読書感想文:不義密通〜禁じられた恋の江戸


不義密通 禁じられた恋の江戸  
氏家 幹人 著

講談社選書メチエですな。
一言で言って、分量はあったのですが、食い足りなかった。何かが。
っていうか、この人の本を読むのは2冊目ですが、どちらもそうでした。

書評とかで、よく、事例だけを上げて、分析が足りないといわれているけれど、いやまったくその通り。
事例だけを並べて読ませるやり方もありますが、なんというか、構成をもうちょっときちんとしないと、氏家氏本人が何を見て何に興味を持ってこの本を出したのか良く分からない。

論じるというのは、述べると違うとしつこく言われたものだが。
述べる本を読まされた気分です。

それはそれとして、内容として印象に残ったのは、江戸時代の法に規制された男女の関係式が、政治的統制の手段でもあったという事実だな。まあそれも歴史だけど。
色々事実が不快なんだけれど、そんな事実があったということを否定してもあまり意味はない。

とまれ、なんかこれは書いておかなきゃと思ったのは、すぐにこの人が姦犯だのなんだのを引くところ。要するに、それは刑法判例集だろう。
それを持ってして一般社会を論ずるのはいかがか。
今だって、刑法犯罪を犯して収監されている人々の倫理的生活は滅茶苦茶だが、それをもってして、平成の日本人を語られてもたまるまい。

書類に残る事例は、書類に残るような事例なのである。 

(2008/9 読んだと言う記憶が鮮明に残っている本である。ただ、ちょっと犯罪の判例集を一般化する向きが強くて食傷した模様。題材としては非常に興味深いのではあるが、不義密通が題材故に判例集を持ってくるのもまた、分からぬではないけれど、実際には裁判にならなかったものも多いだろうしなあ。割引で読めば良かったのか?)

Amazonは洋泉社しか探せなかった


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