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【論文レビュー】尺度開発の信頼性・妥当性をどのように検証するのか?:池田・城戸・鈴木(2022)

心理統計を学ぶには、良い教科書から学ぶのが有効です。他方で、自分自身の研究に惹きつけて、あーでもないこーでもないと考えるためには、アクセプトされている良い論文から研究プロセスを学ぶのも効果的だなぁと思います。今回は、本論文を基に、尺度開発の信頼性および妥当性の検証プロセスについて学んでみました。

池田めぐみ, 城戸楓, & 鈴木智之. (2022). 日本語版 Employee Agility and Resiliency Scale (EARS-J) の信頼性・妥当性の検討. パーソナリティ研究, 31(1), 69-71.

本論文は、レジリエンス尺度の中の一つである、Braun et al.(2017)のEARS(Employee Agility and Resiliency Scale)のレジリエンスに関する項目について、和訳版の尺度開発を行っています。レジリエンスの尺度にはいくつかあるのですが、著者たちは、VUCAと呼ばれる時代において、職場の変化に伴うストレスへの対応を測定できる点でEARSに着目されて、尺度翻訳を行ったようです。

信頼性の検証

現版の6項目に関して和訳した上で、現版と同じ一因子構造を仮定して確証的因子分析を行っています。以下がその結果図で、クロンバックαの値も0.8以上であることから十分な内的整合性があるとしています。

池田・城戸・鈴木(2022)p.70

「えっと、、確証的因子分析(確認的因子分析)ってなんでしたっけ??」という、1-2ヶ月前の私のような方は、ビジネスリサーチラボの能登さんの記事が大変わかりやすいので以下に貼っておきます。

妥当性の検証

次に、妥当性を検証についてですが、本論文では収束的妥当性の検証を行っています。初学者のざっくり要約で恐縮ですが、「調査した概念(A)と、先行研究上では関連があるとされている他の概念(B)とに有意な関係性があるかどうかを検証するもの」というような感じです。

本論文では、共感経験尺度(Empathic Experience Scale:EES)職務パフォーマンスという二つの概念との間に0.5以上の正の相関があることを明らかにし、妥当性を検証されています。

尚、収束的妥当性を知りたい方はたとえば以下が参考になります。

おまけ

本論文は尺度翻訳という観点でも大変参考になる論文です。以前、その観点での学びを中心にnoteに書いたことがあるので、そちらにご関心がある方はよろしければご笑覧ください。

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