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純粋な悪ってあるの?「スイッチ 悪意の実験」

私がこの実験の参加者だったら、きっとこの登場人物たちより悩むし、もしかしたら狂ってしまうかもしれない。


違う意味でのブラックバイト

夏休みにおいしいバイトが舞い込んでくる。
一日一万円が振り込まれ、ひと月後には百万円が受け取れる破格の報酬。
参加者はあるスイッチを押す権利が与えれられる。
ひと月の間にそのスイッチを押しても押さなくても良いし、それによって報酬が変わることはない。
ただそのスイッチを押すと、ある家族が崩壊するーー

悪趣味だとは思うけど、こんなバイトがあったら楽勝だし手を挙げるだろうな。
アプリを削除してもいいし、スマホを置いて旅行に出かけてもいいんだって。
でも主催者に連絡すれば再インストールもできるし、なんだったら代わりにスイッチを押してもらうこともできる。
スイッチを押す権利からは逃げられない、という建付けだけどさ、スイッチを意識せずに押さずにひと月過ごすことは難しくないんじゃないかと思ったな。はじめは。

まあ、誰も押さないとしたら物語は進まないわけで。笑
この実験の参加者たちは、”スイッチを意識しない・考えない”という私の発想とは逆に、”被害を受ける家族と交流することでスイッチを押す抑止力を高める”という方向に進んでいく。
まずそれに驚いたよ、、そっちの発想は私にはなかった。
実験内容を発表される前に主催者によってその家族を紹介されているから、そういう流れになるのもおかしくはないが。。
それでも家族と会う度に逆にスイッチを強く意識することになると思うんだけどな。

おもしろい設定だし、スイッチを押す・押さないがメインの内容かと思いきや、案外そこは早々に片が付く…!
それ以降にどんどん事件が起きて、実は誰がどうでこうしてああして、、と展開していくのよ。
おもしろかった。

作品との相性があることに気づく

この作品は第63回メフィスト賞を受賞していて、著者の潮谷 験さんは今作がデビュー作となるらしい。
すごいねー、これがデビュー作って。
てかメフィスト賞って全般おもしろいよね。
私も作品紹介で惹かれたんだけど、なにこの設定!?って食いついちゃったもんね。
(ちなみにこれも「ほんタメ」で紹介されていた本。私の中で「ほんタメ」の影響力強い…)

しかししかし、実はこの作品、読み始めたもののどうしても読むのが難しくて、数週間手が止まっていた。
なんでだろうね、、その時は自分でもよく分からず、一度は読むのを諦めた。
最近毎日読書を始めたので、もう少し読んで様子を見ようと再開して、やっと読み進められた作品。
ただね、やっぱり他の作品に比べると読むスピードは遅くて、時間がかかったのよね。

ひとつは文体との相性なのかな。
昔の作品のような難しい言い回しがあるわけではないし、難読漢字を使いまくっているわけでもなく、普通の文章なのよ。
一般的に見ても読みやすいし、違和感なく読める人がほとんどだと思う。
でもどうしても意味が入ってこない箇所が多くて(すごい不思議よね!?)、読むのが難しかった。
だからこそ文体との相性のようなものがあるのかなー、と。
この点は今も不可解。分からん。

あとひとつ、再開後は読み進められたけど、やっぱり時間がかかったのは、その内容がけっこう私に刺さるものだったから。
悪意、善意、仏教、宗教、教え、、気になる話がたくさんでてきて、うまく読み飛ばして進めることができなかったのよ。
普段からこんなややこしいことを考えているわけではないけれど、気になる点がたくさんあって、読み込むにも時間がかかるし、その度に”私なら…”と考える時間が割り込むもので、倍以上時間がかかった。

1週間くらいかけてちょっとずつ読んだかな。
実はこの後に別の本を読んだけど、2時間弱で読み切れた。
単行本なら長くても3時間くらいで読み切れるんだけどな、、あとはハマれなくて諦める作品もある。
今回は全然違う読書体験だったので発見があったわ。

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