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第7話:つわりと闘う妻。キムチを食べたくて泣いた夜「アフリカから帰ってきたニート夫と娘の成長期

あの夜、妻はキムチが食べたすぎて、泣いた。

つわりがきつくて、吐き気が凄すぎて、ではなく、キムチが恋しくて泣いた。

今となっては笑い話だが本人は至って本気だ。妊娠すると体の変化だけではなく、ホルモンバランスの変化によって心にも影響が現れるようだ。
うちの場合は、比較的軽い方だったみたいだが、毎日吐き気と怠さに悩まされるのは想像以上にキツい。

特にきつかったのは食事だ。
妻の場合、ジャンクフードや辛いものが食べたくなり、水が飲めなくなった。
人によって味覚に変化は違うのだが甘いものを欲しくなれば女の子、しょっぱいものなら男の子が生まれるという迷信もあるようだ。うちの場合は女の子なので、本当にただの迷信だったようだ。

幸いにもポカリの粉を持っていっていたので、水の代わりに飲むことができた。数日間は。
まさか水が飲めなくなるなんて思ってもいなかった僕らは数袋しか持ってきていなかった。

まずはポカリの代わりとなるための経口飲料水を作ってみた。砂糖と塩、そこにライムの果汁をひと垂らし。マドラーでくるっと一混ぜすれば、特製ポカリの完成だ。ひと口味見をしてみる。

うん、クソまずい。
とてもじゃないが飲めたもんじゃない。
ポカリの神様は僕に微笑まなかった。

妻に献上してみるが反応はやはり一緒だ。ホルモンバランスの変化くらいでは受け入れられない不味さだった。

しかし水分を取れないのは死活問題なので、そこから飲み物探しの旅に出ることになる。気分はさながら砂漠でオアシスを探すさすらいの旅人だ。
仕事終わりに数軒のスーパーに立ち寄り手当たり次第に飲み物を買い漁る。果汁100%であれば飲めそうと言えば、スーダンにある全ての種類の果汁100%ジュースを購入した。
メーカーによっては飲めたり飲めなかったり。ある日は飲めたけど違う日は飲めなかったり。お陰で僕も不足していたビタミンCを摂取することができた。棚からビタミン、棚ビタだ。


僕はすっかり忘れていたのだが、ある日妻が「夜ご飯はピザにしたい」と言ったが、僕はその日の昼に同僚とピザを食べていたため嫌だと断った。

その言葉を聞いて妻は泣いたらしい。ピザピザと涙を流す妻が言うにはホルモンバランスで感情が抑えられなくなるらしい。一方でそれほど辛いつわりだが、一時期もしんどい期間を越えれば記憶から薄れるようになっているらしい。つわり中は「妊娠なんてしたくなかった」と言っていたが、今ではもうケロッとしている。次の世代に繋げるための遺伝子レベルの偉大なシステムだ。

よく「結婚して子どもが生まれて妻は変わってしまった」という旦那さんがいる。
そりゃそうだ。
お腹の中でお腹の中で子どもを育て、命懸けで出産しているのだ。変わらない方が不思議だろう。他にも食中毒や栄養バランス、カフェインの有無、カロリーなども今まで以上に気を遣いながら食事を摂るようになる。子どもがいれば自分の命に変えてでも子どもを守らなけばならない。付き合っていた頃とは何もかも状況が違うのだ。

あえて僕に向けてこの言葉を書いておく。
「お前も変われ」


第7は以上となります。今日も読んでくださりありがとうございます!
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末筆ではありますが、そのべゆういち様、素敵なお写真をサムネに使わせて頂いております。ありがとうございます!

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