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グッド・ナース

Netflix映画の劇場での限定上映はすっかり恒例イベントとなっている。

アカデミー賞で監督賞など3部門を受賞したことから、映画祭での上映を除けば日本では配信のみのリリースだった「ROMA/ローマ」が2019年3月に劇場公開されて以来、ネトフリ映画は定期的に日本の映画館でも上映されるようになった。

本稿で語るネトフリ映画とは、ネトフリで配信されているネトフリオリジナルもしくは独占配信の洋画のことだ。
日本作品は、実写映画では「ボクたちはみんな大人になれなかった」、アニメ映画では「雨を告げる漂流団地」など、配信作品の総集編映画では「日本沈没2020」など、配信作品のイベント上映では「地球外少年少女」といった作品が劇場公開されているが、これらの作品は原則、ネトフリ以外の映画会社が配給会社としてついているため、上映館数もそれなりに確保されている。

でも、ネトフリ洋画に関しては、ネトフリ自体が配給しているため、東宝・東映・松竹といった邦画大手からは「配信=映画館の敵」とみなされ、邦画大手系のシネコンでは上映されない。シネコンで上映するのはイオンシネマだけで、あとはミニシアターでの上映が基本だ。また、ネトフリ自体も劇場上映はあくまで販促イベント程度にしか考えていないから、劇場上映のプロモーションもきちんとしない。だから、まず、ネトフリ洋画の限定上映館が大盛況となることはない。

唯一の例外は今年7月に公開された「グレイマン」だが、これはアメコミ映画で知られるルッソ兄弟の監督作品ということで、通常のネトフリ映画には興味が持たない層が見に来たということなんだと思う。

一般的に言って、ネトフリ作品は日本作品を含めて日本のネット民や映画マニアからは嫌われている。彼等の主張によると、ポリコレ臭が耐えられないらしい。でも、海外のポリコレ事情を把握している(支持はしていない)自分のような者から見ると、本当にネトフリの日本作品って、本国がOK出したのかと思うくらい老害思想全開なんだけれどね。これでポリコレ臭が酷いって感じるんだから、いかに日本は老害大国かというのが分かるかというものだ。

そして、毎年秋から年末にかけて恒例となっているネトフリ洋画の連続限定上映も、こうしたネット民らが嫌うようなポリコレ臭のする賞レース向けの作品が中心のラインナップとなっている。

この恒例イベントが始まったのは2019年からだ。

19年は6作品が上映された。
先陣を切ったのは「キング」で10月25日公開だった。

20年は5本が上映され、トップは10月9日公開の「シカゴ7裁判」だった。

21年は7本もの作品が上映された上に、年々、スタート時期が繰り上がっていたこともあり、1本目の「THE GUILTY/ギルティ」は9月24日公開となった。

今年は単発で夏に上映された「グレイマン」を除くと、トップを飾る作品となる本作の公開日は10月21日で3年前のレベルに戻ってしまった。
また、上映作品数も「グレイマン」を除くと5本となり、コロナ禍最初の年で影響が色々とあったであろう20年と同レベルとなっている。

こうなった理由として考えられるのは2つだ。

まずは、ネトフリの“リストラ”策の影響だ。

7〜9月期決算では3四半期ぶりに会員数が増えたことが発表されたが、広告付き低価格プランを出してくるということは、トレンドとしては、ネトフリの会員数の減少傾向は収まっていないということだ。たまたま、7〜9月期は「ストレンジャー・シングス」の新シーズンが人気を集めたりしたおかげで会員数が増えただけではないかと思う。作品に使われたケイト・ブッシュやメタリカの旧曲がリバイバル・ヒットしたくらいだからね。というか、7〜9月期は夏休みシーズンだから、旅行には行かないけれど暇だなという人が見ただけなのでは?

というか、欧米ではノーマスク生活が当たり前になり、旅行やコンサート、スポーツ観戦などのライブエンタメの楽しみ方もコロナ前とほぼ同じようになっている。だから、巣ごもり需要なんて期待できない。

なので、確実に当たる見込みがある作品以外のプロジェクトを中止するのは当然なんだよね。

日本アニメに関しては、元々、世界的には一部のマニアにしか受けていない上に、ネトフリ配信用の日本アニメでは海外視点まで入るから、日本のアニオタや日本のアニメが好きな海外のオタクにはポリコレすぎるとして毛嫌いされてしまう。

元々、需要がないものなんだからリストラされるのは当たり前だよね。

もう一つの要因は、配信映画として初のアカデミー作品賞を受賞したのがアップルの「Coda コーダ あいのうた」になってしまったことだ。

2018年度から毎年、アカデミー作品賞候補を輩出し、配信系映画会社のフロントランナーでいたつもりだったのに、他社に先をこされてしまってはモチベーションは低下するよね。

賞レース向け映画なんて、賞を取らなきゃ金にならないわけだからね。
慈善事業じゃないんだから、儲からないものに積極的に出資するのはやめようってなるのは当然の動きだ。

こうしたことから、ネトフリが賞レースに消極的になっている可能性もあるのではないかと思う。

それが、秋から年末恒例の賞レース向けネトフリ映画連続上映作品の本数が減少した要因ではないだろうか?

そんなわけで、今年のトップバッターとなった「グッド・ナース」を見た。

医療ミスを隠蔽しようとする病院の体質を批判する社会派映画?それとも、快楽的に患者を殺す極悪非道な看護師を描いたスリラー的作品?あるいは、疑いをかけられている看護師ではない真犯人がいるとか、病院や当局の不正を暴くとか、そういう展開になるミステリーか?

とか、色々と思いながら見てしまったが、実話を基にした作品だからオチは決まっているんだよね。だから、ネタバレも何もないんだけれどね。

全体としては惜しい!もう一歩!って感じの作品だった。
まぁ、実話を映画化した作品にはよくあることだけれどね。

現実世界では辻褄の合わないこと、矛盾だらけのことは当たり前だからね。
でも、映画やドラマではその辺は脚色して欲しいなとは思った。
容疑者の看護師の男に対しては、“女性ばかり襲うのは何故だ?妻への恨みか?母親への恨みか?”と刑事が聞いたのに、この男は男性や子どもの殺害も自白したしね。
それから、捜査に協力することになった女性看護師も、病院からは病院側の責任者の立ち会いなしで捜査に協力するなと言われているのにもかかわらず無視して捜査に協力しているのに、病院側からは何のお咎めもないし(バレていないだけ?)、取調室で刑事からは“容疑者に触ってはいけない”と言われていたにもかかわらず接触しまくりなのに、刑事からは何も言われない。

また、この女性看護師は心臓の大病を抱えていることを隠して働いていたわけで、そういう人間が患者の生死に関わる看護師という仕事をすることは問題なんだから、それを隠していたことに関するお咎めが何もないのはなんだかなとも思う。

結局、病院側は彼女を解雇すると、“連続殺人鬼”だった看護師の男のことを捜査当局やマスコミ、他の病院などにベラベラと話されてしまうから、口封じのために解雇しなかったっていうことなのかな?

まぁ、看護師という医療従事者ですら健康保険に入れない米国というのは、本当、酷い国だなとは思ったけれどね。

1年に1回も利用しない可能性もある病院のために、事実上の税金である保険料を取られることは許せない的な発想の米国人が多いから、いつまで経っても、いざという時に大金を請求されるハメになるんだよね。

ただ、演技に関しては大絶賛したいと思う。

病を抱えるシングルマザーで犯罪にも巻き込まれてしまった看護師を演じたジェシカ・チャステインは不安げな表情がうまく出ていたし、“連続殺人鬼”の看護師を演じたエディ・レッドメインに関しては、前半は善良そうな看護師に思わせておきながら、ことの真相が明らかになるにつれてサイコな部分も見せてくるし、本当にうまい!
取調室で“I can't”というフレーズを何回も連呼するシーンがあるが(何回言ったか数えられなかった)、このシーンだけでも賞レースを賑わせることは間違いないと思った。本当、鳥肌ものだった。

タイトルの「グッド・ナース」というのは、病院側の隠蔽で問題行為がなかったことにされた一見善良そうに見える看護師のことなのか?問題行為はなかったけれど病気でいつ治療行為中に体調を崩すか分からないという爆弾を抱えている“ヒロイン”の看護師の方なのか?皮肉なタイトルだよね。
患者からしたら、どちらもバッド・ナースだけれどね。

医療ミスと言えば、約11年前に他界した祖母の死も医療ミスのような気がして仕方ないんだよね…。

確かにかなり辛そうにはしていたし、まるで死を意識したかのような不思議な行動も見せていた(こっそりとコツコツためていた小銭がどっさりと入っている箱を見せてきた)。
でも、病院に搬送されて、わずか数時間で亡くなるのは早すぎると思うんだよね。個人的には最低でも数ヵ月はもつと思っていた。
しかも、搬送されて急に容態が悪化→落ち着いたので帰宅してくれと言われる→また悪化という流れだからね…。
突然の死で病院を問い詰める気力もなかったけれど、葬儀を終えて冷静になって考えてみると、医療ミスとしか思えなかったんだよね…。

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それにしても最近、気になる映画を自分のスケジュールに合う時間帯で見ようとすると、都合の良い映画館がヒューマントラストシネマ渋谷しかないっていうケースが多い気がする。
今年の夏以降、本当、行く機会が増えた…。
結局、シネコンにしろミニシアターにしろ、一部の売れ線作品以外は上映回数が少ないからこうなるんだよね。

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