見出し画像

アルペンスキー練習中のリカバリー戦略

練習の質を高めることは非常に大切です。

1日最後の1本まで疲れずに(高いパフォーマンスで)滑ることが出来たら、練習の質は上がります。

しかし何本も繰り返し滑ることで、中枢・末梢ともに疲労は蓄積します。
疲労をコントロールするには?

練習の滑走間に低強度アクティブリカバリーを行うことで疲労が蓄積しづらくなるかも!
という研究を紹介します。

背景
筋肉から乳酸を除去する能力は、末梢疲労を遅らせパフォーマンスを維持するために重要である。アルペンスキーにおいて、血中乳酸除去を促進し、疲労を遅延させるための滑走間のアクティブリカバリー の重要性はまだ明らかにされていない。そこで、レーサーのトレーニングセッションにおいて、滑走間の低強度有酸素性アクティブリカバリーが血中乳酸除去と疲労に及ぼす影響を検討した。

対象
現役アルペンスキーレーサー
・男子
7名,年齢18.0±1.1歳,83.1±7.1kg,184.3±4.8cm
GS 平均FISポイント41.6 ± 10.6
・女子
7名,年齢18.5±1.5歳,63.8±4.2kg,166.4±3.6cm
SL 平均FISポイント42.9 ± 17.4

コース

標高2,600m、斜度約35%。男子のポールセッティングは、半径26.5mの25ゲートのGS。女子のポールセッティングは、半径9mの45ゲートのSL。

手順
8本滑り、各スタート前にトレーニングコースの頂上で、アクティブリカバリー (ACT)を行うグループと静的回復(CON)を行うグループにランダムに分けて実施。血中乳酸値と自覚的疲労度をスタート前とゴールしてから2分以内に測定した。また、滑走タイムとDNFの割合も記録した。リフトの乗車時間は6分。
ACT群は、スキーを脱いでトレーニングコースの頂上でポールを使って腕を動かしながら3分間、ゆっくりから中程度のペースで歩いた(3分間で250m)。
CON条件では、3分間、コースの頂上でスキーを履いたまま静止した。回復のための介入後、コース上部の計測を行い、その後トレーニングランを開始した。

結果
血中乳酸濃度は、一本目のスタート前では有意差がなかったものの、1本目の
ゴールでは群間で有意差が観察された。

CON群では完走率が低下した。最後の2本の滑走で、CON群では合計8本のDNFが記録されたのに対し、ACT群では0本であった。
ACT群では、血中乳酸濃度の低下、滑走タイムの短縮、DNFが少なかったが、これらは疲労感の軽減とは一致しなかった。また、疲労感は1~8本目まで増加し、どのランにおいても実験群間の差は認められなかった。
ポールを使用した3分間の適度なペースでの歩行が、静的回復と比較して、血中乳酸除去を高め、パフォーマンスを向上させるのに有効であることが示された。

White, Gillian ; Wells, Greg .Journal of Strength and Conditioning Research: 
March 2015 -Volume29 - Issue 3 - p 800-806
Figure1:スタートでの血中乳酸濃度
Figure2:ゴールでの血中乳酸濃度

いかかでしたか?
練習後のコンディンショニングトレーニングでは低強度の運動(ランニングやバイクなど)で血中乳酸濃度のコントロールを行うことは多かったかと思いますが、
今回は練習の滑走間についてでした。

標高の高さや気温で血中乳酸濃度もかなり変わるので、全ての練習に当てはまるとは思えません。
標高が高く気温が低く40秒以上のコースでは関係ありそうですよね。

興味深いのは、

  • スタート前のウォームアップは有効
    3分間の低強度運動(ACT群)はスタートで何もしてない(CON群)と比較してゴールでの血中乳酸濃度に有意差があったことです。
    スタート前のウォームアップはゴールまでパフォーマンスを維持するのに有効な手段になるでしょう。

  • 滑走間のアクティブリカバリーは中枢疲労より末梢疲労に効果あり
    疲労感についてはACT群、CON群で優位差はなかったです。ただ、血中乳酸濃度では有意差がありました。研究では、完走率と滑走タイムにポジティブな効果がありましたが、どの程度関与しているかはもう少し検討の余地がありそうです。

今後は、

  • アクティブリカバリー のタイミング。ゴールVSスタート、時間?

  • アクティブリカバリー のプロトコル。ダイナミックストレッチVSランニング

  • 実際のパフォーマンス(タイムやDNF)との関係。

  • 多種目では?スーパーG、ダウンヒル

ここの辺りがどうなのか知りたいところです。

もちろんリカバリーといっても栄養や水分、睡眠、精神など多岐に渡ります。
私も引き続き現場で様々なリカバリー方法を試してみます。

こちらの本でリカバリーについて基礎的な事が学べます。

疲労と乳酸についてはコチラが分かりやすいです。

フィジカルコーチ 大野高峰ジュニア〜シニアスキーヤー/スキービギナー〜全国大会入賞などの競技スキーヤーやナショナルデモをグループ指導やパーソナル指導する中で私が経験し勉強してきたことをお伝えできたら幸いです。
リンク←詳細やお問い合わせはこちらからお願いいたします。

日々の活動で考え、感じたことを共有します!! 大学や高校の部活動にてフィジカルコーチ(トレーナー)として活動しています。都内のジムでパーソナルトレーニングの指導も行ってます。特にスキー選手を指導する機会が多く、私自身も元アルペンレーサーです。