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【論文レビュー】入社三年間の上司との関係性や職務評価から入社13年目までの昇進を予測できる!?:若林(2006)

改めて読みましたが、この論文、スゴイです。結論を先取りすれば、入社三年間における上司との関係性、上司・先輩・同僚からの多面評価、職務行動評価の結果が、入社13年目までに至る三時点での昇進を高い精度で説明できる、としているのです。

若林満. (2006). 組織内キャリア発達とその環境. 経営行動科学, 19(2), 77-108.

組織内キャリア発達という視点

冒頭に挙げた本論文の結論があまりに秀逸すぎるのであとは補足的な説明となります。まず、本論文で扱っているキャリア発達は一つの組織の内部におけるものを対象として、周囲の社員との相互作用を通じて為されると捉えているため、組織内キャリア発達と呼ばれています。

これは、日系大企業における従来型の終身雇用型のキャリア発達を対象としていると考えれば良いでしょう。さらに言えば、2022年現在の日系大企業でよく見られる現象の半分以上を説明できると言っても過言ではないでしょう。

入社13年目を予見するデータ

結論部分はきれいに相関係数に表れています。結果変数としての将来時点におけるデータは変数1〜4に該当しますが、垂直的交換(入社三年間の上司との関係性)も昇進可能性(上司や同僚からの多面評価の結果)も職務遂行(入社三年間の職務遂行能力評価)も有意な相関関係を有していることがわかります。

若林(2006)p.89

さらに本論文では、実際の昇進についても入社7年目、入社10年目、入社13年目の三時点で縦断的に調査しています。上で挙げた入社三年間の数値が高い群と、中程度の群と、低い群とに分類して、三時点での第一選抜と第二選抜以下とに分けたものが以下の表です。

若林(2006)p.92

入社三年間のデータが高い群が、いずれのタイミングでも第一選抜に非常に高い確率で残っていることがよくわかりますね。若林先生も用いているキャリアツリー分析については、花田先生の論文を基に以前詳しく書いたのでご関心のある方は以下をご笑覧ください。

終わりに

本論文を読んでいて、私自身が入社三年間を過ごしたチームの上司や先輩のみなさまのおかげで今の私がいるのだと痛感させられました。最初の会社からは七年弱で転職したので同社での入社13年目というものはないのですが、社会人キャリアとして入社13年目は、三社目でHRBPとして赴任した年に当たります。新卒入社三年間の評価がどうだったのかを自身で判断することは控えますが、主観的キャリア満足として高いものだったので、上司・先輩・同僚諸氏に対する感謝の念を新たにしました。

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