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私の爪は縦にたくさん線が入っている。
調べてみると不健康やらカルシウムが足りないと出てくる。

私は幼い頃から爪をかじっていた。
両手全部の爪である。
1本1本短く常にかじっていたので、私の爪は他の人から見ると常に深爪で、いつも痛そうな爪だねと言われていた。
ほとんどの指の爪は普通の人の半分ぐらいの大きさだった。
それでもかじることをやめられず、毎日、常により深く噛んでいた。
常に深爪状態の指はいつも痛くて、じんじんしていて血が滲むこともあった。
その指で幼い頃から習っていたピアノをガンガン弾いていた。

今、思うとその痛みがあまりに日常的だったので、痛いという感情すらおこらなかったのかもしれない。
その時は無意識に、痛いと言う事で生きている事を実感していたのだろうか。

高校生になっても大人になってもかじることはやめられずにいた。
小さい頃から電車の中でも爪を常に口に入れていないと落ち着かない人間だった。
両親にはみっともないからやめなさい。と何度も注意されたり、欲求不満だと思われるとよく言われた。

大人になってもやめなかったその癖が、ある日突然に無くなった。
なぜだかわからないが、爪に対して興味が急に無くなったのだ。

それまで短かった爪がどんどん伸びてくる。
しかし、ずっと常にかじっていたせいか私の爪は弱々しくて、指で触るとすぐに曲がってしまう。
ふにゃふにゃの爪だった。

爪を噛むのをやめて、そろそろ10年になるが、最初に言ったように縦にたくさん線はあるし、ふにゃふにゃは相変わらずだ。
何かに引っ掛けたり、缶ジュースやツナ缶などの蓋を開けただけでも爪が割れてしまう。
縦線を隠そうと爪磨きをしても、線が強すぎて全然平らにならず、よけいに線がくっきりしてしまう。

先日、思い立って爪の補強美容液なるものを買ってみた。
マニキュアのように塗るタイプ。
実際に塗ってみるとぼこぼこだった縦線は薄く目立たなくなり、爪もツヤツヤ、補強もされて爪が固くなった。
さらに、爪のことで今まで酷いことばかり言われてばかりで褒められた事が無かったのに、ツヤツヤできれいな爪と言われた。

今も手を見てみると、きれいにツヤツヤしている爪がある。

爪でこんなに嬉しくなったのははじめてで、爪だけの事なのに大げさに言うと、やっと人間らしくなれたような生まれ変わったみたいな気持ちになっている。

今では全く噛む気にもなれない爪を少し誇らしく感じられるようになった。

なぜ、あんなにかじっていたのか今も不明だが、癖はやめられるんだなぁと身を持って感じた。爪さんごめんなさい。これからは大切にしますそんな気持ちだ。

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