ロストケア

長澤まさみは東宝芸能所属だから出演映画に東宝作品が多いのは当たり前だ。とはいえ、昔の俳優のように専属というわけでもないので他社作品への出演も多い。というか、コロナ禍になってからは他社の方が多い。

コロナ禍になってからの出演映画は以下の通り（海外作品の吹替は除く）
※配給会社無記入のものは東宝作品

コンフィデンスマンJP プリンセス編（2020）
MOTHER マザー（2020）※スターサンズ / KADOKAWA
すばらしき世界（2021）※ワーナー・ブラザース
唐人街探偵 東京MISSION（2021）※アスミック・エース
マスカレード・ナイト（2021）
コンフィデンスマンJP 英雄編（2022）
シン・ウルトラマン（2022）
百花（2022）※東宝 / ギャガ
シン・仮面ライダー（2023）※東映
ロストケア（2023）※日活 / 東京テアトル※本作

この3年数ヵ月で10本もの作品に出ていることにまず驚く。まぁ、主演・ヒロイン役でない作品もあるけれどね（「シン・仮面ライダー」は出番も少なかったし顔も半分隠れていたからエンドロールを見るまで彼女と気付かなかった…）。

そして、そのうちの半分（本作を含む）が東宝以外の配給作品だ（「百花」は東宝とギャガの共同配給）。

大雑把に言うと東宝では一般受けする作品、他社では通好みの作品が多いという感じだろうか。「百花」が東宝の単独でなくギャガとの共同配給になっているのは通好みの作品だからなのかな。

そして思った。
東宝以外の長澤まさみ出演作品って左翼的思想のものが多いよねと。

犯罪が起きても悪いのは犯罪を起こした者ではなく、そうした者を犯罪に走らせてしまった国や自治体が悪いといったような主張をするやつね。

自分の子どもを虐待しただけでなく犯罪者にしてしまう「MOTHER」も、出所後の生活に困るヤクザを描いた「すばらしき世界」もどう考えても虐待する母親や反社会的な行為をしていたヤクザが悪いのに、やけに彼等に同情したくなるような作風だった。

本作もその路線だ。

誰が見たって、自分の父親を含むケアが必要な高齢者を安楽死させた介護士が悪いに決まっている。
なのに本作ではこの殺人介護士に対して感情移入できるように描かれている。金があって老人ホームに母親を預けられる検事やこの介護士に親を殺されたことを抗議する遺族は敵扱いだ。

そして、基本的な思想は国や自治体が、ケアさせられる子どもや孫のことは何も考えていないからこういう問題が起きる。だから、高齢者を殺してしまう介護士や子ども・孫が出るのも仕方ないでしょという論調だ。

本当、左翼とかリベラル、パヨクには理想とする目的を達成するためには反社会的な行動を伴っても仕方ないという考えを持つ連中が多いよね。野党が支持されないのってそういうところなんだよ！

彼等が掲げる理想は確かに立派だと思う。でも、どんな理由があっても犯罪は犯罪なんだよ。
虐待する母親やヤクザ、殺人を働く介護士になんか同情的になってはダメでしょ！

本作にはチャールズ・チャップリン の「殺人狂時代」の真似事みたいな台詞があったけれど、あれは戦争と殺人を比較したから効果的であったのであり、死刑制度と殺人を犯して死刑判決を受けた者を比較するのは何を言っているんだかって感じだ。

それから、社会派をきどった映画なのに作中の事件を伝えるニュースのシーンがダメダメなのもいかにも日本映画という感じだ。
容疑者を呼び捨てにして報道するなんていつの時代のことだよ？
結局、日本の映画制作者、特に監督、プロデューサー、脚本家、俳優なんていう連中がブラック労働で自分の時間がないというのもあるのだろうが、ニュースを見ないし新聞も読まないから、作中のこういう場面にリアリティがないんだよね。

あと、終盤の刑務所の面会室のセットもどうにかならなかったのかと思う。きちんとセットを作る予算も立会人役の俳優に払うギャラもないのか、黒バックについたてを置いただけで表現するのは舞台じゃないんだからいい加減にしろと思った。

邦キチの連中がいかにもマンセーしそうな作品だが個人的には典型的なダメな日本映画だと思った。まぁ、泣けるシーンはあるし、長澤まさみと松山ケンイチの演技は悪くないんだけれどね。

ところで、原作は「ロスト・ケア」表記なのに映画は中黒なしの「ロストケア」なのは何故？
まぁ、「戦メリ」も坂本龍一が手掛けたサントラ盤は「戦場のメリー・クリスマス」表記なのに、映画は「戦場のメリークリスマス」だけれどね。日本の映画業界は中黒が嫌いなのかな?

あと、製作委員会に配給の日活と東京テアトルだけでなく東映ビデオと東宝芸能といった邦画大手系の企業も含まれているのには驚いた。
2023年度の賞レースで過大評価されそうだね。