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住宅、中古も価格上昇 新築高が波及

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今回のテーマは「中古住宅価格上昇 材料高の新築から波及」です。新築が値上がりしているというニュースは最近、よく聞きます。中古の価格はどれぐらい上がっているのでしょうか。不動産会社のリストインターナショナルリアリティの仲介実績に基づく中古戸建て住宅の成約平均価格は2022年1~10月に6728万円。2年前に比べ1.5倍になりました。富裕層向けの高額別荘も含まれているため、価格が高く出ますが年々上昇しています。取引件数も2年前に比べ2倍以上に増えました。

新築マンションは高嶺の花に

新築の戸建てやマンション価格はどうなっているんでしょうか。アットホームによると東京都内で発売された戸建て住宅の10月の平均価格は前年同月と比べ12.5%の上昇。一方で新築マンションの平均価格は9365万円(不動産経済研究所調べ)。こちらは10.8%の上昇で、戸建て、マンションともに2ケタの伸びです。

日本人の平均年収は445万円。マンションだとざっと21年分ということですね。一般的に購入できる住宅の価格は年収の5倍から7倍ぐらいが目安と言われています。普通の会社員ではちょっと手が出ません。

働き方の変化も後押し

手が届きにくい新築に代わって割安な中古に人気が集まっています。さらに働き方の変化が中古物件の人気を後押ししています。リモートワークの拡大で、これまで会社に通うためになるべく職場に近い場所に住んでいた人が場所を選ばずに住むことができるようになりました。「広くて」「比較的安い」地方の中古に目をつけたというわけです。
平日は都心で暮らして、週末は地方で趣味やスローライフを楽しむ『二拠点生活』をする人が、地方で中古住宅を買い求める動きも目立ってきました。

築年数を感じさせないリフォームも

中古住宅と聞くと、設備が古くてすぐ壊れるんじゃないかという不安や、価格がどうやって決まっているのかわかりにくいという声を聞きます。実際に中古住宅の買い取り、販売をしているカチタスに取材しました。都心から電車でおよそ1時間、千葉県市原市で築31年の中古住宅を見ました。

土地面積184平方メートル、建物面積が91平方メートルで間取りは4LDKです。玄関扉や壁紙、水回りも新品になっています。「このくらいの築年数の建物ですと7割くらいは全て新品になっている」(カチタス木更津店の今野拓也店長)。確かに見た目はほとんど新築と変わりません。清潔で暮らしやすそうです。物件価格は約1800万円。今野店長によると「周辺エリアで同じ規模の新築よりも1000万円ほど安い」。

ここできょうの方程式です。

新築の価格上昇で比較的安い中古住宅の需要が高まった。さらにリモートワークや二拠点生活など働き方の変化によって、「広くて」「相対的に割安な」中古住宅が脚光を浴びているということです。カチタスの新井健資社長は「中古住宅の販売は『清潔』がキーワードになる」と話します。「古い家も安全性を高め、綺麗にする。こうなると新築か中古という分け方ではなくて、綺麗な家かどうかという分類になり魅力的な商品になる」

空き家問題の解消にも

中古住宅の人気は続きそうです。大手不動産会社も住宅のリフォーム事業を充実させています。住友不動産のリフォーム事業「新築そっくりさん」では住んでいる住宅のリフォームだけでなく、中古住宅を購入してリフォームするお客さんが増えているそうです。定額料金で空いている好きな家に住める「空き家のサブスク」を展開している企業もあります。

特に地方では増え続ける「空き家」が大きな社会問題になっています。住む人がいなくなり荒れていく空き家を整備し、流通させればこうした社会問題の解決につながるかもしれません。カチタスによると日本の住宅流通に占める中古の比率は14.5%。欧米の70〜80%に比べると見劣りします。家を適正に管理して長く住み続ける人が増えてくれば貴重な木材資源の有効活用にもつながります。




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