影響しかないことがわかります。具体的に言えば、多様な意見の構築と統合を媒介しての効果しか見出されてない状況です。とりわけ統制は、ナレッジ・ブローキングにネガティヴな影響を直接的に与えている点も留意するべきでしょう。

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