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違法の冷蔵庫

 20XX年、地表のほとんどは砂漠化していた。都市は砂塵に埋まり、食物は枯れ、人類は絶望の淵に立たされていた。
「やはり温暖化予測は正しかったのだ。我々は愚かな選択をした」
 熱風に運ばれてきた黄色い砂が、博士の顔にべったりと張り付く。
「防護マスクを、博士。肺が焼かれてしまいますよ」
 と、博士が突然耳を済ます格好をした。
「む……。おい、君、聞こえるか?」
 意識を集中すると、確かに聞こえた。何か巨大なものの駆動音だ。地面を探り、我々は砂地に埋まった入口を見つけた。息を呑み、地下へと続く階段を進む。冷たい空気が首筋を撫でた。
「これは……」

 街があった。山一つ収まりそうなほど広々とした空間。天井にはいくつもの巨大なプロペラが張り付き、ぐるぐると勢いよく回転している。街は少し、寒すぎるくらいだ。

「『消えた人々』は、ここにいたのか」
 私が呟くと、博士は苦しそうに唸った。
「人類は愚かだった。私が考えていたより、ずっと……」



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