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アルペンスキー選手の持久系トレーニングとGS / SLパフォーマンス
アルペンスキー選手に持久系のトレーニングは必要なのか? 闇雲に走ったり、HIITをしたり、筋トレと有酸素系のトレーニングを混ぜたり、、、それって、、、本当にパフォーマンスが効率良く安全に高まっているのか?
アルペンスキーにどの様なエネルギーシステムが関わっているのか2020年の研究を基に考えます。
先ずは、人が動くにはどの様なエネルギーが必要か整理したと思います。
1.筋肉を動かす3つのエネルギーシステム
筋肉を動かす(運動する)為には、エネルギーが必要です。
エネルギーの供給システムはATP-CP系、解糖系、酸化系の3つがあります。
3つは各々が独立して働くのではなく複合的にエネルギーの供給を受けます。※2
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以前、紹介した研究に出てきたのが血中乳酸濃度です。乳酸は解糖系の代謝産物として産生されます。
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「全身持久力」を改善するのか?「局所持久力」を改善するのか?目的を明確にしてトレーニングしましょう。
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持久力に対する生理学的知識が整理されたところで、アルペンスキーを対象としたエネルギー機構の研究を基に考えてみましょう!!
2.アルペンスキーには持久系のトレーニングは必要か?
2020年にフランスから発表された研究です。
この研究をみると、
GSには有酸素代謝系エネルギー機構(酸化系)がメインで働きそうです。
SL(特に長いSL)では乳酸系(解糖系エネルギー機構)の能力が必要そうです。
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背景
アルペンスキー選手(トレーニングを積んでいる)のSL(スラローム)、GS(ジャイアントスラローム)のエネルギー機構の要求量について調査しました。
対象
アルペンスキー選手(トレーニングを積んでいる)
8名(年齢:18.2±0.8歳、身長:1.72±0.10m、体重:65.8±12.0kg)
コース
短いSL(SL ST)/長いSL(SL LG)
長いGS(GS ST)/長いGS(GS LG)
手順
血中乳酸をスタート直前とゴール3分後および5分後に測定しました。酸素摂取量と心拍数を記録。
有酸素系エネルギー、解糖系エネルギー、ホスフォゲンエネルギーと各エネルギーシステムの貢献度を推定しました。
結果
・GSST(43.9 ± 5.7%)およびGSLG(48.5 ± 2.5%)では有酸素代謝系が主要なエネルギーシステムとして関与していた。
・SLSTとSLLGでは、酸化系代謝経路と解糖系の寄与に大きな差は認められなかった。
・血中乳酸濃度のピークは GSST(8.01 ± 2.01 mmol-L)より SLLG(11.10 ± 2.41 mmol-L)の方が高かった。
・GSSTとGSLGの間で酸素摂取量ピークに差はなかった。
Journal of Strength and Conditioning Research: August 2020 - Volume 34
コースの強度(雪面コンディション、斜度、ポールセット、天候)により結果の変化は多少なりともあると思います。
3.まとめ
もちろんATP-CP系(ハイパワー)も外力に対するのに必要です。
解糖系(ミドルパワー)の基礎となる筋グリコーゲン量や外力に対するハイパワーは筋力トレーニングで高める事が可能です。
研究からもわかる様にSLとGSに必要な解糖系、酸化系といった持久的パフォーマンスはアルペンスキーに必要不可欠です。
それ以外でも、「スキー競技の基盤となる能力」「高いパフォーマンスの維持」「たくさん練習出来る」「高所・寒冷地への対応」と解糖系・酸化系を高めるメリットはたくさん見当たります。
トレーニング時のコツとしては、
①持久力の何がパフォーマンスの阻害要因で何の能力を高めたいのか意識したトレーニングプログラム
②持久系トレーニングと筋力トレーニングの干渉を最小限に抑える
ことがポイントとなります!!
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適切なトレーニング日程やコンカレントトレーニング。
ウェイトトレーニング時の工夫やHIITのプログラミング。
などなど企業秘密?(笑)ですがその内コチラのnoteで記事に出来たらなと思います。
※1乳酸をどう活かすかⅡ(八田秀雄、杏林書院、東京2016)
※2アスレチックパフォーマンス向上のためのトレーニングとリカバリーの科学的基礎第8章(平山邦夫 分光堂)
フィジカルコーチ 大野高峰
ジュニア〜シニアスキーヤー/スキービギナー〜全国大会入賞などの競技スキーヤーや技術選プレーヤーをグループ指導やパーソナル指導する中で私が経験し勉強してきたことをお伝えできたら幸いです。
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日々の活動で考え、感じたことを共有します!! 大学や高校の部活動にてフィジカルコーチ(トレーナー)として活動しています。都内のジムでパーソナルトレーニングの指導も行ってます。特にスキー選手を指導する機会が多く、私自身も元アルペンレーサーです。