「TEDxUSH」で気づいたこと
2月18日(日)に聖心女子大学で開かれた「TEDx USH」に行ってきました。今回のイベントテーマは「波動」。TEDは2023年3月まで「ながら日経」の日曜パーソナリティだった、ちはるさんが放送のエンディングで何度も紹介していたこともあり、よく Youtubeで面白いスピーチを見ていました。実際にライブで見るのは初めて。この「TEDx USH」もコロナ禍を挟んで4年ぶりのリアル開催だそう。さまざまな分野で活躍する5人の登壇者がそれぞれの知見やノウハウを共有しました。私自身もいろんな気づきがありました。ダイジェストで紹介します。
人は「なぜ」に動かされる
トップバッターは名古屋大学院理学研究室に在学中の谷田幸貴さん。テーマは「技術や科学の魅力 身近な例をもとに」
谷田さんのスピーチは身振り手振りを交えた話し方で一気に引きつけられました。「おー、TEDらしい!」というのが私の最初の感想です。
話は「興味があるが、手をつけられない課題にどうすれば手をつけるようになるのか」から始まります。飽き性の私も物事を始めようと思って準備はするんですが、後回しにして結局始めずに終わるという繰り返しでした。
谷田さんは「大事なのは『何のためにやるのか』を意識すること」と説きます。常に「なぜ」を意識するようにしたい。
スピーチ後、司会の中川咲愛さんから「定着させるのにおすすめの方法は」という質問がありました。谷田さんは「たとえばスマホの画面のような目につきやすい場所に『なぜ、それをやるのか』を掲げておくといい」とアドバイスしました。
老化をポジティブに捉える
続いて聖心女子大学の卒業生、藤原香織さん。テーマは「Will You Be Ugly or Beautifu」
藤原さんは英語でスピーチしていました。英語が苦手な私は必死に日本語に訳してメモしました。なんと!スピーチ終了後、入場時に手渡された資料の中に日本語訳が入っていたのに気がつきました。大雑把な私の訳もだいたいの要旨はテキストとあっていたのでホッとしました。
印象に残ったのが「老化を劣化と思うのをやめましょう」というメッセージ。藤原さんは「今の私は年齢を重ねることは人生を楽しむチャンスが増えることだと気づけました」と訴えます。「2050年に50歳になる私が楽しみ」と笑顔で話す藤原さん。2050年、私もギリ生きているでしょうか。この気持ちだけは忘れないようにしたいと思います。
司会の中川咲愛さんから「女性の老化と男性の老化は社会の捉え方は違うんでしょうか」という質問が投げかけられました。藤原さんは「男性の評価は学歴や肩書きなどで判断される一方、女性は若さや見ためなど表面的なもので評価を受けています」と答えました。さらっと話していましたが、厳しい指摘でした。
器に合わせて自分を変えていく
3番手が青森から日帰りで来たというコメ農家の佐藤拓郎さん。テーマは「誰でもできる農業」「地域のための農業とはどのようなものなのか」
スッポンの生育環境のたとえ話がおもしろかったです。スピーチの画面で紹介したのは体の大きさがかなり違う2匹のスッポン。佐藤さんは「この2匹の関係は?」と問いかけます。「親子でしょうか、おじいちゃんと孫でしょうか、それとも兄弟?」。答えは「兄弟」でした。大きいものは温泉プールで育った個体。小さいのは小型のガラスケースで育ったそうです。
佐藤さんは「成長は器の大きさで決まるので、目標設定力が大事だ」と語ります。目標設定力とは逆算力です。ゴールを想定して、目標を達成するために必要なことを逆算していく。この言葉は刺さりました。
女性が働きやすい職場環境のために
東京・浅草で歯科医をしている小倉千春さん。テーマは「EQUALITY &
INCLUSION W は自分で作れる。たくましくしなやかに生きるアイデア」。
歯科医は若年層になると女性比率が半分を超えているといいます。ところが、女性は結婚や出産というライフステージの変化で職場からの離脱を余儀なくされる人も多いそうです。人手不足感が強い職場で、せっかくの人材がライフステージの変化でキャリアが途絶えてしまう。なんとももったいない話です。
「女性のライフステージの変化を快く受け入れる」。小倉さんのポリシーは明確です。クリニックで働いている人のお子さんが体調を崩したとしても、休めるスペースがあるといいます。とても明るい小倉さん。クリニックの雰囲気も本当に良さそうだろうなと思いました。司会の神下芽衣さんが「今回のイベントには学生がたくさん関わっています。社会に出たとき、意識すべきこと、アドバイスをいただきたいです」と尋ねました。小倉さんは「自分がやりたいことを大切にすること。自分ファーストで!」と話しました。
見えない光でがん克服
ラストで登壇した中矢大輝さん。テーマは「光の道の領域『ゴーストカラー」に隠された神秘の世界」
中矢さんは目に見えない光の波長を見るスペクトル解析技術を基盤としたハイパースペクトルカメラによるがん細胞研究を始めています。
冒頭、電磁波の説明がありました。波長の長さによって、様々な性質があり私たちが目や耳にする光や電波も電磁波の一種です。人間の目に見えているのはほんの一部分で、さらに見えている「可視光」の中でも見えない光があります。「見えているけど見えない光」というのがポイントです。
ハイパースペクトルカメラは目に見えない光を検知します。これを使ってがんの発見への活用を進めています。司会の神下さんは「見えない光があるというのに驚きました。かなえたい目標はありますか」と質問しました。中矢さんは「ノーベル物理学賞を目指したい。人がやっていないことをやる」と返しました。
交流会で中矢さんをつかまえて話を聞きました。「人が見えないものの研究は盛んに行われているが、見えるものについては意外と研究が少ない。穴場になっている」と話していました。最近ではブランド品やトレーディングカードの偽造品を見分けるのに使えないかという問い合わせも多いそうです。「将来的には月の資源探査にも技術を活かしたい」と力強く話していました。
2時間半ほどで終わった「TEDx USH」。テーマの「波動」のように気づきが広がっていきました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?