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生贄にされた羊の話。

この砂の一粒のような私のnoteでも、多少なりとも見ていただけている記事がある。それが、アーティストの林菜穂さんが、東京藝術大学大学院修了展で見せてくれた「昨日の今日のあしたの日」という展示を観たことの感想のような駄文「羊をめぐる考察。」だ。実は、私のnote記事の中で、全期間を通してダントツのビューを誇っている。

その後も林さんの展示の話は見聞きしたし、ぜひ、観たいと思っていたのだが、すっかりコロナ引っ込み思案となり、さまざまな展示から足が遠のいていた。

少しリハビリを兼ねて、ギャラリーや展覧会に足を運び始めたここのろころ、身近なギャラリーに林さんがかかることを知った。これは迷いなく行くことに決めた。

実は、林さんの修了展を観たあと(もうそれは2020年の話だ)、ギャラリーのオーナーと、東京藝術大学の卒業・修了展を振り返りながら、いろいろと気になった作家さんの話をしていた(これがいつも無性に楽しい)。

そしてこのときは、林さんが良かったという話で盛り上がった。それ以来、ぜひとも、このギャラリーで展示してほしいなぁと思っていたのだ。このギャラリーは継続して作品を展示していく独特のスタイルをとっているので、それが可能な作家さんとそうではない人がいる。

だからやっときたか!という感じで、飛びついた。

林さんの画には独特の“翳”がある。私はそれを“邪”のようなものに感じるし、ある人は、“毒”と表現するかもしれない。しかしそれがあってこその美しさなのだ。

生贄に捧げられた羊のように、生々しく、毒々しく、人の欲が絡み、失われていく生が断末魔に見せる輝きのような儚い美しさ。

植物たちも、活力に満ち溢れているというよりは、どことなく斜に構え、やがて朽ちていく自らを受け入れているように見える。それは人が生まれたときから死に向かって歩む必然をあらためて思い起こさせるようでもある。

水彩の作品も二点あった。私にはそれは夜の街に見えたが(今、見直してみるとそうでもない 笑)、たしか画題はまったく違ったように思う。

素人の妄想はともかく、危うさを孕んだ林ワールドは今回もよかった。次のチャンスを楽しみに待ちたいと思う。

林菜穂 個展「すばらしい日々」
会期 2022年 2月5日(土)ー2月25日(金)
時間 12時ー19時 月・火・水休廊
ライズギャラリー

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