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「ベイジルタウンの女神」をみた


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ケムリ研究室(ケラリーノ・サンドロヴィッチ+緒川たまき)初公演「ベイジルタウンの女神」が素晴らしかった。

コロナ後初の舞台鑑賞。世田谷パブリックシアターの受付は以前とはすっかり様変わりしていた。手に加えて足ふきマットで靴の裏も消毒、検温、そして舞台を観に行った時にはお決まりのフライヤーの分厚い束もなく、もちろん座席は一つおき。マスク着用と、万が一感染者が出た場合に備えて連絡先の記入必須。客席は皆が私語を謹んでいるので、しん、としていた。はっきりとした暗転もなく劇がフェイド・イン、そこから、すっ、と受付の緊張は解き放たれ、心はベイジルタウンの旅に出かけた。

休憩を挟んで3時間半。笑って、演出の妙に引き込まれて、王道的展開と裏切りの程よいバランスに身を任せて、最後ホロリとして、時を忘れた。コロナ禍の苦境を超えてやっと開催にこぎつけた舞台。もしかしたら明日公演中止になってしまうかもしれない、だから一日一日を楽しんでやりきる、そんな気概と喜びが演技の端々にみなぎっていた。

感染防止のため終演後も楽屋訪問はできず。マネージャーさんに興奮気味に感激を伝えて、会場を後にした。こんなとき、コロナってやつは無粋だと、心底おもう。

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「ケムリ研究室」の二人とは長い縁がある。たまきちゃんと先日再放送されたばかりの「土曜ソリトンSide-B」で一緒に司会をしてたのは多くの皆さん御存知の通り。「ソリトン」はすでに四半世紀前の番組だが、そこから遡ること更に8年ほど?大学在学中に、大阪のライブハウスで有頂天と当時やってたバンドが対バンしたのがケラとの初対面だった。

80年代半ばの有頂天と言えば、日本のインディーズレーベルの草分け・ナゴムレコードの代表であり、ニューウェーブにかぶれたバンドで、なけなしの小遣いをはたいて自主制作シングルを500枚作った大学生の我々にしてみたら憧れの大スターだったから、しばらくバンド仲間には自慢できた(笑)。それから1〜2年経って僕がソロデビューした後に有頂天が同じレーベルに移籍してきて、レーベルメイトだったこともある。更に時が過ぎ、ケラは日本演劇界を代表する脚本・演出家になった。

今までもたまきちゃんが出演(主演)しているケラの芝居を何度か観ているので、正直観るまでは二人がユニットを組むという意味がピンと来なかったが、観終わってはっきり分かった。カーテンコールで挨拶をする彼女は、単なる主役ではない「座長」の存在感を放っていて、今までとは全く違って見えたから。コロナで変わった「何か」は、悪いことばかりじゃないのかもしれない。
旗揚げ公演大成功、おめでとう。このまま無事に、千秋楽を迎えられますように。

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そういえばこの曲、紹介してなかったか。No Lie-Sence(鈴木慶一+ケラリーノ・サンドロヴィッチ)の今年のアルバムより「鳥巣田辛男ショウ」。
語り・緒川たまき、歌・誰?


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