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【読書メモ】導入から引き込まれる学術書!:『管理職コーチング論』(永田正樹著)

永田正樹さんの『管理職コーチング論』のサブタイトルは「上司と部下の幸せな関係づくりのために」です。マネジャーによるコーチングというタイトルも良いですが、このサブタイトルも素敵だなと感じます。今回から何回かに分けて本書の感想を書いていきます。

導入がすごくいい!

本書は学術書です。にもかかわらず(というとヘンですが)、「はじめに」の最初の段落からグッと引き込まれる内容です。本書を買うかどうか悩んでいる方は、ぜひ書店で導入を読んでみてください。ちなみにですが、導入の最初の単語は、京都の紅葉の名所で有名な「東福寺」です。興味が湧いた方はぜひ書店でパラパラと冒頭を読むか、ポチッとAmazonのリンクをクリックしてください。笑

この最初の段落の最後で、著者は管理職コーチング研究に携わる著者らしからぬ(?)一節を書かれています。

現在、部下育成に関する研究に取り組んでいる私は、実は部下のマネジメントが甚だ拙かったのである。

p.v

私も多くの上司のもとで働いてきましたが、部下のマネジメントが拙い方は、「部下のマネジメントが拙いことを自覚していない方」だと思います。そういう意味で、永田さんは謙虚にお書きになられているのだと推察しますが、苦手意識を持っている領域を研究するということはわりとあることなのでしょう。個人的には共感します。

なぜ管理職コーチングを研究されているのか、得られた知見を誰に提供したいのか、といった著者の想いにあふれた導入であり、書き出しが苦手な私はぜひ見習いたいものです。

管理職コーチングが求められる理由

現代の日本企業において管理職コーチングが求められるのは、従来のOJTが機能不全になっていることが挙げられます。序章で一項を割いてOJTの機能不全を先行研究で書いてくださっている点も大変貴重です。

その上で、管理職コーチングの重要性についてまとめているのが以下の箇所です。

先行研究において、マネジャーは、部下を統制、指示、管理するだけではなく、部下の学習を支援するために、権限を委譲し、育成する促進的リーダーシップ(facilitative leadership)を発揮することが重要であると指摘されている(Ellinger, & Ellinger, 2021)。そうした中で、部下育成のための手段として注目を集めているのが管理職コーチングである(Ellinger et al., 2003; Logenecker, & Neubert, 2005; Blackman et al., 2016)。

p.3

コーチングは、元々は外部のプロフェッショナルによるものが主要なものでした。しかし、コーチを活用できる人はそれほど多くなく、ほとんどのビジネスパーソンにとっては、上司によるコーチングを得られればそれに勝るものはないと思います。このような点でも管理職コーチングは現代の日本企業にとって必要な概念と言えるでしょう。

経験学習+リフレクション

従来の管理職コーチングの研究では、「どのようなメカニズムで部下の学習を促しているかに関する学習理論が考慮されていない」(p.4)という課題を提示した上で、経験学習リフレクションを鍵概念として、以下のようにリサーチ・クエスチョンを設定しています。

マネジャーは、部下の成長を促すために、どのようなプロセスによって経験学習・リフレクションを支援し、どのような効果を与えているのか

p.6

本書は著者の博士課程学位論文をベースに書かれたものだと「おわりに」で言及されています。この点から、このリサーチ・クエスチョンは博論全体の問いであると推察され、博論における大きな問いを考える上でも大変参考になる内容だと感じました。

今回は序章までを対象として本書のアウトラインに関する感想を書きました。今後は第1章以降をまとめてみようと思います。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!


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