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ナイアド ~その決意は海を越える~

毎年、秋から年末にかけての恒例行事となっているNetflix配信映画の劇場での先行上映、今年のラインナップはこんな感じだ。

「Fair Play/フェアプレー」
「ナイアド ~その決意は海を越える~」
「ザ・キラー」
「マエストロ:その音楽と愛と」

4本しかないという量の面でも、現時点での下馬評でアカデミー作品賞にノミネートされそうな作品が「マエストロ」の1本しかないという質の面でもかなり地味なセレクションと言っていいのではないだろうか。作品賞候補には入らなくても、主要部門ノミネートの可能性が高そうという作品まで含めても本作が加わるくらいだ。

「ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男」(邦題の中に「」があるせいで変な表記になった)や「メイ・ディセンバー」(日本でのネトフリの配信予定には入っていないが)のような賞レース向きの作品や、ジュリア・ロバーツ主演の「終わらない週末」や「チキンラン」の続編「ナゲット大作戦」といったシネフィル以外にもアピールする作品を何故、ラインナップに加えないのか理解できない。

そんなわけで、こんなショボいラインナップなので今回の4本全てを見なくてもいいかなと思ったりもしていた(去年の上映作品も全部見なかったし)。だから、本作も無理して見なくてもいいかなという気分だったが、たまたま、ハシゴ鑑賞する上でうまくスケジュールがはまる作品がこれしかなかったので見ることにした。

結論から言うと見て良かった。

事前に自分が仕入れていた情報から判断して見る前は“どうせ、米エンタメ界の行き過ぎたポリコレ・フェミ至上主義の映画でしょ?”と思っていた。

実際、はっきりとは言及されてはいないけれど、アネット・ベニング演じる主人公ダイアナ・ナイアド(実在の人物)がレズビアンであり、彼女がそうした性的志向になったのは、母親にDVを働いていた父親や、自分に性的虐待を行った水泳のコーチのせいで男性不信になった面があると推察できるような描写もある。

また、デートや性的関係を結ぶ相手ではないようだが、ジョディ・フォスター演じる親友とのレズビアン一歩手前の関係もそうしたポリコレ・フェミ的な要素だと思う。

そして、いかにも初老女性といった風貌のアネット・ベニングにしろ、日本で言えばバブルを経験したアラ還女性といった雰囲気のジョディ・フォスターにしろ、老いを否定しないビジュアルで出てくる、つまり、ルッキズム批判の作品だから、ポリコレ・フェミ至上主義者が絶賛することは間違いない。

そうした視点の評価から本年度のアカデミー賞でアネット・ベニングが主演女優賞、ジョディ・フォスターが助演女優賞にノミネートされる可能性はかなり高いと思う。ジョディは助演というレベルではない出番の多さだけれどね。

ちなみに、1991年度のアカデミー作品賞受賞作「羊たちの沈黙」主演時のジョディ・フォスター、同じく同年度の作品賞候補作「バグジー」出演時のアネット・ベニングはアラサーの美人女優だったが、その2人がこうして、老いを隠さずに名演を披露しているというのはエモいものがあるよね。

それはさておき、本作は単なるポリコレ・フェミ映画ではなかった。

というか、そうでない要素の方が多い。ぶっちゃけ、これはスポ根ドラマだ。しかも、暑苦しいし、最後には感動してしまうという王道系の作品だ。
何度も失敗してもめげずに挑戦するなんて、王道中の王道だよね。約30年ぶりの挑戦開始までやけに話が順調に進むなと思ったらすぐに失敗する。それで再挑戦を重ねるうちに仲間たちともいったんは決裂する。でも、やっぱり、あんたのことは見捨てられないよと最終的にはチーム一丸となる。本当、ベタベタな展開だ(実話だけれど)。

そして、ジャニス・ジョプリンやニール・ヤング、ロイ・オービソンなど主人公世代がリアルタイムで接してきたアーティストの名曲がここぞという場面に流れるのも音楽ファン的にはたまらない。

ポリコレ・フェミ映画だと思い込み、鑑賞を避けることは非常にもったいないと思う。

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