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最強のビートルズ遺伝子、フェイマス・グルーピーズにロング・インタビュー

ウィングスの通算6枚目のアルバム『London Town』収録曲から拝借したプロジェクト名や、同じくウィングスのセカンド・アルバム『Red Rose Speedway』を大胆にパロったジャケなど、生粋の〈ビートルマニア魂〉が隅々まで行き届いたスコットランドはグラスゴー出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、Kirkcaldy McKenzieによるソロ・プロジェクト、フェイマス・グルーピーズ。そのファースト・アルバム『REHEARSING THE MULTIVERSE』と、新たに未発表トラックや別ミックス、デモ音源など全15曲のボーナス・トラックを加えた2枚組のデラックス版『リハーシング・ザ・マルチヴァース・エクスパンデッド・エディション』が、ディスクユニオン界隈で売れに売れているという。

こちらの動画を観ていただければ、それも納得してもらえると思う。ギターとベースのユニゾン・リフがウィングスの「Rock Show」を、途中のサックス・ソロは「Mrs. Vandebilt」を彷彿とさせ、歌詞には『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に登場する架空の人物ビリー・シアーズをフィーチャーする芸の細かさ。ガチもんのパロディ・バンド、ラトルズの昔から始まって、エミット・ローズやジェリーフィッシュ、最近ではレモン・ツイッグスやトバイアス・ジェッソ・ジュニアなどビートルズの遺伝子を汲んだバンド/ アーティストは数多あれど、ここまで強烈なポール・マッカートニー・フォロワーは久しぶりにお目にかかった気がする。

そんなフェイマス・グルーピーズのライナー解説を、僭越ながら僕が担当させていただき、そのためのメール・インタビューも行うことができた。ディスクユニオンさんのご好意・ご協力により、ここではその完全版をお届けする。アルバムのインナースリーヴによれば、アルバムに収録された全ての楽曲は60〜70年代、有名無名問わず多くのアーティストのゴーストライターを務めていたKirkcaldyの祖父、Patrick "Paisley" McKenzieが書いたものだという。

これらがもし本当にKirkcaldyの祖父が残した曲だとしたら、彼がゴーストライターとして楽曲を提供していた「世界的有名アーティスト」って、ひょっとしてポール……? なんて、「ポール死亡説」に勝るとも劣らない陰謀説まで生まれてしまいそうな、そんなフェイマス・グルーピーズことKirkcaldy McKenzieの全貌(?)に迫るインタビューをお楽しみください。

僕ら兄弟は子供の頃、60年代と70年代の音楽しか知らなかった

──本作『REHEARSING THE MULTIVERSE』のインナースリーヴによれば、ここに収録された楽曲は全て、1970年代にゴーストライターをしていたあなたの祖父が残した未発表曲だとか。

Kirkcaldy McKenzie:うん! 僕の祖父は1960年代から1970年代にかけて、とても才能のあるミュージシャンでありソングライターだったんだ。1980年代にも少し書いてはいたのだけど、彼が最も働いていたのは1966年から1979年までだった。

元々は1960年代初期、地元スコットランドのアーティストたちに楽曲提供をしていたのだけど、その後イングランドに渡ってレコーディング・セッションに参加したり、新人アーティストのための楽曲を書いたりしていた。それこそ何百もの楽曲を遺したのだけど、その中から今回、『REHEARSING THE MULTIVERSE』用に数曲をセレクトした。中には未完成だった曲もあったから、それは残りを僕が仕上げてレコーディングしたんだ。

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