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無聲 The Silent Forest

台湾映画を見たのって久しぶりだ。
久しぶりになった理由は新型コロナウイルスのせいだと思う。

それはさておき、最近、日本のテレビ局は新型コロナと略していうのがデフォルトになっているが、これって単にフルで言うと尺を食うのがイヤだから縮めているだけとしか思えないので、日本のテレビ局が本気でコロナ対策を訴える気があるようには到底見えないよね。

話は戻るが、コロナ禍になって、映画の公開スケジュールが変更されるのは日常茶飯事となってしまった。その結果、元々その時期に公開予定だった作品と、コロナの影響で公開日程が再設定された作品が同時期に公開される公開ラッシュ状態がこの1年半ほど続いている。
なので、どうしても上映館数や上映回数が少ないアジア映画は後回しになってしまい、なかなか見に行く機会がないのが現状だ。

話はまたそれるが、アジア映画って言い方おかしいよね。日本だってアジアなんだから、日本映画もアジア映画だしね。まぁ、戦前から日本人は自分たちをアジア人だと思っていないところはあるけれどね。
英国がEUを離脱したのもこれと同じ発想かも知れない。英国人は自分たちをヨーロッパ人とは思っていないんだろうね。その辺がいわゆる島国根性ってヤツなのかな。

再び話を元そう。なので、台湾映画を見たのは2019年秋に日本公開されたアニメーション映画「幸福路のチー」以来となる。コロナ禍になって初の台湾映画鑑賞だ。コロナ禍になってから日本公開された台湾映画で見たいと思った作品は何本もあったんだけれど、なかなかスケジュールが合わなかったからね。本作も年明けて間もない頃の公開本数の少ない時期だから、何とか見に行けたって感じだったしね。

個人的には台湾映画には強い親近感を抱いている。東アジアの国や地域の中では一番、日本映画に近い感覚で見られると思っている。
街並みや服装など文化面で言えば、一番近いのは韓国のはずなのに、韓国映画は外国映画にしか見えない。中国映画は当局による検閲などもあるせいか、やはり、異なる世界の作品という感じがする。最近はほとんど独自性が薄れてはいるが、香港映画は90年代までは外国映画というよりかは洋画と言ってもいいくらいだった。

でも、台湾映画は違うんだよね。台湾は親日とよく言われるし、中国や韓国を嫌うネトウヨも台湾は大好きだったりするから、やっぱり、多少の文化の違いはあれど、根底には通じるものがあるんだろうね。まぁ、“国土”面積の差はあるけれど、同じ“島国”ってのもあるのかな?
でも、香港も島だけれど、そこまでの親近感はないからね…。まぁ、距離で言えば、台湾の方が近いし、文化的には沖縄あたりにも近いし、スイーツの味は日本人好みだし、そういうのも影響しているのかな?

作品自体は想像以上にヘビーな内容だった。とはいえ、淡々と進むというわけでもないし、難解な構成でもないので退屈だと思うことは全くなかった。

校内の多くの女子生徒が年がら年中、男子生徒にレイプされまくっていて、その女子もいつの間にかそれに慣れてしまっているという部分だけを見ると、まるでAVみたいな世界観の話に思うかもしれないけれど、本作はそれだけじゃないんだよね。

女子生徒をレイプする男子生徒も他の男子生徒からの性的暴行の被害者だったりする。
それどころか、他の生徒を使って男女問わず性的暴行を加えさせている首謀者の男子生徒も教師から性的虐待を受けていたんだから、本当、救いのない話だ。しかも、実話を基にしたストーリーなんだから、日本のAVなんて単なるファンタジーでしかないと思えてくるほどだ。

しかも厄介なことに、ヒロイン役の女優が可愛いせいで、校内で蔓延する性的虐待を隠蔽しようとする学校を批判する社会的な作品のはずが、見た者に性的興奮を与えてしまうんだよね…。

ほとんど、校内でやりまくりのAVを見ているような気分になる。

しかも、男同士の関係もあるし、おっさんと少年の関係もある。ヒロインは可愛いし、主人公はよく見るとイケメンだし、首謀者も問題を解決しようとする教師もイケメンだ。果たして、この作品を見て、性的虐待は良くない、いじめは良くないと本気で実感できる観客はいるのか、非常に不安に思った。

多分、オタク属性のある男のほとんどは、あのヒロインのルックスって好みだと思うぞ!

とりあえず、台湾の学校も日本の学校同様、不祥事が起きた際の隠蔽体質が酷いってことは本作を見てよく分かった。こういうのって、東アジア共通なんだろうね。
レイプをいじめと言ったり、いじめを悪ふざけと言ったりして、少しでもことを小さく見せようとするところなんてそうだよね。しかも、大元のきっかけは教師だったわけだから、教師の不祥事を隠そうとするところなんて、まさに隠蔽体質の極みって感じだしね。
こうして、何事もなかったように思わせる隠蔽体質が結局、いじめなど学校での不祥事がなくならい原因なんだろうね。
やっぱり、いじめる側に立った人間は、実行犯だろうと、唆した首謀者だろうと、周囲で囃し立てた連中だろうと、教師だろうと、生徒だろうと、再起不能になるくらいの罰則を与えるべきだなと思った。

ところで、本作はろう学校が舞台となっているが、障害者が性的被害を受けるケースって、どこの国でも多いんだなということも改めて実感した。
それと同時に障害者=特別な才能を持った天使みたいには描かず、障害者にも悪い奴は多いというのをきちんと描いていたことも共感できた。
何しろ、レイプされる女子生徒もレイプする男子生徒も、性的暴行を受ける男子生徒も、その男子に性的暴行を働く男子生徒も障害者だからね…。

それにしても、暴行を受けた人間が別の者に暴行を働くというのは本当、負の連鎖だよね。親から虐待を受けて育った者が自分が親になると、今度は自分の子どもに虐待するとか、部活で先輩からしごかれて嫌な思いをした者が自分が先輩になると、今度は後輩をしごくといったのと同じなんだろうね。

被害を受けている最中は、こんな思いをするのは二度とごめんだ、こういう思いをする人間がこれ以上増えて欲しくないと思うけれど、いざ、自分が被害者のポジションから抜けるチャンスが来ると、結局、保身のために自分がやられて嫌だったことを他者にしてしまうってことなのかな。
本作の主人公がヒロインを守るために、別の男子生徒に性的暴行を加えるシーンもそうだし、首謀者の男子生徒がそもそも、教師から性的虐待を受けていたのもそうだよね。

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ところで本作をアップリンク吉祥寺で鑑賞したが、オンラインでチケット購入が年末からできなくなったまま、いまだに復旧していないのは何故?

クレジットカード会社との決済システムにトラブルみたいなことを言っているが、個人情報を流出させたのか?それとも、アップリンクがクレジットカード会社に払うべき手数料の支払いが滞っているのか?あるいは、反省の色が全く見えない代表の浅井隆に対してクレジットカード会社が経営を不安視し取引を停止しているのか?

もしくは、アップリンクの運営が自転車操業状態で、入金されるまでに時間がかかるクレジットカード払いではなく、その場で金を手にできる現金払いを進めようとしているのか?

いずれにせよ、浅井によるパワハラ・セクハラといった反社会的言動によってアップリンクに対する信用が低下した結果なのだから、渋谷のみならず、吉祥寺も閉鎖することになったとしても自業自得としか思わないけれどね。

それにしても、最近は、シネコンのみならずミニシアターでも複雑怪奇な番組編成になっていて、1日1回とか2回しか上映されない作品も増えている。
かつてのように一日中同じ作品を上映していれば、直接劇場で当日券を購入しに行っても、目当ての回が売り切れでも次の回まで待てばいいかとなったけれど、1日1回の上映だと、いざ、劇場に行った時に売り切れだったら、無駄足もいいところだからね。
しかも、1日に複数作品を上映しているから、窓口に並ぶのは必ずしも自分が見たい作品と同じものを鑑賞しようとしている人とは限らない。当然、窓口は混みやすくなってしまう。下手すると、混み方によっては本編上映開始までに入場できないことだってある。その辺を全く考慮していないんだよね。

しかも、コロナ禍になってからアップリンクはスタッフの目視による入場券の確認をしなくなっている。これは感染症対策もあるけれど、それと同時に人員削減の意味合いもあったはずだ。だから、これまでアップリンクはオンラインチケットの購入を進めてきたわけだしね。

なのに、オンライン購入がなかなか再開されないということは、アップリンクの運営がかなり厳しいと思われても仕方ないんじゃないかなと思う。

まぁ、アップリンクが閉館されても全然同情しないけれどね。

そもそも、ミニシアターって上から目線のところが多いよね。
岩波ホールの閉館発表に対して中高年映画ファンが“残念だ!”との声を上げているけれど、個人的にはつぶれて当然でしょって感情しか湧かないけれどね。

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以前、ここで上映される作品の関係者の来日インタビュー取材をしたことがあるんだけれど、インタビュー収録中に、ここのお偉方が割り込んで入ってきて、突然、この取材対象者に話しかけてきたからね。本当、ふざけんなって思った。

自分は映画業界の大物だから何をしてもいいと思っているんだよね。
普通だったら、ありえないことなのに、日本映画界、ミニシアター界のドンだから、宣伝会社や配給会社は何も言えないんだよね。その来日ゲストですら、その空気を察して、この勘違いババアに大人の対応をしていたくらいだしね。

なので、そうした上から目線の商売をしているところは何かのきっかけで営業が傾けば、一気に下降してしまうんだよね。

ミニシアター系ではないが、コロナ禍になって、日本でディズニー映画の存在が薄くなったのもそう。

もっとも業界最大手の東宝なんて上から目線の極みだけれどね。でも、東宝くらいの寡占率だとそう簡単には崩れないからね…。

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それにしても、蔓延するいじめや性的虐待の被害を隠蔽しようとする学校を描いた映画「無聲」をアップリンク吉祥寺で上映するって自虐的ギャグか?


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