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「Billboard JAPAN年間チャート」洋楽シェアほぼゼロの衝撃

Billboard JAPANの年間チャート、なかなか衝撃的な結果だった。

年間100位中、シングルではK-POPを除くと洋楽曲でランクインしたのはたったの1曲しかなかった。

その貴重な1曲となったのは、ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーのコラボ曲“ステイ”だ。

確かに全米チャートで通算7週間1位を獲得した大ヒット曲であることには違いない。

でも、この曲よりも1週長い8週間1位を獲得した(しかも連続)オリヴィア・ロドリゴ“ドライバーズ・ライセンス”はそんなに日本ではヒットしなかったのに、この曲だけはヒットしたのは何故?

フィーチャリング・アーティストとして参加しているジャスティン・ビーバーの日本での人気が依然として高いってこと?

でも、今年、ジャスティンは自身がリーディング・アーティストとなっている“ピーチズ”という全米ナンバー1ヒットも放っているんだよね。

でも、日本では“ピーチズ”はそんなに大きなヒットにはなっていない。

全米の方の年間チャートには勿論、“ステイ”も“ピーチズ”も入っていて、“ステイ”は12位。“ピーチズ”は10位と大健闘している。
さらに、“ステイ”以外にもコラボ曲ではウィズキッドとのコラボ曲“エッセンス”。“ピーチズ”同様、自身の最新アルバム『ジャスティス』収録曲では、“ホーリー”や“ロンリー”、“エニワン”も年間チャート100位内に入っている。

でも、日本では“ステイ”だけがヒットしたってのは謎だよね…。

ジャスティン以外で現在、日本で数少ない一般にも知られている洋楽アーティストといえば、レディー・ガガ、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、エド・シーラン、コールドプレイといったあたりだと思う。
コールドプレイは年間チャートに7曲(うち2曲はトップ10入り)を送り込んでいるBTSとのコラボ曲なのに年間チャート入りできなかったんだから、いかに洋楽っぽい音が日本のリスナーに敬遠されているかが分かるといった感じかな。

昨年度の年間100位内に入った数少ない洋楽ヒットの1曲である“レイン・オン・ミー”でレディー・ガガとコラボしていたアリアナ・グランデは今年度、全米の年間チャートではザ・ウィークエンドとのコラボによる“セイヴ・ユア・ティアーズ”のリミックス・バージョンが2位と大大健闘したけれど、日本でのリアクションは薄かった。

エド・シーランは2017年リリースの楽曲にもかかわらず、“シェイプ・オブ・ユー”が昨年度の日本の方の年間チャートに入っていて驚かされたが(本当、洋楽、邦楽問わず、日本のストリーミングのチャートってなかなか顔ぶれが変わらない)、今年は新曲が出たんだから、ドーンと来るだろうと思ったら、“バッド・ハビッツ”も“シヴァーズ”もそんなに大きなヒットにはならなかった。

最近はフォーク路線の楽曲や過去曲のセルフリメイクをやっているテイラー・スウィフトや、大御所トニー・ベネットとジャズ作品をリリースしたレディー・ガガなんて洋楽マニア以外チェックしていないのではと言いたくなる状況だ。

現在の日本で若者の間で知名度があるとされる洋楽アーティストですらヒット曲が出なくなっているんだからね…。

とはいえ、シングル単位で考えれば、そこまで悲観する材料ではないのかもしれない。
そもそも、洋楽というのは(ストリーミング主体になって最近はシングルのみのリリース曲も増えたけれど)、基本はアルバムからシングルを切っていくという手法が中心だから、既にアルバム収録曲としてフィジカルやダウンロードで所有している楽曲を、あるいはストリーミングで何度も聞いた曲を、シングルカットされたからといって、改めてシングルをダウンロード購入したり、ストリーミングで何度も聞き返したりという習慣は日本のリスナーにはあまりないからね。

それは、洋楽黄金期と言われた80年代だってそうだった。基本、レコードにしろカセットにしろCDにしろ、洋楽はアルバムは売れてもシングルなんてそんなに売れなかったからね。
多少のバージョン違いはあっても基本は同じ楽曲だから、既にアルバム収録曲として持っている楽曲をシングルで買い直す人は少なかったし、アルバムからシングルが切られれば切られるほど、シングルを単体で買うよりもシングル曲が複数収録されているアルバムを買った方がお得となるから、まぁ、そりゃそうだよねって感じかな。

ちなみに、80年代洋楽と一般に言った時に多くの人に共通して黄金期と呼べる時期というのは、個人的には80年代半ばだと思っている。
それは、人数の多い団塊ジュニアが洋楽を本格的に聞きはじめる頃であろう中学生になったのが1984年だからだ。

その一方で、87年あたりからはジャンルを問わず老若男女が知っている楽曲というのが減り、シングルが売れなくなっていった(90年代になってカラオケブームとともに復活するが)。87年のオリコン年間1位の瀬川瑛子“命くれない”なんて40万枚くらいで年間1位になったからね。だから必然的に洋楽のヒット曲だって出なくなった。

なので、洋楽黄金期というのは84〜86年あたりではないかと思う。

でも、そんな時期でも年間チャート入りする洋楽シングルって数えるほどしかないんだよね。
オリコンの年間チャート基準になるけれど、1984年はたったの5作品しかランクインしていない。
1985年は6作品と1作品増えているけれど、チャリティ・シングル“ウィ・アー・ザ・ワールド”の12インチSg盤と7インチSg盤が別作品扱いになっていたので、実質は5曲ランクインと84年と変わらない状況だ。

しかも、84年も85年も日本の映画やTV-CMのために洋楽アーティストに歌わせた日本のみでリリースされた楽曲。つまり、純粋な洋楽ではない楽曲も含んだうえでの5曲だからね…。
さらにいえば1986年の年間チャートなんて洋楽曲のランクインはゼロだったりする…。

実は洋楽黄金期でもシングルはヒットしていなかったんだよね。

でも、アルバムチャートを見れば、毎年、年間チャート上位に洋楽作品がランクインしていた。
1984年なんて洋楽でワンツー・フィニッシュだったからね。ちなみに、その時の1位はマイケル・ジャクソンの『スリラー』で、2位が『フットルース』のサントラ。どちらも多くの楽曲がシングルカットされ、全米チャートを賑わせたアルバムだ。つまり、全米チャートを賑わせたシングルが多いアルバムはアルバムとしては日本でもヒットするけれど、シングルとしてはそんなに売れないということ。

そんな洋楽黄金期の日本での売れ方を知っている者としては、今回のBillboard JAPANの年間チャートで衝撃的なのはシングルよりもアルバムの方だと思う。

なんと年間100位内に入った洋楽アルバムはゼロ!
単純計算でいえば、今の日本の洋楽シェアは1%もないってことだからね…。

現在の日本の若者でも名前を知っているような洋楽アーティストのうち、今年はジャスティン・ビーバーやエド・シーラン、テイラー・スウィフト、レディー・ガガ、コールドプレイなんてあたりが新作を出した。アリアナ・グランデだって、昨秋のリリースだから、年間チャート的には今年度の対象になってもおかしくない。実際、全米の方の今年度の年間チャートではトップ10入りしている。

これは衝撃的だよね…。

84年から86年では年間アルバムチャートの50位までに毎年、10作前後の洋楽アルバムがランクインしていた。それが今回はK-POPを除けばゼロだからね…。

大雑把に言ってしまえば20%前後あったシェアが限りなくゼロに近付いたってことだからね…。

確かに、2000年代に入ってから、洋楽に限らず洋画のシェアも減っている。でも、それを日本人が内向きになったとか、保守化したとか、外国人差別の意識が高まったとかの一言で片付けるのは違うと思うんだよね。

K-POPは外国産なわけだし、K-POPのファンは日本語バージョンの楽曲や日本向けオリジナル曲よりも韓国語曲を好む傾向が強いし、配信やレンタルなどでは韓流に限らず海外ドラマが楽しまれている。

まぁ、洋楽や洋画がポリコレ一色になってしまって敬遠されているってのはあるのかもね。K-POPや海外ドラマはまだ、そこまで極端ではない上に、邦楽や邦画より金がかかっているから海外かぶれの人間にはとっつきやすいって感じなのかな?

ただ、コロナ禍になって、洋楽や洋画のシェアが一気に低下したってのはあると思う。

来日公演とか、プロモーション来日なんてのがなくなり、海外メディアをこまめにチェックしている人以外にはほとんど、リアルタイムの海外エンタメ情報なんて入ってこなくなったからね。

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それから、洋楽のシェアがいくら低下しているからといって、回顧記事や過去のインタビューの再掲ばかりやっているロッキング・オンやBURRN!といった洋楽の権威的メディアの責任も大きいと思うな。
あと、ロッキング・オンは新しいものを取り上げたとしてもポリコレ的なものばかりだからね。欧米のミュージック・シーンではポリコレ目線で語るのが当たり前といっても、日本ではポリコレ目線は受け入れてもらえないからね。かつてのU2とかレディオヘッドくらいがギリなんだよね。

でも、最近のロッキング・オンは自分たちが米民主党の支持者にでもなったかのような論調が目立つからね。

ロッキング・オンが今年の年間ベスト・アルバムで1位に選んだのはマネスキンで、2位がビリー・アイリッシュ、3位がタイラー・ザ・クリエイター、4位がリトル・シムズという並びを見ると、ロートル雑誌化から抜け出そうとしているように見えるけれど、実際はそうでもないんだよね。
マネスキンはいつの時代の音楽だよというロックンロールをやっているし、2〜4位はポリコレ路線だからね。まぁ、アジア人蔑視をしていたビリー・アイリッシュをポリコレ界隈で女神扱いするのは違うと思うけれどね。
結果、昔ながらの音楽か、自分たちが通ぶれるポリコレ路線だから、いずれにせよ、日本の若者にはアピールできないよね。

ビリー・アイリッシュの日本での人気はアジア人蔑視問題も多少は影響して一気に低下したけれど、ポリコレ路線を貫くなら、その辺もきちんと批判しないとダメだよ!そういう矛盾が洋楽が支持されない理由でもあると思う。野党がダブルスタンダードだらけで支持されないのと同じ。
2020年に予定されていたビリー・アイリッシュの来日公演はコロナの影響で中止となった。その時はチケットがあっという間にソールドアウトとなったが、仮に今後、改めて来日公演が決定したとしてもチケットは売れないと思うな。

つまり、欧米人の主張するポリコレは全て正しいみたいな論調を日本の洋楽メディアがしている限り、洋楽離れは進んでいくと思う。
70年代にクイーンやチープ・トリックを。80年代にボン・ジョヴィやa-haをアイドル扱いしたことに関しては不満を持つ洋楽ファンも多いと思うが、結局、日本って、ビジュアルから洋楽に興味を持つ人が多いってことなんだよね。

エド・シーランの知名度が上がるまで時間がかかったのも、アデルの日本での人気が海外に比べると地味なのも、結局、日本の洋楽ファンの多くはビジュアルから入るからなんだよね。

だから、テイラーにしろ、ガガにしろ、アリアナにしろ、そうしたビジュアル面で注目されたアーティストでも、アーティスト性が強まり、ポリコレ色が強まるとファン離れが起きてしまうんだよね。

今の洋楽アーティストでポリコレ色の薄いアーティストなんて、カントリーとか限られたジャンルになってしまうし、そういうジャンルは日本人好みのビジュアルではないから、洋楽人気が復活する可能性は少ないとは思うけれどね。

あと、ストリーミングで聞くというのが基本になったせいで、洋楽のスケールが小さくなったというのはあるかな。スマホを通じてイヤホンで聞くのが今の主流だから、まぁ、そういう聞き方で聞きやすい曲にどうしてもなるしね。それにフィジカルでリリースされない楽曲も増えた。

その一方で、ベテラン・アーティストは昔ながらのスケール感のある楽曲をリリースし続けてはいるんだけれど、何しろ、ストリーミング時代になって、ベテランの曲はほとんどヒット・チャートにランクインしなくなってしまった。スマホで聞くには適していないから、再生回数も増えないしね。特にロックなんて壊滅状態。
どんな良い曲でも、ラジオで聞く機会やテレビの音楽専門局でMVを見る機会がないとヒット感というのは出ないからね。
ストリーミングでガンガン再生されている曲はヒット曲としてラジオでかけてもらえるけれど、そうでないと難しいよね。
だから、ぶっちゃけ、若者のみならず、中高年の間でも洋楽離れは進んでいるんだと思う。

まぁ、フィジカル中心の聞き方に戻ることは永久的にないと思うし、トランプのオッサンが大統領でなくなったらアーティストたちの不満が減るかと思ったけれど、民主党政権になってもポリコレ路線も変わらない。
だから、日本で洋楽人気が復活する可能性はほぼゼロだと思うんだよね…。

※トップ画像はBillboard JAPAN公式HPより

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